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おっちゃん冒険者の千夜一夜  作者: 金暮 銀
ミンダス島編
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第四百四十一夜 おっちゃんと退去命令

 魔女騒動から四日が経過する。郵便配達人の間では、人を攫って酒を飲ませる魔女の話が噂された。

 魔女は本当にいるのか。いたら何が目的なのか。噂はすれど真相は不明だった。


 おっちゃんは『雲龍炭』を扱う炭屋のバイトがあったので、出掛けた。

 休み時間に、こっそり帳簿を覗く。だが、炭屋が『霊金鉱』や『重神鉱』の精錬に使う『雲龍炭』を城に卸している形跡は見当たらなかった。


 おっちゃんは、ガイルへの郵便配達を装って《陸のカモメ亭》に赴く。

《陸のカモメ亭》に行く途中で、おっちゃんは異変に気がついた。使節団が乗ってきていた、大きな髑髏の船首像を持つ全長八十mのブラッド・オレンジ号の姿が、港から消えていた。


《陸のカモメ亭》に着くと、がらんとしていた。

(なんや、使節団が帰りおったんか。まさか、わいのいないところで、商談が纏まったんやないやろうな)


《陸のカモメ亭》のフロントで尋ねる。

「すんまへん、まだ、ガイルはんは、おりますか?」

「まだ、いるよ」とフロントのモグラ族の男が教えてくれた。


《陸のカモメ亭》の二階でガイルと会った。

「どうや? 交渉のほうは、進展があったんか?」


 ガイルが渋い顔で、首を振った。

「全く進んでいない。島にいる女王への面会すら、ままならない」

「あんな、わいが仕入れた情報や。城の地下に『重神鉱』や『霊金鉱』の鉱山があるんやないかと噂話を、鍛冶屋から聞いたで」


 ガイルが渋い顔のまま首を振った。

「それは、ないだろう。俺は使節団の御付として城に上がった。城からは金属を精製する臭いがしない」

「城の内部に入ったんか。どうや? 城は綺麗やったか?」


 ガイルが思い出しながら、歯切れも悪く語る。

「見たところ、綺麗に清掃されていた。泥汚れや金属滓なんかは、落ちていなかったな。中庭も綺麗だった。あの城の中に金属を精錬する設備はない。あるとしても、地下だな」


「換気の悪い地下で、精錬はないやろう。それとも何か、地下に炭を運び入れる搬入口でもあったか? 『雲龍炭』が大量に必要になるから、搬入口は大きいのがあるはずや」


 ガイルが暗い顔で下を向く。

「換気口や搬入口はなかったな。城の入口が見える場所で見張ったが、炭の搬入もなかった」

「おかしいで。鉱石を掘る場所も不明なら、精錬場所も不明。そんでいて、お城から鍛冶屋へは『重神鉱』や『霊金鉱』を鉄器の代金として払う。これ、何か秘密の仕組みがあるな」


 ガイルが曇った顔をして告げる。

「『霊金鉱』も『重神鉱』も、戦略物資だ。それにしても、ガードが固い。何か秘密がある状況は確実だ。それで、その秘密を握るのが、全く姿を見せない女王だ」

「女王って、どんな姿をしておるんやろうな?」


「女王はほとんど城から出ない。公式の場では顔を隠している。体格から見て、人族かモグラ族だろうとは噂されているが、真相は不明だ」

「鍛冶屋の話では今は『霊金鉱』と『重神鉱』の払い出しをお城が制限をかけとる。これは勘やが、お城の秘密に何か異常が起きとるのう」


 ガイルが冴えない顔で端的に語る。

「異常といえば、おっちゃん。使節団に国外退去の命令が出たぞ。理由はこれ以上に話す内容はないから、だそうだ」

「なんや、急やな。退去期限はいつや?」


 ガイルが平然と口にする。

「もう、過ぎた。昨日だ」

「急やな。わいは現地人に溶け込んでいるから、まだ活動ができる。せやけど、なんで、ガイルはんは、いられるんや?」


 ガイルがいたって普通に答える。

「某は許を糺せば、この島の出身だ。使節団に解雇されたと理由をつけて残っている」

「そうやったのか。ミンダス島にはクロコ族が多いからね」


 ガイルが面白くなさそうな顔をして教える。

「それでだが、団長のドンゲルから、交渉を再開できるようにしてくれ、とおっちゃん宛てに言付かった」

「わいを排除しておいて、困ったら頼るって、なんや? 都合のええやっちゃな」


 ガイルが冴えない顔で語る。

「偉い奴なんて、そんなもんさ。ミンダス島の住人は、少数しかいない人間には興味を示さない。でも、外から来たとバレれば即退去だ。気を付けて活動するんだな。俺は引き続きここに宿をとるから、何かわかったら、知らせてくれ」

「わかった。また、何かわかったら連絡する」


 おっちゃんは本局に帰り、アグネスに尋ねる。

「なあ、知っとる? 魔都イルベガンから来ている使節団が国外退去やて。何か失礼な振る舞いをしたんかなあ?」


 アグネスが話したかったのか、興味のある顔で勢いよく語る。

「知っているわよ。魔都イルベガンから来た使節団でしょ。なんでも、使節団に魔女が混じっていたんだって。その魔女が、悪さをしたそうよ」


 初耳だった。

「まさか、行方異不明者を酔わせていた魔女のせいか」


 アグネスが、ちょっぴり沈んだ顔で、やんわりと話す。

「お城から正式に発表はないわ。でも、魔女が現れた時期と、イルベガンから使者が来た時期が、一致するわ。これは偶然とは思えないわ。魔女は使節団の一員だったのよ」


 これ、完全にアグネスは誤解しているね。使節団の中におったけど、あの魔女はいなかったな。変身できる種族とも思えん。

「そうか。使節団に悪い魔女が混じっていたか」


 アグネスが、にこにこした顔で、教えてくれた。

「そうよ。それで、今お城で、魔女に賞金を懸けて捕まえようって話が出ているらしいわ」

「魔女が賞金首ねえ。捕まえたらいくらくらい貰えるんやろう」


「賞金は金貨千枚って話よ。もう、魔女を捕まえられたら、鰻が食べ放題よ」

「それにしても、みんな好きやな、鰻」


 アグネスが眼を輝かせて発言する。

「中には、脂が駄目って人もいるけど、鰻を食べながら飲む冷酒は、格別よね」

「鰻に酒はあうからのう」


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