表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/292

83話 セレシアとの戦闘 前半

 レオンからセレスが魔王だと確認をとってから数日。魔の森の近くまで帰ってきた。


「本当に一人でいいのか?」

「ううん、一人じゃないとダメなの。ライアスには悪いけど……」

「いや、確かに俺も魔王退治を目標にしてたけど、サクラ程強くなれなかったしな」

「十分に化け物じゃないか。比較相手が悪いだけだよ」


 陛下にはまだ報告してないが、ライアスとライラさんにはセレスが魔王だと話をした。もちろんレオンの許可もとってからだ。


「カトレアちゃんと学園長には無事に戻ってサクラから報告しておくれ」

「まかせて!」


 どうしてセレスが魔王になったのか分からない以上、まだ救い方は分からない。分かっているのはセレスの望みじゃないこと。そして助けを求めてること。それにレオンは私に頼むと言った。頼まれた以上、私は最善を尽くすつもりだ。


 別れの挨拶を終え、私は一人、セレスの元へ向かう。


 魔の森に入るまでは何度か魔物に襲われたけど、魔の森に入ると魔物は襲ってこなくなった。そういえば最近はセレスと一緒だと魔物に襲われなかったなと思い出す。自分達が強くなったから襲われなくなったと思っていたけど、セレスが魔王だったから攻撃してこなかったのだろう。


 遺跡に着き、中へと入る。前回来た時は結界もあったし魔族が居たけど、もちろん今回はそんなことなく中を進んでいく。遺跡の内部は前回とも変わっているけど迷うことは無い。セレスを信じて歩くだけだ。


 前回アービシアやヴァニティアと戦った大部屋の前まで来た。中でセレスが待っているのが分かる。向こうもこちらに気付いているだろう。


「……サクラ。待ってたよ」


 扉を開けると小さな龍の形態をとったセレスが出迎えてくれる。


「セレス、救いに来たよ」


 セレスははっと息をのむ。


「……すでにサクラは私を救ってくれてるよ」


 悲しそうな、寂しそうな。ほんの僅かな喜びや期待を塗りつぶすような感情と共にセレスがつぶやく。


「サクラ。行くよ」

「待って、戦わない方法はないの?」

「……ごめん」


 私の質問には答えずに攻撃してくる。

 以前戦った時よりも多く、重く、速い攻撃が襲ってくる。

 早速身体操作を使って植物の大群をギリギリで躱す。


「セレス! なんで戦わなきゃいけないの!?」

「サクラ? 私は魔王なんだよ? サクラは魔王を倒すために頑張ってきたんでしょう?」


 辛い。悲しい。戦いたくない! そんな気持ちを隠そうとしつつセレスが攻撃を強める。

 攻撃を躱しきれなくなった私は氷華を抜いて襲いかかる植物を打ち払う。


「でも、セレスとは戦いたくないよ! セレスも同じ気持ちなんでしょう?」

「気持ちだけじゃダメなの! 私は……。魔王として討伐されるならサクラに討伐されたい」


 セレスの背後に一回り大きな花が咲く。花弁が輝きだし、レーザーのような攻撃をしてくる。

 私は冷気を固めて氷を鏡のように固定してレーザーの向きを逸らす。


「魔王としての能力を制御しようよ! 私達の旅でしてくれたみたいに活性化した魔物でも人を襲わないようにできるんでしょう?」

「さすがサクラだ。気付いてたんだね。でもダメなんだよ。今は良くても最後は抑えきれなくなる。私は……僕はもう人を滅ぼしたくない! もう悲鳴は聞きたくない! 敵意の籠った、殺気の籠った目で見られたくない! 僕はしたくてやってるわけじゃないのに!」


 悲鳴のような。拒絶するような強いセレスの感情と共に無数の小さな花が舞い上がる。全ての花が輝き始め、小さなレーザーを大量に発生させた。

 私は氷の鏡を増やしてレーザーを逸らし続けるが幾つかが鏡をすり抜けて足に、肩に、少しずつ傷を付けていく。

 でも、まるで小さな子が泣きじゃくるようなそんな攻撃に反撃をする気は無い。何とかして救ってあげたい気持ちが強くなる。


「救うというなら! 僕を救ってくれるというなら、サクラが僕を殺して! 化け物としてではなく! 誰かの仇でもなく……。魔王ではなくただの神霊として、サクラの友だちとして。私を殺して」


 セレスの攻撃が止む。全てを諦めた。絶望したような感情を持ちつつ私を見つめる。

 正直、セレスの抱える闇が分からない。錯乱しているようにも感じるし、悪い夢と現実が混ざっているようにも感じる。


「セレスは誰も傷付けてない! 誰かに敵視される理由なんてない! 未来だって決まったものじゃない! なのになんで全てを諦めてるの? 絶望するのはまだ早いよ!」

「サクラ。人は誰も知らないけれど、この世界は何度も何度も繰り返してるんだ」


 え? 私の頭に浮かんだのはSDSの一周目から六周目までの世界。魔王(セレス)が王国を攻めてくる光景。

 それはまるで七番目(Seventh)の神霊である龍形態(Dragon)のセレスが一周目から六周目に渡り何度も(s)犯してきた(Sin)物語(Story)のように。


 そして、そんな魔王(セレス)を打ち破る神霊と契約者達……。誰にも気付かれずに仲間に敵意、殺気を向けられる恐怖。


「僕が僕で居られるのはサクラが生きている間だけだ。サクラが僕の魂の欠片を持って、僕の理性として生きてくれているから僕は魔王にならずにいられる」


 SDSの世界でも、セレスが魔王として襲ってくるのは戦争が終わる頃。SDSの一から六周目の世界でサクラは描かれていないけど、戦争でサクラが死んでセレスが魔王となる? 中盤で魔王が攻めてくる時は、事故か何か、戦争よりも前にサクラが死んだパターンだったとか……?


「だからサクラが僕を殺さないと僕は救われない。サクラには辛い思いをさせるけど、今までの世界で僕が起こしてきた罪からサクラが救って(殺して)欲しいな」


 繋がりが強いからこそ分かってしまう。セレスが言ってることに嘘はない。

 私は、私は……。一つの決意を胸に氷華を構えた。

次話は今日の12時に投稿予定です


評価とブクマ、いいねをお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ