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「僕の場合、上手くいってるというか尻に敷かれまくってるだけなんだよね」
「それはそうだな」
本庄君の返しを聞いて椅子からズルっと滑る。そりゃ傍から見てもそうとしか言えないよね。
「でも楽しそうにしてるじゃん。お前の優しい性格を皆が分かってるからイジってるんだよ」
「そうかな……」
まあ、皆が意地悪で僕と接している訳では無い事は分かる。それに僕が慣れて居心地が悪くないというのもあるし。
「まあ、お前の人徳と皆の性格が合ってるっていう話で、俺と坂戸とはケースが違うわなあ」
「まあ、そうかも……」
坂戸さんが凄い嫌な女子という程ではないのだろうが打算で動いているのが目につきすぎる。それは本庄君への好意からなのだろうが周りの人の事を計算に入れていないのがマズイ気がする。それに何より本庄君の気持ちが知りたい。僕の用事もそこにあるし。
「……、本庄君はさ坂戸さんの事をどう思ってるの?」
「ん? まあ嫌いって訳じゃねえよ。ただなあ、俺の連れに迷惑かけるのが嫌なんだよな」
「そこは本庄君から彼女に言うしかないよ。君の言葉なら聞くと思うし。ってそれもそうだけど」
僕の言わんとすることを察したのか頭をポリポリ掻いている。すると今度は腕を組んでう〜んと考えだした。僕はその返事を黙って待つ。
「……、流石に俺も分かるぜ。好意を持たれてるってことは。たださっきも言った通り嫌いじゃない、くらいだな……」
重い腰を上げて答えをくれる。まあ大体予想した通りの返事ではある。本庄君が坂戸さんの事を女子として意識してる様子はない。ここから発展しても仲の良い友達止まりだろうなと考えてしまう。とまあ坂戸さんの事は分かった。それより本庄君に好きな人がいるかの話を聞かなければ。
「それは他に好きな人がいるから?」
「え?」
本庄君が驚いた顔でこちらを見つめる。そんな事を聞かれるとは思っていなかったのだろう。
「……、そうかもな……」
どうやら入間さんの言う通り、好きな人がいるらしい。だが肝心のその先の内容を話してくれない。いくら僕と本庄君が話すようになったとはいえやはり踏み込み過ぎたのだろうか。
「まあ、男同士で好きな女子の話くらいするよな。でもお前がそんな話に興味持つとは思わなかったな」
「ははは……」
流石に鋭い。まあ、いきなり僕が好きな人いるの? って聞いたらそりゃ不審か……。でも聞くならこの話の流れしか無かった。小川君なら何も考えず聞いてるかもしれないけど(?)
「俺のことも良いけど。お前の方がどうなのか気になるけどな」
「うっ……」
痛い所を突かれて顔をしかめる。まあ、でも話を聞かなきゃいけないんだ。僕の話もしないとフェアではないか。僕は何と言おうか高速で脳内を動かし考える。
「え〜、答えを保留というか。何というか……」
「え、お前告白されたん?」
あ。テンパリ過ぎて余計な事を口走ってしまった。誰にも言ってなかったのに。しかしもう言ってしまったものはしょうがない。ああ、本庄君がニヤニヤ笑っている。いつか本当に頭を叩かせてもらおう。
「まあ、越谷さんだろ。で保留ってことは付き合わないけど振った訳でもないのか。男らしくねえなあ」
「ぐぐぐぐ……」
返す言葉がなさすぎてうめき声を出すことしか出来ない。僕はテーブルに突っ伏して頭を抱える。本庄君の顔は見えないがさぞかし楽しいに違いない。
「なるほどなあ。お前らしいな。で川口さんの事はどうするん」
「川口さんがどうしたの?」
「は?」
お前本気かと言わんばかりに口をあんぐり開けて呆れていた。




