表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/49

アニエス日記

最後に重大発表が……

ある日、ジェシカ夫人から『こっそり訪ねたい』という文が届いた。これまで何度かお茶会の招待状を出したけれど、すべて断りの返事ばかりだったのに。……いったい、どうしたのかしら。


訪問の日を決め、当日。応接室に通されたジェシカ夫人が切り出してきたのは、驚くべき内容だった。


「ノイエ=レーベン家が……脱税を?」

思わず、声が裏返ってしまう。

バーバラ夫人がレース織りの生産量を少なく申告して、税を逃れていたという。そんな家を揺るがすほどの情報を、なぜ私に……!?


「非常識だとは承知しております。ですが、他にお願いできる方がいないのです。どうか、お力添えいただけませんか」


ジェシカ夫人の瞳はとてもまっすぐで、そこに打算の色は見えない。

彼女は語った――ノイエ=レーベン侯爵家の実権を、バーバラ夫人から奪う計画を立てているのだと。

脱税分と延滞税のすべてをジェシカ夫人名義のお金で支払い、清算を済ませたうえでバーバラを断罪したいのだと。

数年分ともなれば莫大な金額だが、すでに工面の目処は立っているらしい。


「なぜそこまで……?」

「アレクのためです」

ジェシカ夫人の声に、迷いはない。


「義母は、アレクが少年当主となった暁には自ら後見人になるつもりです。しかし、私利私欲にまみれた彼女のやり方では誰も幸せになれません。未熟な私ではありますが、実家の領地経営を補佐していた経験もございます。必ずや、ノイエ=レーベン侯爵家を正しい形へ導いてみせます」


さらに、彼女は続けた。


「決戦の場は、アレクの爵位継承式にしたいと考えています。王宮で行われるその場で、義母の不正を暴こうと。――アニエス様、どうか国王陛下にご説明いただけませんか?」

確かに我がレーベン公爵家は、王家ともつながりの深い家だ。現国王は、私の叔父である。


「国王陛下にご承諾を得たうえで当日に臨みたいのです。どうか、お力添えを……」


あまりに大胆な計画に、私は言葉を失っていた。そして――

「おもしろいわ! ぜひ協力させてくださいな」

私は、大きな笑みを浮かべてうなずいた。


「アニエス様……!」

「ジェシカさん。あなたのやり方には一切の不正がありません。本当に爵位継承式であのバーバラ夫人の鼻を明かせたら……さぞや爽快でしょうね」


そう――。

今となっては思い出さないようにしているけれど、幼い頃からバーバラ夫人が大嫌いだった。父の第二夫人――それも成りすましという不正の妻であった彼女は、レオンを盾にやりたい放題だったのだ。私と母がどれほど涙を流したか、数えるのも嫌になるほどに。


「ふふ。あの女が転落する姿を見たら、本当に楽しそう」

あら、いけない。うっかり口が滑ってしまったわ。私はジェシカさんの様子をちらりと窺った。すると彼女も、同じように口の端を上げてにんまりとしている。


「アニエス様。一緒にバーバラの不正を正しましょう」

「ええ。楽しみだわ」

私たちはしっかりと握手を交わした。

それから、ふと不安げにジェシカさんが眉を寄せる。


「しかし、国王陛下はご納得くださるでしょうか。厳粛なる式典の場で、このようなこと……」

「あら。案外うまくいくと思うわ」


国王陛下――私の叔父にあたるあの方は、根っからのお芝居好きだ。


「叔父様は本当にお芝居が大好きなのよね。学生時代には自ら劇団を作り、座長まで務めていたんですって。そんな叔父様が『継承式での断罪劇』を生で見られると知れば、きっと大喜びするでしょうね」


   *


そして式典当日。

私の予想は、見事に的中した。

叔父様ったら、厳粛な爵位継承の場だというのに目を輝かせていらして。アレクさんが後見人としてジェシカさんを指名したときなんて、まるで自分まで役者になったみたいな態度だった。


「……ほう? 祖母であるバーバラ夫人を指名するものと思ったが、そうではないのか?」

「はい、ちがいます。国王陛下よりたまわった領地を、このように汚らわしい者にゆだねることはできません」

ハプニングにざわめく会場と蒼白なバーバラ夫人を見て、叔父様は明らかに楽しんでいた。


――叔父様ったら、お芝居がお上手なこと。


私も、扇で隠した口元に小さく笑みを浮かべていた。

アレクさんとジェシカさんの堂々たる姿も、もちろん目に焼き付けている。


(……レオン。あなたの家族はとても立派にやっていますよ)

天国の弟も、きっと喜んでいるはずだ。



これより第2章の作成に入ります。(えっ、重大発表って書籍化とかじゃないの!?→違うよゴメンね( இωஇ ) がんばります…)


カシウス日記とレオン日記を書こうとしていたのですが、だったら本編を進めたほうが良いな。と思いました。


できるだけ早く見ていただけるよう、本当にがんばります(年内目標)!

応援はエネルギー。ブクマや★、感想、作者フォローなどで加速します。ここが気になった。ここがもっと見たいというお声もお気軽にお聞かせください(必ず反映されるとは限りません、ご了承お願いしますっ)


今こそ全力…

*₊_ ( 」` ✧Д✧ )」▁▂▃▅▆▇█▓▒全力パウァァァアア……!!

どうぞ引き続きよろしくお願いします。近いうちにまたお会いしましょう♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◉最新短編はこちら↓↓↓
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

◉カドコミにてコミック大好評連載中!
『氷の侯爵令嬢は、魔狼騎士に甘やかに溶かされる』
挿絵(By みてみん)
(10/30まで全話無料公開中)
― 新着の感想 ―
 断罪劇は、アニエス夫人と国王陛下がノリノリでしたね。国王陛下日記も拝見してみたくなってしまいます。  第二章の執筆に入られるとのことで、そちらも楽しみにお待ちしております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ