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「あ〜、楽しかったね〜」
何個のお化け屋敷も回った後、休憩するためにフードコートにまで来た。僕はヘトヘトでテーブルの上でうつ伏せになっている。それとは対照的に向かいに座っている川口さんは終始ニッコニコである。
「そ、そうですね……」
「やば、死にかけじゃない」
そりゃ、苦手なお化け屋敷連発されたらこうもなります。未だに緊張して体がプルプル震えている。そんな様子を見て川口さんはケラケラ笑っている。本当に楽しそうだな〜。
「まあ、折角お昼食べるんだし、ゆっくりしよっか」
「へい……」
疲れすぎて適当な返事になってしまう。慣れない事をしているのだ。多少は許してほしい。僕達は買った飲み物を飲んでゆったりする。
「でさ、一つ気になってる事があるんだけど良いかな?」
「気になること?」
川口さんが急に尋ねてきた。僕は一体何の話だろうと彼女の返答を待つ。
「その、さ、越谷さんとの仲はどうなの?」
「え?」
お化け屋敷いってる時は他の女子や越谷さんの話をしないでと言っていた気がするけど……と内心思うが真面目な顔をしている川口さんに伝えるのは憚られた。そういう事ではないみたいだ。
「え、え〜と、仲良く?してるよ」
「む〜」
川口さんはぷく〜と頬を膨らませてむくれいている。え、美少女がやるとめっちゃ可愛いな。前に僕が似たような事をやった時は越谷さんに脳天チョップを食らった経験がある。
「それって私より?」
「んん?」
言っている意味を一瞬考えたが、それは僕が川口さんより越谷さんとの方が仲が良いと思っているのかと聞かれているのか。真意は分からないが一生懸命脳を働かせて答えを出す。
「そ、そんなの決まってないよ」
「そりゃ、そういうしか無いだろうけどさ〜」
川口さんはむくれたまま、そっぽを向いてしまった。川口さんは何を考えているんだろう。どっちの友達の方が仲良いなんて質問に意味なんて無いと思うんだけど。
「……私が聞きたい真意に全く気付かないね……」
「大変申し訳なく……」
「そういうの良いから」
「はい」
女子のこのモードに入ってしまったら自分の手に終えないというのは経験上知っている。僕だって乗り越えてきた修羅場、一つや二つじゃないんだよ(ほぼ越谷さんと川口さんが相手だけど)。
「ねえ、本当に私の気持ち分かってないの?」
「……」
そこからお互いが黙ってしまう。僕だっていくら鈍いといっても勘違いしてしまいそうになる。だけど越谷さんだけでなく川口さんまでだなんて信じられないんだ。だってそうじゃないか。僕はただの陰キャなのに、そんな事がありえるのかって。
「ねえ、何があったのか。教えてよ」
「え?」
気付いたら川口さんは僕のすぐ近くに椅子を寄せてきていた。僕が驚いてリアクションを取る前に彼女は矢継ぎ早に話す。
「越谷さんと何かあったでしょ?」
川口さんは真っ直ぐ、僕の瞳を見つめていた。その素直過ぎるその瞳が僕にとって眩しすぎる。
「だって越谷さんの家に行ったんでしょ。元々近かったとはいえ何か距離感も縮まった感じするし……」
「そ、それは……」
「そりゃ、二人だけの秘密なんだろうけどさ。それでも付き合ってる感じもしないしどういうことなの?」
何と答えるのが良いのか考える。正直に話すしか無い気がするけど、でも越谷さんとのことは秘密にしたほうが良い気もするし、でも川口さんなら他人に話す事はないとは思うし、など脳内がごちゃごちゃしだす。
「私だけ除け者なんて嫌だよ」




