民宿ナングロ
ゴパルが予約していた事をオヤジに伝えると、すぐにスマホを操作して確認した。
「ゴパル・スヌワールさんだね。ようこそ、民宿ナングロへ。俺は宿のオヤジのアルビン・グルンだ。とりあえず、部屋へ案内するよ。ついてきな」
チャイとか言わないグルン族なので、少し驚いているゴパルであった。欧米人観光客も数名ほど宿泊しているようで、英語でアルビンにビールを頼んできた。アルビンが流暢な米国西海岸訛りの英語で答える。若干、スペイン語訛りがある英語だ。
次いで、食堂スタッフに、ビールを二本と、グラスを二個持って行くように指示を出した。スタッフは大人のグルン族で、年齢はアルビンと同じくらいの、四十代後半だろうか。少年スタッフは見かけない。
案内された客室は、デオラリよりも少しだけ広かった。部屋には丈夫そうなベッドが二つと、イスが二つ、小さな机が一つ。
テレビは無く、衣装棚が一つあった。洗濯物を干せるように、部屋の隅にはロープが張られている。ロープには、いくつかハンガーが掛けられていた。ベッドには厚手の毛布が一枚ずつ、畳まれて置かれている。
照明は発光ダイオードで、化粧鏡が付いた小さな洗面所もある。
その洗面所の中に、五十リットル容量の、電熱ヒータータンクが設置されているのを見て、垂れ目を細めるゴパルだ。トイレは水洗で、バスタブは無いのだが温水シャワーが付いている。まあ、タンク容量が少ないので、節約して使う必要があるが。
床は石畳になっていて、土足で歩き回る事ができる仕様になっていた。こんな寒い場所で、裸足で室内を歩き回るのは、あまり推奨できない。
(後で、一息ついたら、洗濯物を干すとするかな。干し場があって助かった)
室内にコンセント穴があるのも、高評価だ。ノートパソコンやスマホの充電ができる。
宿のオヤジのアルビンが、ゴパルに聞いてきた。
「で、この部屋で良いっすかい? ゴパルの旦那。寒かったら、追加で毛布を出しますんで」
微笑んで即答するゴパルである。
「十分だよ。さて、それでは早速、調査と測量を始めたい。誰かスタッフを一人、低温蔵の建設予定地まで、案内につけてくれると助かります」
アルビンが、ニヤリと笑った。
「俺が案内をするよ。ちょうど昼飯時間が終わって、一休みしていたところだ。低温蔵とやらを作ってくれや、ゴパルの旦那」




