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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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274話 管理者

 天魔で両断するとアービシアがこちらを振り向く。


「貴様!」

「チェックメイト」


 無意識のうちに嫉妬の対象を斬撃に切り替えた瞬間を見逃さずに崩壊(コラプス)を打ち込んだ。


「よし。ひとまず時間を稼げたかな」


 あたりの魔力を確認してアービシアがしばらく復活しなさそうだと判断して再度管理権限にアクセスする。


 ……。


 ―――


 サクラ・トレイルの意識と世界樹を接続します。

 世界樹の管理権限にアクセスします。


 ……。…………。承認されませんでした。


 ―――


「また弾かれた……」


 承認されないってことは何か資格が足りてない? いや、それならば元から管理権限を受け取れない気がする。


「もしかして……」


 私が神になったのは龍馬と私に分かれたからだ。そして龍馬()はすでに地球の神になってる。二つ以上の世界を管理できないってことかも……。


「なら方法は……」


 何か抜け道があるはず。……そうだ。私が龍馬じゃなくなれば……。地球の管理権限から切り離されるからこの世界の管理権限にアクセスできるようになるはず!


 桜の魔力を身に纏って私の存在を再構築……再構築して…………。私はどうなる? 私が(サクラ)として才能を開花させたのは全て(龍馬)の存在が根幹にあったからだ。SDSでの落ちこぼれじゃなくて、才能あふれた(サクラ)として生きてこれたのは(龍馬)の記憶のおかげだ。


 ……(サクラ)から私《龍馬》が消えたらどうなる? それこそSDSのサクラ・トレイル(落ちこぼれ)に戻らない?


「ひゅっ」


 漠然とした恐怖が私を襲う。ただのサクラになったら本当にこの世界の管理権限にアクセスできるようになる? 龍馬と対の存在じゃなくなることで神としての資格がなくならない?


 (龍馬)でない(サクラ)をカトレアちゃんは……セレスは……(サクラ)だと認めてくれる?


 恐怖と不安が私を押しつぶしていく。どうしよう。何が正解なの?

 過呼吸になり胸を掴む。荒くなる息を整えようとしていると頭上から声が聞こえた。


「サクラ……」

「せれす?」


 涙でぼやけた視界にセレス(私の姿)が映る。


「もう怪我は大丈夫なの?」

「うん。そんなことよりサクラは何に苦しんでるの?」

「あはは、分かっちゃう?」


 心配そうな顔をしているセレスに向かって力なく微笑む。セレスが本気で心配してくれてるのが伝わってくる。


「今の私の根幹って何かな? (サクラ)から(龍馬)が消えても私は私でいられるかな?」


 思わずセレスに弱音を吐く。思っていた以上に私の心は弱かったみたい。あぁ、成長したつもりが全く成長――


「大丈夫だよ! サクラはちゃんと成長してるし。どんなことがあっても自分を見失わずにいられるよ」

「そう……かな?」

「そうだよ! 私も今までの世界で魔王になってきたから少し分かるよ。自分が自分じゃなくなる恐怖も……」


 はっとしてセレスを見つめる。今までも、今回も、セレスは自分が自分でなくなる(魔王になる)恐怖と戦い続けていた。それでも……。


「うん。向き合ってみる」

「頑張って。時間は稼いであげるから」


 セレスの言葉と共にアービシアの再生が始まる。塵にしたのに稼げた時間はもうおしまいか。


「お願い。無茶はしないで」

「くふふ。無茶させたくなければ早く終わらせてね」

「ふふふ。それは頑張らないと」


 セレスを信じて私は私のやるべきことを。恐怖も不安も無くなっていない。でも、もう押しつぶされたりしない。セレスだって戦った恐怖なんだ。私だって……!


 覚悟を決めて桜の魔力で私自身を覆う。怖い。けど前に進もう。


「死にぞこないが。神でもないゴミが邪魔をするな」

「元魔王を舐めないでよ!」


 遠くでアービシアとセレスの戦闘音が聞こえ始める。頭から二人のことを振り払い、私の再構築を始めた。


 ―――


 私の名前はサクラ・トレイル。元々は落ちこぼれの人生を歩むはずだったのに**のおかげで才能が開花してセレス様やカトレアと仲良くなれた。


 今はアービシアとの戦闘中でオリディア様から受け取った管理権限を使って私達に有利なルールを押し付ける。


 よし、基本的なことは覚えているね。


支配者(ルーラー)


 ―――


 サクラ・トレイルの意識と世界樹を接続します。

 世界樹の管理権限にアクセスします。


 ……。…………。承認されました。新たなる管理者としてサクラ・トレイルを任命します。


 ―――


 ……。

 …………。


 ―――


「よし、上手くいった」


 これでアービシアは私の与えたダメージで再生できない。……というより私の攻撃に絶対性を付与したからアービシア以外でも私が怪我させたら誰も治らない。


「セレス様は!?」

「さ くら? ……そっか。バトンタッチするね」


 バトンタッチ? 首をかしげているとセレス様がよろよろと近づいてくる。なるほど。選手交代ってことか。


「ありがとう。休んでいて」

「うん」


 私はセレス様をブローチに変えて休んでもらう。無理やり笑っていた顔が印象的だった。


「ちっ、死にぞこないが粘りやがって」

「セレス様を愚弄するな。父様!」

「……? 少し変わったか? ふむ。今のお前なら俺様の娘だと思えたかもな」


 どういうこと? 私は元からアービシアの娘だというのに。


「この世界は私が守る! 例え父様が相手だとしても!」


 いくら肉親でも容赦しない。世界のために! **の想いを無駄にしない為に!

次話は明日の17時投稿予定です


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