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第16回『ショートショートにおける構成』

 最低限度の伏線の話はできたので、あと構成の話をすれば、ショートショートの基礎は一通り話したことになりますね。


 伏線の上手な張り方や、落ちのため以外の伏線の話が、まだありますけれど、それらは、ショートショートの場合、構成の話とほぼセットですからね。


 時系列をいじらない場合、伏線を張る作業のことを構成というと言ってもいいくらいです。


 落ちがバレない様に、かつ、効果的に落ちを見せるために、読者に渡すヒントの順番を決める作業です。


 ショートショートは、短いので、構成と言ってもそれほど多くの事はありません。


 要は、伏せてある手札を、めくっていく順番のことです。


 ここで一番重要なのが、最初にめくる手札です。


 まずは、これだけ、覚えておいてください。


 大切な伏線は、冒頭部分で張ります。


 小説の冒頭では、読者は、何も予備知識を持っていない状態なので、最初に書いてあることは、とりあえず、どんなことでも、そのまま受け止めてくれます。


 騙すなら、ここです。


 逆に、落ちがバレてしまう危険があるけれど、最低限、これだけは、読者に渡しておかなければならない情報の場合、予備知識のない冒頭部分では、その情報がどういう意味を持つのか、推測する手掛かりがないので、バレる心配を減らすことが出来ます。


 そのあと、新たに追加される情報に埋没させて、意識をそらしていきます。


 また、そうして埋没させることによって、「ああっ、さっきのあれは、そういう意味だったのか!」というのが出来るようになります。


 これをやるためには、先に渡しておく情報、隠し通す情報、ある情報を隠しているなら渡しても良い情報、情報を隠したままで話を成立させるために必要な情報、誤誘導するための情報、埋没させるためのダミー情報、などが必要になります。


 それらは、伏線であり、読者に手渡す順番を決めなくてはなりません。


 伏線と構成の関係が、なんとなく伝わってきましたか?




 冒頭部分は、読者の興味を強く引くための”掴み”でもあります。


 インパクトのある場面から始めたり、「えっ、それはどういう意味?」と疑問を抱かせてから、ヒントを渡していく、という手法があります。


 これが、構成をいじると、同じ話なのに面白くなる、という現象のからくりですね。


 インパクトのある部分を引っこ抜いて、頭に持ってきてしまうと、場面と場面の接続がおかしなことになります。


 それをフォローするための伏線というのがあります。




 テーマ『チャイムの音がする』

  https://book1.adouzi.eu.org/n4278gf/17/




 この話は、時系列をいじってあります。


 一行目のあと、二行目で時間がさかのぼっています。


 この時に、流れをスムーズにするために、つながりを持たせるのに使われている伏線があります。


 落ちのため以外の伏線のひとつですね。


 下記は『チャイムの音がする』の一行目と二行目です。




「ちょっ、待って、たんま、たんまって言ってるでしょ、このガキどもー!」



 子供と大人の違いは何か。




 と続いているわけですが、”このガキども―”から”子供と大人”と言う具合に、時系列がつながっていない代わりに、共通点のある言葉をつなぎに使っています。


 以前に、連想ゲームを使って落ちを作る方法を説明したときに、連想した単語は、全てメモって取っておくようにと言いましたが、こういう時に役に立つことがあるからです。


 まあ、こういう工夫は、読者は気がついてくれないんですけどね、シクシク。


 ショートショート作家というのは、こういう気づかれない所で、色々と仕掛けを施しているんですよ。


 気づかれないので、報われませんけどね。


 この『チャイムの音がする』という話では、もうひとつ、変わり種の伏線が使われています。


 タイトルが、伏線になっているんですね。


 どういうことかは、読んでみてからのお楽しみです。




 冒頭部分の話をしたので、ついでに、書き出しの話もしておきます。


 書き出しの一文の文体は、そのまま、小説全体の文体になります。


 力入れて、”書き出し”を書けば、それは、小説全体のグレードアップになります。


 書き出し、頑張ってください。


 ただ、途中で力尽きて、その文体では続けられなくなってしまっては、元も子もないので、出来る範囲で、ですね。


 以前に、小説を書き上げるためには、ラストシーンを先に作るのがコツだと言いましたが、文章が上手くなるための練習をするには、頭から順番に書いていく、というのが大切な事だったりします。


 書き出しの文体が、小説全体の文体を決めますし、前の文章から、連想を働かせて、次の文章をつづっていく、というのが、重要な事だったりします。


 そこで、プロットです。


 ラストを作り → そこからさかのぼってプロットを作り → そのプロットをみながら、今度は、冒頭から順番に小説を書いていく、というように、間にプロットを挟むことで、ラストからストーリーを作ることと、書き出しから順番に小説を書くことを両立させます。



 これで、ショートショートの基礎の話は、一通り終わりですね。


 あとは、思いつくままに、細々したことを書いていこうと思います。

無反応とか、ダメですよ。ちゃんとお代は、払ってくださいね。

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『HAKO NIWA シークレット!』
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