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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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253話 怒り

「だから出てくるなって言ったの」

「どうしましたか?」

「なんでもないの」


 やっぱり二人とも速いな。目で追うので精いっぱいだ。

 バチバチと放電する音と共にシルビアの剣とジークの爪が交錯する。俺はシルビアにバフをかけたり適度に傷を治したりしつつレオンと一緒に周りの竜を倒していく。


 向こうの戦いは終わったようだな。それにしてもヴィヴィも逝ったか。

 SDSでは神霊が死ぬパターンの分岐がなかったからこれからどうなるか予想がつかない。七人の神霊のうちすでに三人も消滅したって……。辛いな。俺もレオンが消えたらと思うと……言葉にもならん。考えたくない。


「ライアス! 集中しろ!」

「悪い」


 ドゴンッ!!


「なんだ!?」


 レオンに注意されてシルビアの戦いに目を向けると突如大きな音が破裂した。音のした方向を見ると虎徹さんがバスターソードを振り回していた。……バスターソード!? 虎徹さんの武器は刀だろう?


「おまえたち! 儂の近くによるなよ! 全て叩き切る!!」

「ん。お願い」


 お願いじゃねえよ!! 敵味方無用で暴れる宣言してる奴の背中を押すんじゃない! というか虎徹さんの持ってるバスターソードはマティナが作ったのか……。素材はそのあたりの竜の死骸だろうな。無茶苦茶しやがる。


「うおおおおおお!! ドランの痛み! 百倍にして返してくれるわ!」


 虎徹さんは一言()えると天高く舞い上がりバスターソードを振り回しつつ急降下する。


 虎徹さんの一撃の衝撃波で少し吹き飛ばされた。


「うおっ!」

「ほれ、油断するんじゃない」

「サンキュ。シルビアの邪魔をさせないように注意しないとな……」


 虎徹さんがこっちに近付いてきたことを考えるとげんなりする。骨が折れそうだ。


 そういえばとマティナの無事を確認するとカトレアがしっかりと保護していた。……おいおい、なんだあの姿。九尾の妖狐か? 尻尾は増えてるし美少女の雰囲気から妖艶の美女みたいな雰囲気に変わっている。尻尾以外外見に変化がないはずなのに不思議だ。

 おっと、見すぎるとサクラに怒られるな。


 シルビアのサポートや竜の処理に虎徹さんの流れ弾処理が加わり、だんだんと忙しくなっていった。


 ―――


 対面にいるアービシアが面白しろそうに戦場を眺めている。横にいるセレスは立て続けに神霊(兄弟)達が消失する場面を目の当たりにして顔が真っ青になってるね。

 私の頭上にいた鳥もセレスに寄り添って心配してるみたいだ。


「くっくっく。やるじゃないか。おめでとう」

「最後ヴィヴィの体が崩れたのって……」

「もちろん俺様の魔力を纏った反動に決まっている。普通は(・・・)相反する神の魔力を纏って生きていけるわけがないんだよ」


 アービシアが憎々し気に私のことを睨む。なに? 睨みたいのは私なんだけど?


「見てることしかできないのがこんなに辛いなんて……」

「そうだね。でもみんなを信じよう」


 アービシアを殴りたくなるのを我慢して耐える。オリディア様がくれたチャンスを私達が不意にするわけにはいかないからね。


 オリディア様は世界樹……元の世界の中で人々の安心のために姿を現している。世界の滅亡の危機だからこそ顕現できるのだ。


 世界樹の中を覗くとまとめ役を失った魔物は大部分がすでに死んでおり、残った魔物も散り散りになっているのが見える。ただし、世界全体の気温が下がって皆の息は白くなっているし、所々で地盤が弱まって地震が発生している。

 セレスが植物を司っていたように火を司るドランが消失したことで火や熱が、土を司るルディが消失したことで土や鉱石が無くなり始めているんだと思う。


 月を司るヴィヴィも居なくなったから静寂や安心感が消えてパニックが起き始めるのも近いかもしれない……。


「足掻くほど辛くなるぞ。死にかけの世界なんか諦めてこっちに来いよ。特別大サービスで世界の半分をくれてやるぞ? くはははは」


 そんなゲームオーバーまっしぐらの選択は選ばないよ!


 アービシアを無視してカトレアちゃんの様子を確認しようとしたら突然眩暈に襲われた。なに? 攻撃されてる!?


「龍馬?」

「悪い。ちと無茶させすぎた」


 今龍馬って言った? 視界がぐるぐるして話を聞くどころじゃなかったけど確かに龍馬って言ったよね?


「せ、れす?」

「ごめんごめん。はいこれ」


 セレスから木の実を受け取って食べると眩暈が収まる。なんだったんだろう。

 セレスに寄り添っていた鳥が生前の私の姿へと変わっていきアービシアが驚愕の表情を浮かべる。


「貴様は!? そうか、貴様が邪魔を……」

「いいがかりは止めてほしいな。俺がお前の邪魔をしたんじゃない。俺の進む道にお前がいただけだ!」

「言ってる意味が良く分かんないよ……」


 びしっとアービシアを指さす龍馬にあきれた声を出すセレス。セレスの顔色もマシニナッタナー。…………ふぅ。誰かこの状況を説明して!


「龍馬?」

「イエス! 私はあなた。あなたは私。地球の神様。龍馬さんですよー」

「ちゃらくなった……? 私の前世が今の龍馬だなんて信じたくないんだけど」


 私もっと真面目だったと思うんだけど。少なくとも今の状況でふざけられるほど肝は座ってない。絶対!


「サクラが酷い! 久々の再開なのに!」

「あー、はいはい。この世界のサクラとは初対面でしょう? 適当言わないの」

「セレスがお姉さんしてる……!」


 どうしよう。感動で前が見えない。あの小さかったセレスがこんなに立派になって!


「サクラ。似た者同士だよ。諦めて」

「そんな……」


 え? 私こんなちゃらんぽらんに見られてるの? 結構ショックなんだけど?


「世界線が違うとはいえ自分の生まれ変わりに引かれるのって心にくるのな」

「自業自得だよ!」

次話は明日の17時投稿予定です


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