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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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カルパナ種苗店

 パメのカルパナ種苗店の前では、カルパナが小奇麗なサルワールカミーズ姿でタクシーを出迎えてくれた。

 しかし、晴れ着や外出用の服では無さそうである。ちょっと立派な寝間着といった印象だ。

「ようこそ、ゴパル先生、ラビン協会長さん。他の皆さんも、間もなく到着するはずですよ」


 実際、ゴパルと協会長が乗ったタクシーが店の前に停車すると、続いて、ピックアップトラックがやって来て停まった。

 ピックアップトラックからは、レカがサルワールカミーズ姿で助手席から降りてきた。肩のストールは、面倒なのか巻いていないが。おかげで、カルパナ以上に、寝間着のような印象だ。

 二重まぶたを重そうに閉じて、眠たそうな顔をしている。それでも、カルパナに両手をパタパタさせて挨拶した。

「おはよ~カルちゃん」

 そのままゴパルを見て、急にぎこちない動きに変わった。肩先で丸まっている、寝癖がついたままの黒髪が、不規則に跳ねた。身長が百五十五センチほどしかないので、何となく可愛らしく感じない事も無い。

「げ。こ、こここれはゴリラ殿、今日は、お日柄も良くっ」

 思いっきりゴパルの名前を言い間違えているのだが、誰も指摘しない。ゴパルも垂れ目を細めて合掌した。

「こんにちは、レカさん。培養液の状態を確認するだけですので、今回はすぐに終わりますよ」


 ピックアップトラックの運転席に座っている男が、ニヤニヤしてレカを冷かした。レカと同じような長髪で、首の後ろで簡単に束ねているのだが、体つきは結構な筋肉質である。身長はゴパルよりも少し低いくらいだろうか。

 しかし、彼もまた挙動不審な動作をしている。ハンドルを両手でベシバシ叩いて、頭を前後に軽く振っていた。

「レカ。店の商品をぶっ壊すなよ。じゃ、俺はバンドの練習に行ってくる。講習が終わったら、メールでも電話でもしてくれな。それじゃあ、ゴパル先生、妹のレカをよろしく頼みます」

 そう言い残して、ピックアップトラックを急発進させ、Uターンしてレイクサイド方面へ戻っていった。どうやら、運転していたのは、レカの兄だったようである。

(挙動不審な動きが似ているし、確かに兄妹なのだろうなあ)

 そんな、失礼な感想を抱くゴパルであった。


 続いてスクーターに乗ってやって来たのは、サビーナだった。

 フルフェイスのヘルメットを取り、ハンドルに引っかけ、黒髪のショートボブを片手ですいた。丸まった毛先が、さらに丸くなる。

 今回はレインスーツ姿では無く、日常着のサルワールカミーズで、きちんと肩にストールをかけている。

 服のセンスは、ここに居る者の中では、協会長やビシュヌ番頭と同等か、それ以上だ。ま、あくまでも日常着だが。

 店の前に居る面々を見て、パッチリとした二重まぶたの黒い瞳を、キラリと鋭く輝かせた。若干、目尻が上がっているので、少々きつい印象になる。

 スクーターは、インドの製造メーカーの百二十五CCで、青い車体が、鈍く反射している。

 そのエンジンを切って、颯爽とした風でバイクから降りた。

「何とか、間に合ったわね。さっさと始めましょ」

 声も低めなので、さらに男っぽく見える。身長はカルパナと同じく百六十センチほどなのだが、雰囲気のせいか、ゴパルよりも堂々としている。


 店内には、カルパナの他に、種苗店のビシュヌ番頭が待っていた。彼も、カルパナと同じく日焼けしている。番頭がゴパルに合掌して挨拶してきた。

 身長はレカと同じ百五十五センチほどなのだが、威厳という面では、協会長と同等以上だ。彼は半袖シャツにジーンズで、サンダル履きであった。二重まぶたの切れ長の目を、さらに細めている。

「ゴパル先生、アンナプルナから、無事にお戻りなされて良かったですね。こちらの準備は整っていますよ」


 最後に、バイクを駆ってスバシュが到着した。彼のバイクは、三輪タクシーの製造で有名な、インドの会社が製造しているものだ。百二十五CCのバイクである。色は真っ赤だ。

 座席シートの後方には、大きくて丈夫そうな荷台があり、上に箱やカゴ等を置いて運ぶ事ができるようになっている。

 ヘルメットを外して、ゴパルに合掌して挨拶してきた。彼は、先程まで野良仕事をしていたのか、ジーンズやサンダルに、雑草の葉や茎が付着している。

「ようこそ、お越しくださいました。ゴパル先生。チヤをすぐに用意いたしますね」

 チヤと聞いて、ピクリと反応するゴパルであった。が、ここは講習会を優先する。皆に向き合った。

「お忙しい中、ようこそお越しくださいました。ありがとうございます。では、早速ですが、培養液の状態を確認しましょうか」

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