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おっちゃん冒険者の千夜一夜  作者: 金暮 銀
ミンダス島編
454/548

第四百五十四夜 おっちゃんとコンリーネの思い(後編)

 アイオロスは疲弊していたので、その日はそれ以上の話は、できなかった。

 おっちゃんはガイルに伝える。

「コンリーネは退散した。せやけど、コンリーネの手の者がまだ城におるで。油断は禁物や」


 ガイルが真剣な顔で請合う。

「任せてくれ、アイオロスは厳重に警護する。再び攫われたりはしないさ」

「なら頼むわ、今日はお城も混乱しているようやから、わいは宿に帰る」


 ガイルが渋い顔をして忠告する。

「俺は仲間と今後の対応を検討するから今日は帰れないかもしれない。だから、用心してくれ」


 おっちゃんは《陸のカモメ亭》に帰った。

《陸のカモメ亭》で軽く食事をして部屋に戻った。


 夜に寝ていると、「オウル、オウル」と、おっちゃんを呼ぶ声がした。

 眼を開けると、部屋の椅子に穏やかな顔をしたコンリーネが座っていた。


 コンリーネは優しく語り掛ける。

「こんばんは、オウルさん。こんな夜更けに、ごめんなさい」

 おっちゃんはベッドの上に座る。

「ええで。わいも、話がしたかったところや」


 コンリーネが暗い表情で頼む。

「単刀直入に言うわ。『重神鉱』と『霊金鉱』を、諦めてちょうだい」

「なしてや? 『重神鉱』も『霊金鉱』も、皆が欲しがってとる。鉱物資源の生産にストップを懸けて、どんなメリットがあるんや?」


 コンリーネは憂いを帯びた顔で語る。

「全ては、ミンダス島と西大陸のためよ」

「この島と西大陸の実情を考えるなら、輸入は必要や」


 コンリーネが寂しげな表情をする。

「私は、かつて『鉱山主リカオン』の部下だったわ」

「そうか、それは大変やったな」


「『鉱山主リカオン』が死んだ理由も、『重神鉱』と『霊金鉱』があったせいよ。それで人間に鉱山が眼を付けられた」

「そうかもしれんな。だからといって、この島から『重神鉱』と『霊金鉱』の生産を取り上げても、西大陸は平和にはならん」


 コンリーネが淡々と語る。

「『鉱山主リカオン』が討たれ、『イヤマンテ鉱山』のダンジョン・コアが破壊される前の話よ。私は、ダンジョン・コアに残った力を使い、坑道を閉鎖したわ。精錬に必要な設備も破壊したわ」

「人間たちに『重神鉱』や『霊金鉱』が渡らんようにするためか」


 コンリーネが冷静な態度で静かに告げる。

「そうよ、あとはミンダス島から『重神鉱』と『霊金鉱』が消えれば、大陸から『重神鉱』と『霊金鉱』は、時間が掛かるけど、消えるわ」


(人間に『重神鉱』と『霊金鉱』が渡らんするようにする理屈はわかる。せやけど、なんで、ミンダス島の『重神鉱』と『霊金鉱』まで生産を止めようとするんや?)

「なして、そんな話を考えた?」


 コンリーネは辛そうな顔をして、おっちゃんを見据える。

「『鉱山主リカオン』が滅んだのも、人間に強い武具が渡ったせいよ。もし、『イヤマンテ鉱山』から『重神鉱』と『霊金鉱』が出なかったら『イヤマンテ鉱山』は滅びなかった」


 コンリーネの考えが、わかってきた。

「人間には鉄器以上の武器を渡すべきではないと考えたか」

「わかってくれたかしら? 強い武器はダンジョンを滅ぼすのよ。『重神鉱』と『霊金鉱』の生産を止めれば、人間は弱体化するわ」


 コンリーネの意見に、おっちゃんは賛成できなかった。

「残念やけど、そうはならん」

「なぜ、人間が弱体化しないと思うのよ。訳を聞かせて」


「人間は工夫する生き物や。『重神鉱』と『霊金鉱』がなくても、それに替わる武器をきっと開発する。それに、ダンジョン側でも、強い武器の開発は続くで」


 コンリーネがむっとし顔で、おっちゃんを睨む。

「なんで、そんな未来がわかるのよ!」


 おっちゃんは、昔話を静かに語る

「あんな、なんで、ダンジョンがあるか、仲間内で考えた時がある。すると、仲間が言うた。ダンジョンも人も、進歩は止められない。せやけど、このままでは行き着く先は滅亡やと」


 コンリーネは、それ見たことかと口を挟む。

「だったら、黙って見ていて、いいわけがないわ。わかっているなら、止めないと」

「話は続きがあるねん。すると、別の古老が違うと首を横に振った。モンスターも人間も滅亡はしない。百年掛かるか、千年掛かるか、わからない。だが、全てのダンジョンは、いずれ攻略される、と」


 コンリーネが苛立ちの表情を浮かべる。

「どうして私たちの敗北で全てが終わると、わかるの? そんなの、わからないわ」

「ちゃうねん。古老が説くには、全てのダンジョンの消滅は、人間が世界の主になる未来を指すものではない。世界が新しい段階に到達する時期であり、避けて通れない未来やと」


 コンリーネは不快感も露に怒った。

「何、それ? わけがわからないわよ」

「わいもその話を聞いた時、この老人は何を発言しておるんやと思うた。でも、最近つくづく思うねん。世界は、唯一なる存在が目指すべき場所へと向かって進んでいるんやないかと」


 コンリーネは首を横に振ると、提案した。

「オウルさんの話は全く理解できないわ。もっと現実的な話をしましょう」

(世界が変わると教えられて「はい、そうですか」とは、いかんわな。未来がどこに向かっているかの話は、なしやな)


 おっちゃんはコンリーネの眼を見て、意見をはっきりと述べる。

「コンリーネはんの目的は聞いた。だが、残念やが、わいには協力できん。時代の流れは止められん。まだ、他に話す内容があるか?」


 コンリーネは幾分か平静になり、毅然と告げる。

「あるわ。女王の病気よ。女王が眠ったままになっている件に関して私は無関係よ。私が城に出入りするようになった時から、女王は眠ったままなのよ」

「そうか。ほな、女王については、こちらで努力するわ」


 コンリーネが挑戦的な顔で申し出る。

「もし、『重神鉱』と『霊金鉱』を諦めるなら、女王を治すのに協力してもいいわよ」

「残念やけど、ミンダス島の政治には関与できん。コンリーネはんの要求には従えん」


「そう。なら、気が変わったら、私を探すといいわ」

 コンリーネは煙に姿を変えると、窓から出て行った。


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