またまた雑談
協会長が、少々オドオドしながら、スープを半分ほど飲み終えた。次に、オムレツをスプーンで切り始める。
「キャベツは地元産ですが、今は旬ではありませんので、塩漬けしたものです。ですので、野菜のダシという面では、かなり弱いですね。ベーコンは輸入しています」
確かにベーコンは、首都のホテルレストランでも、よく食べる、馴染みの風味だったなと思うゴパルだ。
協会長が、レカに視線を投げかけながら、話を続けた。
「ですが、ポカラ市の東にあるレカナート市に、国内最大級の養豚団地ができました。今後は地元産ベーコンやハム、ソーセージ等に切り替える予定ですよ」
レカが微妙な表情になっている。スプーンの先を、ヘロヘロと力なく揺らした。
「ん~……悪臭がすごいのよねー。出来も悪いしー」
カルパナがレカに、真面目な視線を向けた。
「培養液を散布してみましょう、レカちゃん。でも、いきなりギャクサン社長の養豚団地に使うのは失礼だから、まずはレカちゃんの酪農場からかな。まだ、どの程度効くのか分からないし」
レカが、再びスプーンの先をヘロヘロと揺らして答えた。
「そうね~。そうするかー」
ゴパルは特にコメントしなかった。代わりに、協会長に別の質問をする。
「ラビン協会長さん。このトマトですが、今はカトマンズ盆地や、その周辺地域でも、大規模栽培の農家が増えていますよ。彼らから一括購入する事は難しいのですか?」
協会長が、オムレツを一口食べながら、少し困った表情になった。
「ポカラの外からトマトをトラック輸送で調達すると、どうしても荷痛みが起きます。味も悪くなってしまいますね」
協会長が、オムレツを再び口へ運んだ。
「輸送に適した品種もありますが、これは皮が固すぎて、味も不味いのです。ですので、輸送距離が短くて済む、地元産を増やしたいのですが、なかなかに難しい」
ゴパルも、これまでのバス旅で、改めて道路事情を実感している。素直にうなずいた。
「なるほど。荷痛みですか」




