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アンナプルナ小鳩  作者: あかあかや
氷河には氷があるよね編
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カビたパンと

 ゴパルがリュックサックを開けて、中からプラスチック製の試験管チューブを数個取り出した。綿栓でしっかりと閉じられている。ピンセットとアルコールランプも取り出して、ランプに火をつけてピンセットの先を炙る。

 そのピンセットの先が、赤くなってから、固まった牛乳を手元に置いた。器用に表面のゴミを避けて、ピンセットで小さな塊を切り取る。ちょうど固めのヨーグルトだ。

 それを手早く試験管の中へ入れて、綿栓でフタをした。すぐにピンセットの先をアルコールで洗って、再びランプで熱する。

 干しブドウは、その表皮だけを器用にピンセットで切り取って、同じように試験管の中へ入れた。


 興味深く、ゴパルの手元をのぞき込んでいるニッキと、民宿スタッフに、微笑むゴパルだ。息も止めていたようで、大きく深呼吸をした。

「これは、乳酸菌と酵母菌の採集ですね。まあ、ほとんどの場合、雑菌が繁殖して失敗するのですが。何か役に立ちそうな菌が、これで見つかると良いですね」


 続いて、カビの斑点が生じている食パンを手に取った。そこから、青い斑点をピンセットで取り、試験管の中へ入れた。続いて黄色や赤色の斑点を採取して、別の試験管の中へ入れていく。

「これはカビですね。ほとんどのカビは、食べると病気になるのですが、中には役に立つカビもあるのですよ。これが、その役に立つ種類であれば良いですね」


 へー……と、感心しているニッキと宿泊スタッフだ。

 いつの間にか、スマホで遊んでいた欧米人観光客もやって来ている。ゴパルが英語で簡単に説明をすると、早速、質問の雨を降らせてきた。さらに、スマホのカメラで撮影まで勝手に始め出した。

 一応、サービスとして、試験管の中の採集サンプルを彼らに見せる。綿栓は開けられないので、少々、撮影が難しい様子だ。

 数分ほど撮影会と質問を受け付けたゴパルが、試験管とピンセット、アルコールランプをリュックサックの中に収める。

 それで欧米人観光客も興味が失せたようで、再びテレビの近くのソファーに戻っていった。

 ゴパルがニッキに垂れ目の顔を向ける。

「では、ニッキさん。会計をお願いします。この牛乳の代金も付けてくださいね」

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