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センスなんかいらない  作者: 大宮聖
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試験

 夜更かししながら部屋の壁を見つめる――試験に対する様々な感情が腹の底にへばりついていた。試験に受かることが出来ればおれは誇りを持てる。生まれて初めて、何かをやり遂げることが出来る。そうしたら何が変わるのか、何が得られるのか。みんなに褒めて貰える。

 そして――自分のことを少しだけ、好きになれるのかもしれない。

 机に向き直り、過去問を解きなおす。当然のように全問正解できる。安堵感が胸の奥まで広がっていく。ボウリング場にいる面子――頭から打ち消す。おれは自己肯定感を手に入れる。あいつらには悪いが、もう二度と会うことはないのかもしれない。おれの知らないところで、彼らはテロを起こし、世の中を破壊しようと試みる。

 資格に受かったあとの人生を破壊してまで、おれは彼らについて行くつもりは無い。合格すればすぐに忘れるはずだ。彼らに対する後ろめたさも、榮倉に対する劣等感を拗らせた殺意も。元々何の関係も無かったのだから。

「これなら大丈夫だ」

 教科書を閉じた。ベッドに身を横たえ、試験問題に意識が集中している間に眠ろうとした。おまえに受かるはずが無い、おまえは何一つとしてやり遂げられない――声には際限がない。それは呪いだった。おれは布団の中に潜り込み、目と耳を塞いでそれを閉め出した。


 試験当日。母に送ってもらい、校門の手前で別れた。人はまばらだった。受付で受験票を翳し、試験場――英教高校のキャンパス内を歩いた。当たり前だが、土曜日なので英教高校の学生は見当たらなかった。受けているのは大人ばかりだった。

 この高校に立ち入るのは二度目。一昨年もここで試験があったからだ。去年は最寄りの大学で試験が行われた。今年はこの私立高校が試験会場に設定されている。

 おれは辺りを見回し、隠れるようにして人混みをすり抜けた。おれの高校から公害防止管理者の資格を毎年数人ずつ受ける。だから、おれの後輩もここに来ているはずだ。後輩と顔を合わせるのは後ろめたかった。

部活に所属せず進学クラスに移ったおれは、同じ科の後輩と喋ったことも無かった。学生なら当たり前に経験している先輩後輩の関係――おれにはそれすらも無かった。周りの人間の部活に関する話を聞いているだけで、肩身が狭く、自分に嫌気が差した。

 おれは後輩という生き物が苦手だった。中学校時代にパソコン部に入っていた時も、おれは後輩に一言も話しかけられなかった。どう接すればいいのかわからなかったからだ。パソコン部は一時間程度しか活動しておらず、当時のクラスメイトからは「サボり部」だと嘲笑されていた。今思えば、パソコン部の活動云々はどうでも良くて、単におれを馬鹿にするための方便として使われていただけなのだろう。

 苦々しい記憶を頭から閉め出した。係員の案内に従い、三階の教室まで歩く。着席して、スマートフォンを眺める。がんばってね――ラインに母から連絡が来ていた。心がほころんだ。ほころんだ心のまま、おれはテキストを開いて持ってきた資料と合わせて隅々まで眺めた。


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