女神さま、緊張感
私は宿に大急ぎで帰ると、とりあえず動きやすい格好に着替えた。
今の時間は12時。ちょうどお昼の時間になる。
「よし、動きやすくなったところで、昼ご飯にしよう。朝食食べてないからお腹がすいちゃった。アリーもお腹すきましたよね?」
城に居る時はドレスのポッケトに居た女神さまに話しかけると、
「私は普通よ。あなたのポケットの中でクルミを食べたもの。」
「人が緊張しすぎて死にそうなときにクルミ食べてたんですか!?」
「あら、死にそうだったの?私には緊張して死にそうな可哀そうなご令嬢ではなくて、王様に向かって啖呵切ってる命知らずの大バカ者に見えたわ」
「えっ、そそそ、そんなことありませんよ。アハハ・・・」
ベッドにうなだれながら腰掛ける私に
「分かりやすく落ち込まないでよ。言ってしまったものは仕方がないじゃない。あなたが宣言通りに勝てば今回の無礼もチャラよ。チャラ。」
といつも通りの調子で女神さまは話す。
「そう、ですね・・・。勝てばいいんですよね!勝てば!そう思ったらなんだかお腹がすいてきましたね!食事に行きましょう!腹が減っては何とやらです!」
「あんまり食べ過ぎると、動けなくなるからほどほどになさいね。」
私は女神さまを掴んで肩に乗せ食事をしに外に出ることにした。
私が気持ちを切り替えて「勝てばいいんですよね!」と言っているときに女神さまは
「それにしても、もう一つ条件を出してこないのは怪しいのよね。」と言っていたのは耳に届いていなかった。
私はお昼ご飯を腹八分目に抑えて、試合に向けて体力温存のため、二時間ほど睡眠をとった後、部屋の中で軽く準備運動をし、夕方六時に宿を出て王宮に向かった。
今回は軽い準備運動と緊張をほぐすために、徒歩で王宮に向かうことにした。
空はすでに暗くなっているが、街の大通りは屋台の明かりがあちこちにともっており、人通りも多く、まるでお祭りのような騒がしさだ。
そんな大通りを通り抜け、今度は静かな森の中にある白い一本道を進む。
聞こえる音と言えば私の足音と女神さまがピーナッツの殻を剥く音。
・・・剥く音?
「ちょ、めがみ・・・アリー!私の肩の上でピーナッツを剥かないでください!!殻の破片が刺さると、チクチクして痛いんですから」
女神さまはそれでも殻を剥きながら、
「だって、貴方が試合をしているときは暇でしょ?その時に食べながら観戦しようと思って剥いてるのよ。要はあれね、映画を見る時のポップコーン」
「全力で楽しみに行かないでくださいよ!こっちは緊張で吐きそうなんですから!」
「吐いたら相手に精神的ダメージを与えられるかもしれないわね。良かったじゃない」
「それ相手より、私のダメージの方が大きいです!」
「ほら、そんなくだらないこと言ってないで、もう王宮に着いたわよ。」
「へっ?」
目の前を見ると王宮の門があった。女神さまと言い合っていたら到着してしまったらしい。
門番の人がリスに向かって話しかけている私に怪訝な顔を向けてくる。
視線が痛い。
が、先ほどの女神さまとのやり取りで緊張がほぐれた私は背筋を正し、一つ深呼吸をすると、
「本日、騎士団の方と試合をすることとなっております。リリアン・オルフェイと申します。」
と門番の人に告げると門番の人はお待ちくださいと言って門の中に消えていった。
しばらくすると執事のバーナーさんが現れ、私を会場に案内してくれた。
途中女神さまはポケットから脱出し
「会場に先に行ってるわ」
と言って木を伝って走って行ってしまった。




