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噂話

 ユリはちまたでお嬢様に関する良くない噂が出ていると、クロエから手紙を貰った。権力を傘にフリップ伯爵家の麗しの兄弟を手玉に取っていると、リフリードに飽きたから、フリードリッヒを婚約者にしたとも言われているらしい。中には、テイラー伯爵令嬢との仲を裂いたというデマまであるらしい。


 何なのよ!テイラー伯爵令嬢、フリードリッヒ様に相手にされないからって!相思相愛の仲を引き裂こうとしているのは貴女じゃない!


 クロエをはじめ、昔、リマンド侯爵家で侍女をしていた夫人達は、皆一様に、フリードリッヒがマリアンヌを溺愛していた事実を知っているし、今も変わらずそうだというユリから手紙を貰っているから、その事実を否定してくれてはいるらしいが、テイラー伯爵令嬢がお茶会等集まりの場で、そう言う雰囲気を出すから中々、お嬢様にとって良くない雰囲気だそうだ。


 これに関して頼れるのはスタージャ様ね。同じフリップ伯爵家の長男であるシードル様と婚約をなさっているし、侯爵家の娘で皇后陛下の妹ということもあり、社交界での影響力もある方だ。お嬢様と違い社交界にお友達も多い。スタージャ様に場を用意して頂こう。


 ユリはスタージャに手紙を書くと、それを自分のメイドに渡した。


「必ず、スタージャ様本人に貴女が手渡して、そして、返事を頂けるのであれば、貴女が必ず貰って来てね」


「わかりました」


「遅くなっても構わないから、頼んだわよ」


 スタージャ様が色良い返事を下さるのを願うばなりね。


 スタージャからの返事は、ユリが思っていたよりも随分と早く貰えた。


 明日の夕刻、スタージャが経営するカフェでと書いてある。


 良かった、一応会って下さるのね。後はスタージャ様に私か何を提供できるかね。人はただでは動いてくれない、何か自分にとって都合の良い見返りが必要だ。


 残念ながら、小説にはスタージャのことは詳しく書かれていなかった。


 スタージャ様が望むモノは何?期限は明日の夕刻。セルロスに聞いてみよう。


「ねぇ、セルロス。スタージャ様って、どんな方なの?」


 ユリは自然を装い夕食の時間を合わせた。


「確実に狙った獲物を仕留める方だよ。だだ、お嬢様同様、ご自分の感情を表現するのが少し苦手なようだ。ここだけの話、姉を皇后に押し上げ、望んだのがシードル様との婚姻なんだ。それだけ、シードル様のことが好きであられるのに、シードル様の前では素直になれないご様子だ。後、スミス侯爵との仲も微妙だね。皇后陛下とは仲良くいらっしゃるけど」


「何故、スミス侯爵との関係が微妙なの?」


 スタージャ様のお陰で、彼女のお姉様は皇后陛下になり、腹違いの兄は侯爵になったのよね。なら、侯爵はスタージャに感謝こそすれど、関係が微妙とは不思議ね…。そういえば、スミス侯爵夫人はスタージャ様と関係が良く無いと仰っていたわね。


「見目の問題じゃないかな?スミス夫人はほら美しいと評判だ。スミス侯爵はその事を事あるごとに自慢されているだろ。スタージャ様は美貌の姉貴である皇后陛下といつも比べられてお育ちになった。スタージャ様が、ご自分の容姿にコンプレックスをお持ちになっても不思議じゃない」


 それなら、痛いほどわかる。特にこのリマンド侯爵家で侍女として務めるようになってから、周りの美しい令嬢達に囲まれているから特に感じる。


 私以外の侍女は、皆、一応に美しい。リマンド侯爵家の侍女の中にひとり雑草が混じっていると、揶揄されていることくらいわかっている。


「スタージャ様、可哀想だわ」


 そう言えば、小説では、お嬢様の取り巻きがお嬢様の容姿を褒め称えることが多かったし、お嬢様もそれを鼻に掛ける発言をされていた。容姿コンプレックスがあるスタージャ様が、それを心良く思わなかったのも頷ける。


「シードル様はあのように人辺りがいいから、スタージャ様が気が気でないご様子なんだ。シードル様と婚約なさった頃から、スタージャ様もお嬢様同様、嫌がらせを受けていらっしゃるみたいだしな」


「スタージャ様とシードル様の仲はどうなの?」


 シードル様は誰にでもお優しいし、愛想が良い方。いつも、御令嬢達に囲まれていらっしゃるが、フリードリッヒ様みたいに邪険にされることも無く、対応も丁寧だ。スタージャ様がご心配をなさるのも頷ける。


「リフリード様の件があるから、シードル様は最近、スタージャ様のご機嫌取りに忙しいみたいだな」


 なる程、恋愛感情は抜きにしても、格上のそれも皇后陛下の妹君を嫁にとなると、その恩恵は計り知れないわね。シードル様が慌てるのも無理は無いか。


「そうなのね」


「お嬢様が、最近スタージャ様と仲が良いから、スタージャ様のご機嫌取りでも始めるつもりかよ」


 セルロスは若干呆れた顔をして、ユリを見るとチキンを頬張った。


 お嬢様がスタージャ様と仲良くなれるように、世話を焼いていると思ってるみたいね。まあ、当たらずしも遠からずってとこね。


「まあね、そんなとこよ」


「本当、お前はお嬢様の事となると過保護だよな」


「同然じゃない。私達の未来がかかってるんだから!」


 お嬢様が断罪されでもしたら、私は強制労働。セルロスだって路頭に迷うのよ。


「もしかして、それって、俺たちの未来の為なのか?」


 セルロスは少し驚いたような顔をして、口を手で押さえる。


「そうに決まってるじゃない!その為には、何としても、学園入学前にお嬢様とフリードリッヒ様の婚姻を無事に終わらせないと。後は、学園さえ何事も無く卒業されれば完璧よ!そうすれば、私達未来は安泰だわ」


「ああ、そうだな。そうなれば、何の憂いもないな。」


 そう、私の目的はお嬢様の断罪回避と、リマンド侯爵家の安泰よ。


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