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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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子鳩

 こういった軽口の応酬は、この会員制レストランではよく起きるようだ。他の客も特に騒いだり、文句を言ったりする事は無かった。普通のレストランでは、まず有り得ない。まあ、協会長がワインを皆におごったという事もあるのだろう。経費だが。


 しかし、さすがに話題を正常に戻すべきだと思ったらしい。サビーナがコホンと小さく咳払いをした。

 既に、ゴパルは子鳩の胸肉を全て平らげて、今は腿肉を手に持って、かじっている。ワインも、二つ共に、半分ほど飲んでいた。飲み比べながら、色々と考えを巡らせている。

 そんなゴパルなのだが、容赦なく説明を始めるサビーナであった。

「子鳩っていうのは、ヒナ鳥のことね。卵から孵化して、親鳥からピジョンミルクだけを与えられて、育った段階までを指すわね。卵から孵化して四週間目で、子鳩は飛べるようになるけれど、その直前の若い鳥を使ってるのよ」

 ゴパルが腿肉を食べ終わって、手洗い容器で指先を洗いながら、サビーナに聞いた。きちんと話を聞いていたようだ。

「鳩は哺乳類では無いので、親鳥はミルクを出さないと思いますが」

 サビーナがニヤリと笑った。

「ここでは言えないわね。後で調べなさい」


 鳩は、抱卵中から消化器官の一部が肥大していき、ハチの巣状の見た目になる。孵化する前後になると、その器官から、ミルク成分を含んだ細胞が排出される。

 それを親鳥がヒナ鳥に、口移しで飲ませて与え、育てていくのである。ぶっちゃけて言うと、生チーズ状のゲロである。これをピジョンミルクと呼んでいる。

「子鳩の肉は、成鳥と比べると鉄分が薄いから、上品に感じるわね。だけど、やっぱり鉄分の味が欲しいから、血抜きをしないで絞めるエトフェ処理をするけど。今回もやってるわよ」

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