ダチョウ肉の料理いろいろ
続いてダチョウ肉の料理が運ばれてきた。
フィレ肉と腿肉はグリルされていて、ソースはなく塩コショウだけだった。トマトソースがかかっているのはダチョウ肉をミンチにしたハンバーグだ。赤ワイン煮込みもあり、サビーナの説明によると首肉や内臓を使っているという事だった。どれも結構な量がある。
サビーナが赤ワインをグラスに注いで回りながら、軽く肩をすくめる。
「レストラン料理というよりは、本来ピザ屋向けの料理なんだけどね。でも低カロリーで単価の高い肉だから、私のレストランでも出してる。富裕層に人気かな。アバヤ先生のお気に入り料理でもあるわね」
ダチョウ肉の平均カロリーは百以下だ。鶏肉は二百五十ほどなので低カロリーといえる。
「ダチョウ料理は淡白だけど、これでお腹をある程度満たしておきなさい。次は小さな野鳥だから、お腹に溜まらないのよ」
今回は赤ワインを最初から飲んでいるが、赤ワイン煮込みがあるので納得したゴパルだった。
「それでは遠慮なく食べますね」
最初にハンバーグを口に入れた。小首をかしげるゴパル。
「んー……淡白過ぎるような。脂も少なくてパサパサしています」
サビーナも試食して腕組みをした。
「……確かにね。でも脂を加えると本末転倒だしなあ。コレは要改善だな。ソースを変えてみるか」
他のグリルや赤ワイン煮込みは好評だった。カルパナはグリルを気に入った様子である。
「グリル料理なら、パメの家でも出せそう。タンドリーチキン風にしてみようかな。ハンバーグはゴパル先生の言う通り、脂が足りない感じだよね。豚の脂を足すの?」
サビーナがパクパク食べて赤ワインで流し込みながら、微妙な表情になった。
「それでも良いけど、鳥肉だから鳥の脂の方が良いかな。フォワグラとか」
ここでサビーナが何か思い出したようだ。ゴパルに顔を向けた。
「そうそう、忘れてた。バルシヤ社長から今朝電話があって、KLをフォワグラとキャナール生産で使う目途が立ったって。次からは全羽でKLと光合成細菌を使うそうだよ」
ゴパルが喜びつつも頭をかいた。
「私にも知らせてくれたら良かったのになあ。ブトワル出張中だから遠慮したのかな」
カルパナもゴパルに同意した。
「今、私も初めて聞きました。バルシヤ社長って、こういう所がちょっとあるんですよね。困った人です」
サビーナがお澄まし顔になって推論する。
「フォワグラとかキャナールでのKLや光合成細菌の使い方は、バルシヤ養鶏の企業秘密になるんでしょ」
そうなるだろうなあ……と思うゴパルである。サビーナが話を続けた。
「カルちゃんやゴパル君に電話すると、うっかり口を滑らせて情報を漏らす恐れがあるからじゃない? 養豚団地のギャクサン社長も似たような感じだし」
その通りなのだろう。しかし微妙な表情を続けているゴパルとカルパナだ。サビーナが追い打ちをかける。
「ちなみに、フォワグラを使った料理は今回出さないわよ」
がっくりと肩を落とすゴパルである。
「期待させといて、それはないですよ~、サビーナさん」
サビーナがご機嫌な表情で給仕に合図を出した。
「もう、お腹の具合は良いでしょ。それじゃあ、ヤマシギを出して」




