15話 「決意の月に」
母は留まることない、自然な流れで、
血まみれのメルサを連れていってしまった…
まずいことになった…
『月のもの』とはなんだ…?
おい!約束はどうした!?
イルスと話つけたら、
解放してくれるはずだろう?
とは言えず。
よく考えたら、
話をつけたのは母さんで、
貞操どうこうとか言う前に、
オーガの女に追われている。
でも、そうこうしているうちに、
メルサが母さんに消されたらどうしよう…
「月のものってなんだ?」
とウィルとテンに聞くと、首を横に振った。
彼らも『月のもの』については、知らないようだが、
ウィルは母の反応を見て、
俺が悪いのではない、と理解してくれた。
メルサ救出&里脱出大作戦だ。
居る場所は、おそらく実家、
そして以前作った、
地下通路はまだ生きている。
手札だけは揃っている。
だがどうやって母からメルサを奪い返し、
母とオーガの女をはねのけ、里の外に出るか…
力ずく?
いや、誰かが傷付く戦いは避けるべきだ。
それに母と戦ったところで、勝てるのだろうか…
説得する?
あの母相手に話など通じるはずもない。
ウィルも真剣な眼差しで考えている。
「なぁ こうゆうのはどう?」
テンがおもむろに提案した。
「テン 効くのか?」
この作戦はテンの腕にかかっている。
「分からないけど 僕がやるしかない」
頼もしい。
いまだに夜中一人で小便もできない、
ビビりには変わらないが 、
仲間のこととなると、ここまで男らしくなるとは。
いや、元来テンには頼られるだけの力があった。
「よし、それで行こう
決行は陽が落ちる瞬間で」
ウィルがまとめた。
――――メルサ視点----
私は女の身体について、教えて貰った。
恐れていた母オーガは、
意外にも口調は穏やかだった。
母という安心感。
恐怖は尊敬に変わっていた。
あのオーグンを生んだのは、この人なんだと。
私は今まで散々行為はしてきた。
子が出来ないのが、武器だと思っていたが、
そうでは無かったのだ。
でも、それが不思議に嬉しかった。
私は武器を失ったのではない。
女になったんだ。
色々と、生理の時、
何をすればいいか教わる。
次の子供をつくるための準備。
身体はそのために忙しい。
だから大人しくしてなくてはならない。
とか、
この方にそうゆうことを教わるなんて、
夢にも思っていなかった。
私の聴覚が地下でゴソゴソと、
動いている音を感じた。
と同時に、母オーガもため息をついた。
以前使った通路から、オーグンがやってきた。
「か、母さん、メルサを返してもらうぞ」
オーグンの声は、少し震えている。
以前、乙女悪魔が、
「イケメン王子様が私を連れ去ってくれる」
と夢見ていた。
私は内心そんなことが夢なんて、
と馬鹿にしていたが、
今なら彼女の気持ちがわかる。
連れ去っていくのが、イケメンではなく、
THE 強面だとしても。
自分の事をしっかり見てくれる、
存在がいるのは悪くない。
そもそも私が見た目をどうこう言うこともない。
「あんた、
オーガの娘たちより、この娘がいいの?」
母オーガの怒気が膨れ上がる。
それに応じるかのように、
オーグンも身構える。
「?」
空気の流れが変わった。
おそらく、この空気の流れ、
大きな竜巻が出来たもの。
「何?まさか…?またイルスが暴れたの?」
母オーガも気付き、窓のほう、竜巻を見た。
その窓枠に立っていたのは、テンだ。
片手には、悪魔軍の魔道具、透明マント。
ここに来るまでに、作戦を立てていたのだろう。
あの竜巻はイルスのではない。
「しまった…」
母オーガがそういった瞬間、
眠りに落ちた。
「メルサ!こっちだ!」
オーグンは私の手を強く引き、連れ出す。
私は今、幸せなんだと実感した。
イルスに殺されかけた時、
この居場所の楽しみを実感し、
今は幸せを実感している。
オーグンだけじゃない。
テンも、そしてウィルも、
私を悪魔とか、はみ出し者とかではなく、
メルサとしてみてくれている。
今までそんなことはなかった。
そしてもう疑うことはない。
私はオーグンに恋をしてしまっている。
認めよう。
そして隠し通そう。
私がこの場にいるためにも。
だから、
それ以外は、すべて打ち明かそう。
私の居場所はここなんだ。
その結果、私がウィルに殺されようとも。
手にある、母オーガが洗ってくれた下着。
なぜか分厚く感じ、開いてみると、
布の切れ端が、下着に包まれている。
文字が書かれていた。
『お互いに好いているのなら認めます。
しかし、オーグンには
他にオーガの妻を娶ることを許しなさい。
オルトナ』
私 生きたい。
本能ではない。
感情で初めてそう思えた。
だから腹を括れた。
「みんな 隠していたことがあるの…」
―――――父オーガ
オーグンが女の手を引き、出ていった。
俺は物陰から黙って見ていた。
俺は悪魔とかオーガとか、
そんなことはどうでもいい。
正確には、そこまで考える頭がねぇんだがな。
「母さん、いつまで寝たふりしているんだ?」
「ふふ、
強くなったわね」
彼女はすっと起き上がる。
「何いってんだ、
オーグンは生まれたときから、
そこらの奴らと比べても、
桁違いに強かっただろう?」
「あんたはほんとバカね、
強さとは力で相手を打ちのめす事、じゃないのよ」
「それは母さんみたいに
強さを極めたから出てくる精神論だろ」
「………
そうかも知れないわね…
力が強くない者の方が、
強いのかも知れないわね…
力弱き者が、何度も打ちのめされながら、己を鍛える
力強き者が、何故強き者になったのか、天命に苦悩する
結局は同じなのかも知れないわね
はぁ…
私はあんたみたいに中途半端に強くて、
中途半端に悩みながら、
好きに生きているのが、羨ましいわ」
「だろー?」
俺にだって多少の悩みはある。
だがオーグンや母さん、爺さんに比べたら、
度合いは大したことはない。
周りからの期待もほぼないし、
考える頭もない。
皆、強き者の宿命のようなものを、
背負わされている。
考えただけで、頭が痛くなるな。
だがオーグンたちなら大丈夫だろう。
俺より強く、
母さんより、仲間にも恵まれ、
爺さんの時より、時代が変わった。
俺の旅もあんなんだったら良かったな…
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⚫︎囚われ姫は魔王に救われる
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恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。
勇者が姫を救おうとするが、姫は運命か自由かの選択を迫られます。




