プラガティナガルの食堂
プラガティナガルは宿場町でもあるので、宿屋や食堂がそれなりにある。今回はシャムが行きつけにしている食堂に入った。実質は居酒屋のようだが。
「ダサイン大祭前ですので、山羊肉が高騰しているんですよ。干し肉のスクティで構いませんか?」
快く了解するカルパナとゴパルである。
料理を注文してから、ヤマの助言に従って荷台の臼を分解する。さすがにそのまま持ち運ぶには大きいためだ。思った以上に簡単に分解できたので、ゴパルが感心した。
「はええ……これなら子供でも持ち運べますね。木製だから修理も簡単ですし」
ヤマが同意した。
「ですよね。ディーパクさんを水道事業で雇いたいくらいですよ。ですが、すり潰すパーツだけは特殊な素材を使っているという事でした。可燃性なので燃やさないようにしてください」
宇宙エレベータの開発で生まれた素材らしい。本来は難燃性なのだが、コレは廉価版なので燃える。
シャムが指示して、仲間の農民達に分けて持たせていく。テキパキとした動きを見て、パン工房長を思い出すゴパルだ。
(雰囲気が軍隊みたいなんだよね……この生真面目さがディワシュさんやサンディプさんにもあればなあ)
酒のメニューもあったのだが、これから険しい山道を上るので遠慮するシャム達だ。ゴパルも少し残念そうな仕草を見せつつ遠慮する。
「マガール族の酒は、帰りに飲む事にします」
カルパナが素直にうなずいた。
「それが良いですね」
食事は普通のネパール定食だったが、香辛料の使い方に特徴があったようだ。楽しむゴパルである。
ヤマには少し辛かったようで、水のペットボトルを一気飲みしてから額の汗を拭いた。
「ふう。少し辛めでしたが美味しかったです。シャムさんの家で一泊してくるんですよね。明日は、この食堂へ何時ごろに迎えに来れば良いですか?」
カルパナがシャムと相談して、ヤマに英語で答えた。
「カウレ村からプラガティナガルへ、日没前に着きたいので、日没後でしょうか。下山中に電話してお知らせしますね」
ヤマがピックアップトラックを運転してポカラへ戻っていくのを見送ったカルパナが、シャムに振り返った。
「では、シャムさんのカウレ村へ向かいましょう」
シャム達はこの町で買い出しもしていたようで、使い古したリュックサックに色々と詰め込んでいる。ビシッと直立不動の姿勢になって答えるシャム達だ。さすがに敬礼まではしていないが。
「ハワス、カルパナ様っ」
カルパナが困ったような笑顔を浮かべてゴパルに視線を流してくる。ゴパルがとりあえず首を振って反応しながら答えた。
「今回の先生はカルパナさんですから、諦めてください」




