もじゃもじゃ
ちょト短いネー
続キは週末考えルよー
「ええと……エルミにマチルダ、これ誰?」
降下してきた抱っこ飛行機チームに、俺は首を傾げつつ尋ねる。そもそも、君ら二階で寝てたんと違うんか。夜のお散歩と言うにはずいぶんと派手な登場ですが。
「ナルエルちゃんなのニャ♪」
「いや、名前ではなくて……」
「お仲間ダ」
マチルダの返答は簡潔で確信に満ちていた。
「へえ」
「“へー”じゃナいゾ、ミーチャ。こイつは、お前タちのお仲間ダ」
「???」
わからん。たち、ってことは俺とヘイゼルのお仲間? どういうカテゴリーで?
ナルエルは……少年ぽくもあるが、たぶん女の子だ。若そうだけど年齢は不明。ちっこくてボサボサ頭で、好奇心と情熱にキラキラさせた目。どこぞの探検隊みたいなカーキの半袖半ズボンから、健康的で頑丈そうな手足を剥き出しにしてる。うん、わからん。
「どこが?」
俺にもヘイゼルにも、こんなのめり込むタイプなとこはない。フレッシュでもエネルギッシュでもなく、もちろんドワーフでもない。
逆にこの子が異世界人という感じもしない。
「同じ匂いがするのニャ。どう言ったら良いかわかんないけど、間違いないのニャ♪」
「そうダ、間違いナい。こイつは、お前たちト同じ、化け物ダ」
「おい」
ものっそいストレートにぶっ込んできやがったな魔族娘。それを胸張って言うか。
「……待て待て待て。この子やヘイゼルはともかく、俺は至って平凡な無職の中年だぞ?」
「わたしも、平凡なメイドです」
「「……ぐふッ」」
後ろの方で聞いてた町の住人たちが吹き出したのは聞こえたけれども、無視する。
というかヘイゼルのコメントで逆に俺が同じ分類枠に入ってる空気になったのが納得しかねる。
「トにかク、ナルエルは、ワタシとエルミが責任を持って引き受ける」
「引き受けるのニャ♪」
何があったんか知らんが、彼らふたりが信頼に値すると思っているなら、俺個人は別に受け入れてもかまわん。とはいえ、町に入れるかどうかという判断は衛兵隊長に委ねられるべきだろう。
視線を向けたティカ隊長は、眉根を寄せて唸っていた。
「……それは、マズいな」
彼女には珍しく、拒絶の構えだ。でもまあ、セキュリティ部門の長ならそれが適切な対応なのかもしれん。森でカブトムシでも捕まえるみたいにドワーフを拾ってこられても困るだろう。
ゲミュートリッヒの住人は、わりと何でも無警戒に受け入れ許容して結果としてどうにかしてきたイメージはある。かなり雑な性格の俺でさえ、いくらなんでも丼勘定すぎるだろうと思ってしまうくらいにだ。
「いや、受け入れること自体は構わんのだがな」
「かまわんのかよ。俺がいうのもナンだけど……大丈夫なのか、この町のセキュリティ」
「嫌な奴ではない。悪い奴でもない。有用な人材なのは間違いない」
ナルエルを見つめるティカ隊長は、言葉と裏腹に頭を抱える。知り合いなのかと思ったけれども、ナルエルの方はキョトンとしていて、全く面識がなさそう。
ティカ隊長はフッと息を吐いて、腹を括った顔で笑った。
「まあ、いいか。オルークファと……いや、タキステナと全面戦争になるぞ。覚悟しておけ」
「良いけど、なぜ? 知り合いか?」
「いや。前に“賢人会議”で見かけた。噂だけなら、ずいぶん前から聞いてたしな」
ナルエルの方は、覚えていないようだ。
「オルークファの懐刀、“薙ぎ倒し”ナルエル。学術都市の高慢ちきな魔導師連中を実力で捻じ伏せ、トップに君臨してきた鬼才だ。それにな」
不満そうな顔になったナルエルを見て、ティカ隊長は唇の端だけを嫌そうに歪めた。ポケットから出した金属球を指先で摘んで渡す。襲撃部隊の指揮官が持っていた魔道具の金属板……それを握り潰した丸めたものだ。
「あの老害が偉そうに喧伝する魔道具の核心技術は、こいつから設計を剽窃したものだ」




