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モニカ日記②

2025/10/27の日間・異世界恋愛ランキング(完結済)で1位になりました!応援ほんとにありがとうございます。1位いただくの初めてでして、今日のことは忘れません……

-⁽ -´꒳`⁾-ペショ…

↑力尽きてる。



ダリアン商会にお供してから、しばらく経ったある日のこと。

私は、ジェシカ奥様にお願い事をされました。その内容を聞いて、思わず耳を疑いました。


「ええっ!? わ、私が、バーバラ大奥様をだますんですか!?」


しぃ――と、ジェシカ奥様はご自分の唇に人差し指を当てていました。その瞳には、強い決意が宿っています。


奥様は、事情を話してくださいました――バーバラ大奥様の不正を暴くには、ジェシカ奥様が屋敷の外で調査する時間が必要だ、と。

しかし、何度も外出していたら怪しまれてしまいます。

だから不自然さをごまかすために、あえて『若奥様が謎の男と密会している』という誤報を流させ、大奥様の注意を引き付けているうちに用件を済ましてしまおうというのでした。


「そんな……危険すぎます」

「危険はもちろん承知の上よ。でも、やらなければならないわ。最近、家令のシュバルツが私の動向を怪しんでいるようだから」


だからといって、こんな大役を私になんて……。


「こ、光栄ですけど無理ですよ……。すぐ顔に出てしまうので、ウソなんてとても。それに私はジェシカ奥様の専属侍女ですから、怪しまれるんじゃあ……」

「いいえ、むしろあなたが適任なのよ」


ジェシカ奥様いわく、真摯で誠実なモニカだからこそ信憑性が増すのだそうで。それに陰湿な大奥様は、側近であるモニカの裏切りには喜んで飛びつくだろう、と。


「な、なるほど……。でも私で本当に大丈夫ですか? 頭も悪いし、グズだし」

「あなた、自分をそんなふうに思っていたの?」


ジェシカ奥様は真剣な表情で言ってくれました。


「モニカはとても優秀よ。記憶力も良いし、学びを重ねる意欲がある。何よりあなたの真摯な温かさには、何度も救われてきたわ。――これは私の、心からの気持ちよ」

「奥様……」


胸がぎゅっとなりました。打算のない本音なのだと、まっすぐ伝わって来たんです。怖いけれど、奥様のためなら――。


「わかりました。やります!」

「ありがとう、モニカ」


さっそく、予行練習をすることになりました。


「私がバーバラお義母様の役をやるわね。モニカは、私をお義母様と思ってやってみて」

机の前に座ったジェシカ奥様は、たちまち態度が豹変しました。とても横柄でイヤな感じです。


(女優……!)

ぽかん。と見惚れていると、ジェシカ奥様は険しい視線を私に向けました。……バーバラ大奥様の幻が重なって見えます。


「何の用かしら? わたくしは忙しいの。用がないなら出て行って頂戴!」

「ひぃ」

私が立ちすくんでいると、ジェシカ奥様がいつもの雰囲気に戻って「さあ、続けて」と言いました。


こほん、と咳払いをして、ジェシカ奥様がもう一度言う。

「用があるなら早くおっしゃいなさい」

「ひ、ひゃい。実は……ジェ、ジェシカおくしゃまがお出かけしてましゅて……」

噛み噛みです。


ジェシカ奥様が噴き出してしまいました。

「ちょっ……モニカ。笑わせないで……」

「いえ真面目ですねこれは」

「だめ……お腹痛い……」

お腹を抱えてくつくつ笑っていた奥様は、やがて演技を再開しました。


「んまぁ! このわたくしに無断でお出かけですって!? あの嫁はどこに行ったの」

「そ、それが、男性と……み、密会を……」

「何ですって!?」


わなわなと震える様子が、凄まじいです。本番では、このセリフを本物のバーバラ大奥様に言わなければならないんですね……怖すぎます。


「あの嫁……! 今すぐ問い詰めて、この屋敷から追い出してやるわ!!」


気炎を噴き上げて、ジェシカ奥様は席を立つと早足で扉に向かった。私がぽかんとしていると……。

「モニカ。もしこういう展開になったら、何としてもお義母様を足止めして頂戴。『証拠が揃うまで断罪は待つべき』という方向にして、時間を稼いでほしいの」

「なんてハイスペックなご命令……」


でも、ジェシカ奥様のためならばやるしかありません。


「分かりました。な、なんとか粘ります」

「ありがとうモニカ!」

「もう一回、予行練習よろしいですか。というかあと千回くらい必要だと思います」

「ええ、何度でも。本当に助かるわ」


ジェシカ奥様と私は猛特訓を続けました。

その甲斐あってか、本番でも何とか無事に演技をやりきれたと思うんですが……正直、もう二度とゴメンです。


……モニカ・ウォルナーの一世一代の大芝居。この家のお役に立ちましたでしょうか?


今回のお話、読者さんの感想でのやり取りからポッと生まれたエピソードでした。(「モニたんはバーバラの前で芝居を打つ前に、絶対に学芸会みたいな練習をジェシカとしてたと思うんですよ……」というやり取りを、15話くらいでしています。)こういうアドリブ&ライブ感が、番外編のおもしろみなんですよね……!

感想ありがとうございました☆彡

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ばぁば(ラ)の物真似上手すぎる件について笑
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