強力隊
ゴパルが荷札に送り先の住所を書き終えて、代金を支払って間もなくすると、民宿の軒先に数名の強力隊が到着した。
三名の屈強そうなグルン族の男達で、背中に大きな荷物袋を担いでいる。軒先のベンチの上に、荷物袋を下ろして、太い首と肩を回した。
すぐにニッキがチヤを渡して回る。チヤを受け取った三人の強力のうちの一人が、ニカリと笑った。
「おう、サンディプ。話は聞いたぜ。ゴパル先生とやらの荷物をチャイ、運べば良いんだなっ」
野太い声だ。薄汚れた野良着で、青いシートを雨合羽として頭から被っている。荷物袋は軍の払い下げ品のようで、かなり年季が入った代物だ。
ジッパー部分は壊れていて、ボタン留めと紐締めに変更されていた。ズボンは膝下までで、たくましい脛が見える。
そして、何とサンダル履きであった。両手と両足も骨太で分厚く、雨期だというのに小麦色に焼けている。
サンディプが、ニッキからゴパルの荷物を受け取る。防水と耐衝撃用のビニール製のクッションを、荷物にクルクルと巻きつけた。実に手慣れている作業だ。
あっという間に梱包が終わり、サンディプが強力に白い歯を見せた。
「おう、頼むぜ。車道に出たら、後はディワシュの四駆便にチャイ、引き渡してくれや」
ゴパルの荷物が、強力の巨大な荷物袋の中に入っていった。チラリと見えた袋の中身に、ゴパルが納得した表情になる。
「なるほど。手紙や小包が多いのですね。他には、竹細工かな」
サンディプが白い歯を見せて笑った。
「まあな。ロバ便だと破損しやすいし、補償が面倒なんでナ。人が運ぶ方が安心だ」
強力隊がチヤ休憩を終えて、空になったガラスコップを軒先のベンチの足元へ置いた。ベンチの上に置くと、何かの弾みで落ちて、割れる恐れがある。こうして、地面に置くのが習慣だ。
「んじゃ、行くか。ネパール語は苦手でな」
ギシリと軒先のベンチが軋んで、荷物袋が強力隊に再び担ぎ上げられた。ゴパルが首をかしげる。
「あれ? タバコは吸わないのですか?」
強力隊の面々が苦笑した。サンディプが肩をすくめる。
「民宿では禁煙なんでナ。じゃあ、行って来い」




