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おっちゃん冒険者の千夜一夜  作者: 金暮 銀
ヤングルマ島【サレンキスト国】
292/548

第二百九十二夜 おっちゃんとヤングルマ島の神(前編)

 翌朝になって、朝食が運ばれてくる。朝食は焼き飯だった。

 焼き飯を食べ終わって、食後のミルクティーを飲んでいると赤髭がやってきた。


 赤髭が見張りに立っている魔人に声を掛けると、魔人は立ち去った。

 赤髭が窮屈そうに家のドアを潜った。


「珍しいとこで会いましたな、赤髭はん。ところで、赤髭はんがヤングルマ島の神様やったって、本当? もし、神だとすると色々と説明が付くんよ」


 赤髭はおっちゃんの前に胡坐を掻いてドカっと座る。赤髭はさばさばした顔で告げる。

「そうだ。俺はかつてこの島の神だった。俺がユーリアを造り、ユーリアの望んだ世界を俺は造った。だが、俺は冒険を諦めきれずこの島から去った。再び戻ってくる約束をして」


「そうか。そんで、おっちゃんの船に事情を隠して乗ったんやな。怒らんから教えて。奇妙な男と赤髭はんは実はグルやったんやないの? もしくは奇妙な男の正体は赤髭はんやないの?」


 赤髭が軽い調子で訊いた。

「どうして、そう思う」


「おっちゃんは、どうやって島に上陸したか覚えておらん。最初は奇妙な男に連れ去られて、島に連れてこられたと思った。でも、それにしては、靴が替わっていた理由が、わからん」

赤髭は涼しい顔で黙って、おっちゃんの推理を聞いていた。


 おっちゃんは話を続ける。

「だが、こう考えると説明が付く。おっちゃんは寝ていた間に、自分でマレントルク産の空飛ぶ靴に履き替えて、空を飛んでヤングルマ島に上陸した。その後、サリーマが、おっちゃんの履いていた靴を回収して別の革靴を履かせた」


 赤髭がおどけた調子で惚ける。

「なるほど。でも、なんで、そんな考えに至った?」


「似たようなトリックを二度も使うたらばれるよ。ヤスミナがマレントルクで失踪した時に、同じような手を使ったやろう。あの時、ヤスミナは『夜の精霊』に呼ばれたいうとったが、『夜の精霊』と奇妙な男は同じやったら、おっちゃんに起きた現象も説明が付くんや」


 赤髭が悪びれた様子もなく説明する。

「推理が本当なら、靴の取り替えをするには、予め空飛ぶ靴の存在を知っていて、なおかつ靴をおっちゃんの荷物として潜り込ませられる人間が必要だ。確かに俺なら可能だな」


「おっちゃんとサリーマとの出会いも偶然やなかった。おそらく、ロニイを助けてやるかと仄めかして、サリーマを計画に誘い込んだんやろう?」


 赤髭は悪びれることなく発言する。

「別にいいだろう。結果としてロニイは助かった。サリーマにしてみればなにも問題ないはずだ。きちんと報酬は貰えた。おっちゃんの手によってだがな」


「わいは赤髭はんの計画に沿って誘導された。赤髭はんが魔人村にいて確信した。ポッペはんに、おっちゃんに巨人の夢を教えるように仕組んだやろう」


 赤髭は澄ました顔で告げる。

「魔人の上層部の連中は俺がいずれ帰還する神だと知っている。頼めば便宜を図ってくれる」


「おっちゃんが『王石』を出せた理由も、島の秘密を解明した赤髭はんならどうにかなった。そんで、巨人の夢の秘密を知ったおっちゃんが『地下宮殿』に挑んで、巨人の夢に入れる資格を得るのを待っていた。違うか?」


 赤髭は満足そうな顔で告げる。

「その通りだ。俺はおっちゃんなら適切な情報を与えれば、『地下宮殿』に挑んで巨人の夢に入れる資格を手に入れると予想した。見事、俺の予想通りに動いてくれた」


「なして、赤髭はんは、自分で資格をもう一度とろうと思わなかったんや?」


 赤髭は穏やかな顔をして語る。

「試練を制覇した者は、二度と挑むことができない。それに。俺の資格はユーリアに渡したままだ。ユーリアが巨人から出てきて資格を返してもらわないと、俺は巨人の夢に入れない」


「ユーリアに会うためには、他の資格者が必要だったわけやな。本来なら、その役目は島に一緒にやってきたホイソベルクはんやったんやろう?」


 赤髭が悔しさを滲ませて答える。

「巨人の夢の中に誰かがいないと、島は崩壊を始める。当初の予定では資格を持つホイソベルグに中に入ってもらうか、資格を渡してもらうはずだった。だが、帰ってくるのに時間が掛かりすぎた」


「亡くなったホイソベルグはんの持つ資格の継承者はサリーマとヤスミナや。二人は、巨人の夢に入れる。ところが、二人はユーリアの後継者になる重責に堪えられず、拒絶した。それで、おっちゃんに資格を取らそうと思ったんか?」


 赤髭が淡々とした顔で話す。

「遺跡までの道が閉ざされていた事態も誤算だった。おかげで、サレンキストの連中に道を作らせなくてはならなかった。だが、そのためには『悪意の霧』が邪魔だった。『悪意の霧』を巨人の夢に近づけては、ユーリアが危ない」


「『悪意の霧』が発生した時に、魔人たちを使って、サレンキストが道を作る時間を調整していたんか。そんで、『悪意の霧』が倒された時にユーリアの許に辿り着ける道筋が着いた。だが、ユーリアは赤髭はんが想定した刻限より早くに亡くなった」


 赤髭が寂しそうな顔をする。

「帰ってくるのが遅すぎた。全ては俺のせいだ」

「そうか。なら、赤髭はんの今の目的はなんや?」


 赤髭が悲しそうな顔をして頼んで来た。

「亡くなったユーリアの亡骸(なきがら)を、外に出して葬ってやりたい。そのためには、おっちゃんの協力が必要だ。おっちゃん、巨人の夢の中に入ってくれ」


「ええけど、わいはユーリアが巨人に託した夢を継いで巨人の夢の中で暮らす生活はできんで」


 赤髭がサバサバした顔で口にする。

「この島の将来はこの島の連中が決めればいい。サリーマやヤスミナが後を継ぎたくないなら、それでもいい。誰も続かないなら、おっちゃんが引き継ぐ必要もない。一人で巨人の夢から出てくればいい」


「なら、サレンキストの人間が引き継いでもいいんやな?」


 赤髭は渋い顔で発言した。

「俺にとってはサレンキスト王以外なら誰に渡してもいい」

「サレンキストの王は死んだと聞いたで」


 赤髭がサラリと発言した。

「サレンキスト王は、死なない。奴は、精神を切り離して他人に憑依(ひょうい)する方法で生きている。サレンキスト王は島を支配する野心しか頭にない。サレンキスト王が巨人の夢に至れば、全てを不幸にするだろう」


「サレンキスト王に島を渡したくない。だから、魔人たちを使ってサレンキストの妨害をしておったんか?」


 赤髭が神妙な面持ちで依頼してくる。

「それでだ、おっちゃん。ユーリアの亡骸を巨人の夢から出すのを手伝ってくれ。きちんと弔ってやりたい。報酬はない。もっとも、巨人の夢に入れれば、欲しいものが欲しいだけ手に入るから、報酬など無意味だが」


「成り行きとはいえ、船を出してもらった恩はある。ここまで来たんや。手伝ってもええ。せやけど今度から相談事があるなら、隠さずに頼んでや」


 赤髭は深々と頭を下げた。

「俺は最初は不安だった。素直に頼めばおっちゃんは尻込みするかもしれないと怖れた。また、巨人の夢を知れば、おっちゃんは自分の欲望のために、島を改変するかもしれないと疑った」


「扱うものがものだけに、人を疑いたくなる気持ちはわかる」


 赤髭は神妙な顔で頭を下げた。

「俺が人を信じられなかった。俺の弱さのせいで、おっちゃんには迷惑を掛けた」

「過ぎた過去にはこだわらんけど。今度はもう少し信頼してな」


 おっちゃんは赤髭との会談を済ませると、魔人の村を出てサレンキストの街に戻った。


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