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2602:奮龍

――2604年2月18日、ラジオ


帝国海軍は本日サンフランシスコ湾において、金門橋主塔の爆破に成功せり。


――2604年2月22日、横須賀鎮守府応接室、囚人服、高田あき


応接室につれてこられた。なんだろ。

「海軍技術研究所、電波研究部の吉田技術少佐です。高田さんには、桜花や回天の開発ではいろいろ教えていただきありがとうございました。これまで独房に押し込められてさぞやおつらかったことでしょう。もっと早くにお出ししたかったのですが、警備部がうるさくて、徳川中将にお願いして、やっとのことで直接お話できるようになりました。私の力が及ばず、まことに申し訳ありません」

「あ、お手紙の方ですか。あの大野さんは」

「大野さんは亡くなられました。来られてすぐのことです。ご冥福をお祈りします」

「ああ、そうだったんですね。なんとなくそんな気はしてました。なにかやらかしたんでしょうか」

「詳しくはわかりませんが、警備隊ともめたようです。そのせいで高田さんにも強硬で。今日のところはお部屋をお移りいただいて、落ち着かれたところでまたお話いただければと思います」

「いえ、いいですよ。お急ぎなんでしょう」

「よろしいんですか、ありがとうございます。実は米国の重爆撃機が本土に侵入するようになっておりまして、こちらへの対処にご助力をお願いできないかと考えています」

「はあ、誘導ロケットとかですか」

「はい。さすがですね。当たれば撃墜できるロケットはあるのですが、何分高度が高く、高速ですので命中がのぞめません。地上からの誘導もかんがえているのですが、難しいです」

「なるほど、軍艦にあてるためのロケットのソフトウェアを作ったと思うのですが、あれに似た感じになりますかね」

「はい、桜花ですね。桜花はすばらしく活躍し、敵艦を多数撃沈しております。ソフトウェアというのは、あの端末に書き込みできる設定のことですね」

「はい」

「あれの重要性を上に理解してもらうのにも長い時間がかかりました。お前がやればいいだろうとかいわれてもできるわけがないです。本当に申し訳ない」

「その桜花にはどんな送信機をつかったのですか」

「2m波、1Kwの真空管方式です」

「はあマグネトロンではなかったんですね」

「え、マグネトロンでは起動時に発振が不安定になるので射撃には使えないと思っていました」

「位相も周波数もばたついても平気なようになっているので、大丈夫なような気がします。大野さんがこのあたり詳しかったんですがねぇ」

「ちょっと実験してみます。桜花でもマグネトロンで発振した電波を使って誘導するというのができると。それはだいぶ簡単になります。これも機載のマグネトロンで誘導することもできます」

「そうです。制御はどうするんですか」

「あの機械を使えば簡単ですが、数に不安があります。フネとちがって飛行機は数が多いですから。さしあたりはともかく、先行きは考えないといけません」


変更はちょっとですみそうだったので、待ってもらって引き渡し。

茶室みたいな離れに引っ越したよ。着物ももらった。外出はできないけど、決まった時間に散歩したりお風呂入ったりできるようになった。大野さんはねえ。


――2604年4月3日、門司市、着物、高田あき


吉田技術少佐からの電報で九州によびだされたよ。実戦テストしてるって。え、そんな速度感だったの。

ラップトップと端末とかもって汽車にのった。駅員さんがびっくりするぐらい優先度の高い切符で、寝台急行に乗せてもらった。だれか追い出されたのかな。それでもいっぱい止まってほぼ1日かかった。関門トンネル通ったよ。監視とかついてるのかな。突然ゆるゆるになって不思議。


「さっそく実戦試験をしてみたところ、成功して1機撃墜しましたが外れるものもあります。対応できますかね」


これ失敗しても成功してもログが残らないやつ。ええー。とにかくデータ集めよう。ログ送信するようにして、あとは地上から発射したロケットの位置を電波と画像でトレースしてログ受信だな。


夜中に来たよ。防空壕に隠れてデータ見てる。こっちの砲もうっててすごい音してるけど大丈夫? 発信源ねらわれない? あ、発射した。うん、ちゃんと動作してるじゃん。あれっ。


「吉田少佐、これ、はずれてるんじゃないです。目標から数百メートルで突然強い衝撃が加わって爆発してます」

「発射試験では高い信頼性が、あ、機銃で撃たれてる」


あーそりゃなんか飛んできたら撃つよね。ロケットだから目立つし。速度は的の近くだと200m/sぐらいか。ちゃんと命中してるのもあるね。ざっくり半分ぐらい。

「さしあたり最後のほうだけちょっと蛇行させてみましょうか」


――2604年4月7日、門司市、もんぺ、高田あき


爆撃機また来たよ。ちょっと蛇行させると命中率は上がるね。でも端末食いすぎるから、これ維持不能。


――2604年4月8日、門司市、もんぺ、高田あき


墜落した爆撃機見せてくれたっていうか、機銃周り分析しろって。人間がいるとこには照準器しかなくて、ケーブルがどっかいってる。機銃はセルシンで動かしてるってことは、どこかにコンピュータがあるね。吉田少佐も同意見。これは当たるかもって言ってた。

「吉田少佐、昨日撃ってたこちらの砲はどうやって制御しているのですか」

「あーそれは陸軍の砲なのでわかりません」

えー?

「フネに搭載されている海軍の砲は熟練の兵が当てています」

えー? もにょってたら、砲の制御もやることになったよ。これは簡単。砲のパラメータと弾丸の到達地点の表をもらって敵の到達予想位置に置くだけだね。熟練の兵が指揮官の叫ぶ数字に合わせるよ。えー。


――2604年4月12日、急行車内、着物、高田あき


九州の空襲が一段落したし、砲もそれなりに当たるようになったので、横須賀に戻るよ。時間があるので急行の車内で対策検討会。


「吉田少佐、数を増やす、速度を上げる、運動性を良くするぐらいだと思いますが」

「本線は数でしょうね。敵も増えてくるし、今のように八幡製鐵所だけを狙ってくるというようなおめでたいこともないでしょう。九州から警戒網を分厚くし、ロケットを大量配備していくことになるでしょう。砲は砲で有効ですが、数が作れないので。ロケットエンジンは担当者がいろいろ検討しているので、もう少し良くなるとおもいますが、それで数が作れなくなっては意味がないです」

「そうすると、こちらの仕事としては安く、端末を使わない制御機構を作る必要があると。しかもある程度の運動性能は必要と。パルスのオンオフ比率とかなら操舵できますか」

「機体ごとに周波数を割り振って2チャンネルの電信だな。ああポテンショメーターの出力とオンオフ比率を比較すれば精度は上げられる。そのぐらいなら量産できる。戻ったらすぐ作らせましょう。端末のほうはどんな周波数帯がいいですか」

「数百MHzまでならまったく問題ないですし、何チャンネルでも同時にだせるとおもいます。マグネトロン複数でもいいですよ。端末のレーダー用空中線は格子状にならべるといいです。送信用はまあなんでもいいですが、マグネトロンの混信を避けられる程度の出力は必要なので増幅器はいりますね」


――2604年4月28日、海軍技術研究所、スモック、高田あき


受信機の試作ができたのでテストに呼ばれたよ。早いな。

こっちから送ったコマンドで舵が動くこと、マグネトロンの影響をうけないことなどを確認。これ桜花にも使えるよね。吉田さんは、陸軍に端末渡した件で怒られたらしい。えー。


――2604年5月12日、横須賀鎮守府はなれ、着物、高田あき


審査で電波妨害についてつっこまれたって。するどいな。でも無事名前がついて奮龍だって。

制御方式はもう少し耐性のあるやつにしたいけど、符号化とかすると複雑になるよね。”強い電波源が前の方にあったらそっちに向かう”ぐらいでなんとかなるかな。

端末ありのやつも混ぜれば簡単だね。なしだと、技術研究所次第? ドップラー変位最大になるようにすればいいのかな。難しいね。うーん。実戦テストが簡単なようだから、やってみてもらうしかないかな。


――2604年6月12日、ラジオ


帝国海軍は本日インド洋において、米英の艦隊を発見。これを撃滅せり。本戦闘において巡洋艦2隻、駆逐艦6隻、輸送船12隻撃沈。我が方の損害は艦載機2機。

帝国陸軍は本日四川省の成都を航空攻撃、米重爆8機を撃破、戦闘機6機を撃墜せり。我が方の損害は軽微なり。


――2604年8月12日、ラジオ


帝国陸軍は本日四川省の巫山に突入せり。蔣介石政府の所在地たる重慶を指呼の間に収めたるものなり。


――2604年8月19日、横須賀鎮守府はなれ、着物、高田あき


飛行機やフネにも奮龍載せることになってちょっとずつ変更があるよ。端末つけた高級品を混ぜると電波妨害もされにくいみたいだ。消費が多いのは問題だけど。


――同日、内閣府、軍服、高官たち


「海軍としては、作戦の必要上、これ以上”端末”を出すわけにはいかない。北九州で陸軍の防空部隊に提供したのは現場の緊急対応であって、本来なら返還していただきたいところだ」

「本来なら前線の重砲部隊にも配給したいところだが、海軍の都合も理解している。しかし、本土防空は陸海で共同してやっているのだから、少なくとも高射部隊には配給してもらいたい。高射砲の命中率がまったくちがってくる。砲なら消費はないのだから、桜花や回天で浪費している場合ではないのではないか」

「浪費とはなんだ。桜花や回天は多数の敵艦を沈めているし。潜水艦や航空機の損害も押さえている」

「それは失礼した。しかし砲なら一度供給すれば減らないのも事実だろう。だいたいあといくつ残っているのだ」

「それは機密なのでお答えできない」

「陸軍、海軍の言うこともわかるが、帝都や軍需工場の防空は重要である。皇居に爆弾が落ちたらどうするつもりか。ここは総理の顔をたてて最小限、重要拠点の防空を担う三式高射砲装備の防空大隊に配給するということでどうか」

「それは何個大隊あるのか」

「それは機密なのでお答えできない」


1920/0/4240/3840


再建された機動部隊は強力です。

大陸打通作戦に替えて四川作戦が行われています。

奮龍はせいぜいSA-8というか9M33ぐらいですね。


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