第41話 アリーシャ召喚院
前回のあらすじ
・マーチン襲来
・ゲテモノの山
・進化とは?
マーチンと別れた俺はウノの街にある神殿へと足を向ける。カインにメッセージを飛ばしたところ、向こうの神殿で落ち合おうとのことだった。
神殿へとたどり着いた俺はまずはじめに六英雄神へ挨拶がてら礼拝してから転移門のある場所へ足を運ぶ。転移門を管理しているシスターさんにギルドカードを提示して他国へ向かいたい旨を伝える。
その料金はなんと驚きの1回10万G。結構な金額だけど国際転移門を使えるAランク以上の人間はそれぐらいは余裕で稼ぐのだとか。まぁ、俺も懐具合は非常によろしいためこの金額でも問題はなかったりする。
「それでは転移先を選んでください。」
シスターさんに言われて行き先一覧を眺める。この転移門が設置されているのはこの国「バレンシア」と友好関係にある国や地域だけ。一覧にはその国の名前と大まかな特徴が書かれている。
まずは俺がこれから向かう先「ブレイバー帝国」ここの最大の特徴はギルドの上位機関であるアリーシャ召喚院の本拠地があること。この大陸で最大の国家ではあるがよくあるラノベのように大陸に覇を唱えるのではなく、アリーシャ召喚院を中心に大陸の平和を一番に行動している国である。
魔導都市マギアマジック。その名の通りこの国は魔術系スキルの探求がこの大陸でもっとも盛んな都市のようだ。日々大陸中から魔術師を志す人間が集まり切磋琢磨をしている。今この世界に流通している魔道具の8割以上が魔導都市で開発されたものということを踏まえればそのレベルの高さが伺える。なんでも魔術大学校なる施設も存在するらしい。
学園都市キャンパス。某文具メーカーの名前だがいいのだろうか?それはさておき、この都市の最大の特徴はその都市全体が学園の施設となっているということ。ここには大陸中から優秀な講師を募り、様々な有力者の子息が集まり日々教えを受けているそうだ。ここでは主に武術系スキルを磨くことができるそうだ。
自由国家アドヴェン。ここは冒険者ギルドの総本山があり、プレイヤーにとっても超重要な国家だ。この国の設立はとある冒険者だそう。当時迫害されていた様々な人種を集めてこの国を設立。その経緯もあってこの大陸では一番人種差別もなく自由な国風になっている。ちなみにSランクへの昇格試験はこの国でのみ行うそうだ。この国の王はかなりの武闘派らしい。
そして最後、宗教国家シークレ。その名の通りここは宗教色の強い国家だ。ラノベのように他の宗教を弾圧したり、神の名において戦争を仕掛けたりすることはない。だって召喚騎士様がご本人を呼べるので。この国の主な役割は世界に散らばる神話の集約と神に仕える神官や僧侶、シスターなどの修行の場の提供なのだそうだ。そのためか、この国も武力はそれなりにあるらしい。脳筋が多いのか?
前置きが長くなったが早速転移しよう。シスターさんにお布施を支払い魔法陣に乗る。魔法陣が光を放ち、一瞬の浮遊感が俺を襲った。
目を開けるとウノの神殿とは違った風景が目に飛び込んできた。
<お知らせします。プレイヤーの中で初めてバレンシア王国から他の国へ渡航したプレイヤーが現れました。>
<称号【世界の架け橋】を獲得しました>
ワールドアナウンスと称号獲得のアナウンスがありここがすでにバレンシア王国ではなくブレイバー帝国であることが裏付けされた。
「ブレイバー帝国へようこそ!」
元気のいいシスターさんの声を背に俺は神殿を出る。転移した場所はブレイバー帝国の首都である帝都ファイブだ。・・・帝国は英語なのか?
帝都ファイブはバレンシア王国の王都よりもさらに一層洗練された街並みだった。人通りはもちろん多いが街ゆく人の身なりや大通りに構えてある店、どれを見ても帝国の方が上だった。
俺がカインと待ち合わせしているのは神殿前にある大きな噴水の目の前。カインに到着したと連絡を入れるとすぐに迎えにゆくと返事があった。待つこと数分。そびえ立つ城の方面へ続く道の方から喧騒がだんだんと噴水の方に近づいてきた。
そちらの方を見てみるとそこには目立つオレンジ色の髪と緑のポニーテール。どうやらカインとサーシャが迎えに来たようだ。
「よお、桃。待たせちまったか?」
「久しぶりね桃」
「いや、今来たところだ。それに久しぶりだなサーシャ。」
お互いに挨拶を交わし、再会を喜び合う。あのイベントの件で連絡は取っていたがこうして顔を合わせたのはカインは最初のとき以来、サーシャは俺に【魔力操作】を教えてくれたとき以来なはずだ。
「いきなりで悪いがここだと俺たちはちょっと目立つんでな、場所を移すぞ」
カインの言葉にあたりを見回すと周囲の視線が俺たちに注がれているのがわかった。敵意がないので気がつかなかったが、あれは好意や敬意の感情が籠った目だ。どうやらカインたちは想像以上の敬意を集めているようである。
カインに連れられて向かった先はバレンシア王国の貴族区のように特別な許可がないと入ることすらできないような区画だった。
「ここが俺たちアリーシャ召喚院の本拠地だ。このブレイバー帝国の帝都ファイブの約四分の一の面積が俺たちの拠点だ。街の中は後々案内するから今は本部に行こう。召喚老の方々がお待ちしている。」
正直に言って俺はアリーシャ召喚院という組織を舐めていた。まさか大陸一の大国の帝都の敷地面積四分の一をも独占しているなんて。これほどの超巨大組織があるのか。迂闊に敵対なんてしようものならこのゲームできなくなりそうだな。
カインが示した本部は城とまではいかないがそれでもこれまで見てきたどの貴族の屋敷よりもはるかに立派だった。いや、さっき城とまではいかないって言ったけどもはや俺からしてみれば城だな。
驚いたことに入り口は自動ドアだった。この世界で!?と思ったが、そういえばカインと出会った時に謎の通信システムを使用していたことを思い出し、やはりここはとんでもない組織だなと思い直した。
カインが受付らしきところにいた美人のお姉さんと何か少し話をした後、さらに奥へと進んだ。途中でエレベーターのようなものに乗って一気に上層階へと進み、最上階っぽいところでエレベーター(仮)を降りた。
毛足の長い絨毯が敷かれた非常に高級感のある廊下を進み、一番奥の扉の前でカインが止まった。
「ここだ。」
なんだかカインの声が硬い。ちらりと横をみると小生意気そうなサーシャも非常に緊張した様子であった。この先にいるのは十中八九この組織の幹部か長なのだろう。そりゃ緊張もするか。
「失礼します。第二十七討伐隊クラージュ隊長カイン、ならびに隊員のサーシャ。来訪者にて召喚騎士となった者を連れて参りました。」
カインがそう言うと中から短く「入ってこい」と聞こえ、扉が自然と開いた。
その瞬間、俺に向かって一斉に叩きつけられる圧倒的な魔力。・・・いや、殺気が籠ってないから叩きつけられたんじゃなくて扉が開いたせいで自然と漏れ出てきたのか?
叩きつけられた。そう錯覚するほどに濃密な魔力が部屋からは流れ出ていた。しかも複数人分だ。この魔力の質と量、間違いなくルシファーと同等かそれ以上だぞ!?
これが敵として出会ったならばその場で死を覚悟するほどの圧倒的な実力差を感じた。
正直言うと歩くのもやっとなのだがカインとサーシャはそうでもないようで普通に部屋に入ってしまう。遅れてはなるまいと俺も慌ててあとを追いかけた。
その部屋は広い会議室のようで、中には男女合わせて8人がいた。その中には俺に加護をくれたあの伝説の召喚騎士様もいた。
「アリーシャ召喚院へようこそ。俺がこの召喚院の筆頭召喚老のレオンだ。君のことはあいつやそこのカインから聞いてるよ。俺たち召喚院は君のことを歓迎する。」
一番中央に座っていた青い髪をしたとんでもない魔力を持った爽やかクール系のイケメンが俺に歓迎の意を示した。どうやらこの人が召喚老とやらの中で筆頭、すなわちこの召喚院の中で一番偉い人っぽいな。この人の魔力は・・・全てを飲み込む深い闇とその奥に禍々しさと凍てつくような寒々しさを感じる。はっきり言って怖いな。
「それで俺の左にいるのが召喚老のミーナ。そして俺の右にいるのが同じく召喚老のスタンだ。」
ミーナと紹介された女性はルシファーの羽のような美しい黒髪を後ろで一つに束ねている少し目のつり上がっている勝気そうなクールビューティー。しかし彼女から感じる魔力は荒ぶる炎のように荒々しい。間違いなくおてんばだったんだろうなーと勝手に想像する。ちなみに胸は装甲で目立たないぐらい。ちょっと残念だ。
そう思った瞬間に背筋が凍りつくような殺気を感じた。危機察知が爆音でヘビメタをカチ鳴らしてるぜ!
「変なこと考えてないかしら?」
「イエ、メッソウモゴザイマセン。」
「そう?なら良いわ。私がミーナよ。よろしくね」
うん、やっぱりイメージと間違ってなかった。やっぱりこの人めちゃくちゃコエェ!
「なんでこの俺様がその暴力女の次なんだよ!」
突然キレ散らかしたのはミーナの次に紹介されたスタンと言う男性。サーシャと同じ緑色の髪色をしておりこれぞまさに悪人!とモデルにしたくなるようなあくどい顔をしている。この人から感じる魔力はまさに暴風。ミーナも結構荒々しい魔力を感じたけどスタンはそれ以上。お近づきになりたくない人ナンバー1を更新した。
「なんですって!」
売り言葉に買い言葉。暴力女呼ばわりされたミーナがキレた。
「お?やんのか?俺様はいつでもいいぜ。今度こそ白黒はっきりさせてやる!」
・・・うん、俺を置き去りにしていきなり2人が喧嘩し始めたね。って言うかスタンさん俺のこと一切眼中にないんじゃない?
あー、まだまだ紹介されてない人いるけどすでに人間が濃い!はぁ、先が思いやられるぜ・・・




