六魔将降臨
<お知らせします。イベントダンジョン【凍てついた帝都】のボス、古氷龍ゲフリーレンがプレイヤー名【桃】・【レイ】よって攻略されました。>
<ダンジョンボス攻略によりダンジョンの機能が著しく低下します。>
「ふぅ、疲れたね〜。これで一息つけるね」
ゲフリーレンを倒したことで吹雪が止み、気温も上がった。ちょっとダンジョンに集中してみると罠や敵モンスター、迷路のように入り組んでいた壁もいくつか消え、奥地である城前広場へすぐに来れるようになっている。
「そうみたいだな。ここ以外でもダンジョンの難易度がグッと下がったようだし他のメンツが集まるのも時間の問題だな。」
それより気になるのがさっきのアナウンスだ。ダンジョンを攻略したことは間違いない。アナウンスが流れたし実際に難易度がガクッと下がっている。
しかしイベントが終了したわけではない。その証拠にダンジョンが消えていない。それに帝都の調査と言う割にはどこの調べていない。そもそもダンジョンの構成にはダンジョンコアが必要になるはずだ。そのコアはどこだ?
それに確実にいると言われていた六魔将の姿が見えない。さらに城は氷に覆われたままで依然として不気味な魔力を感じ取れる。
それにボスモンスターを倒せばアナウンスは攻略ではなく討伐になるはずだ。ってことはまさか!?
俺はある事実に思い至りバッとゲフリーレンの方を見る。しかしゲフリーレンの死体はそのままで動く様子もない。【極界】にも生命反応はなく死んでいるのは間違いないようだ。
思い過ごし・・・だといいが。
休憩がてらレイと食事を楽しむ。さっきまでの死闘が嘘みたいにゆっくりとした時間が流れる。おっと、【極界】の探知範囲の中に白の気配があるな。やはり俺たちの次に最深部に辿り着くのは白か。
白が遅かったのはおそらくダンジョンに戸惑っていたのだろう。ここの吹雪は特殊で気配とか一切探知できなくなるからな。【極界】でも割とジャミングされる。【ダンジョン適応】とダンジョンへの接続があって初めてはっきりと分かることも多い。達人っぽい白とは相性がよくないのかもしれない。
それからまたしばらくして勇者君らしき気配が引っかかる。それを皮切りにちらほらと城前広場に今回のイベントの参加者が集まってくる。
流石にこっちのイベントに参加できるだけはある。この程度のレベルなら余裕で突破できるようで勇者君を皮切りに続々と集合。そして30分ほどでこっちのイベントに参加した全員が城前広場に集合した。
それがトリガーとなっていたようだ。全員が城前広場に集まるや否や城の方から身も凍るようなおぞましい殺気とゲフリーレンなんて比較にならないほどの強大な気配が2つ凄まじい勢いで飛翔してくる!
最初に察知して構えた俺。続いて構えたのは俺が構えたのを見たレイと自分で察知したのか白がほぼ同時。敵の姿が見えるようになってようやく構えた勇者君御一行。そして構えたはいいが心構えがなっておらず、その敵が着地と同時に放った範囲魔法に飲み込まれ吹き飛ばされるその他モブ。
「・・・桃!」
「あぁ、これはまずいな。この魔力、レジナルドにも匹敵する。今の俺でも勝てるかどうかだ。それが2体に・・・」
俺たちの目の前に現れたのは氷のような凍える美しさをもつ2人の女性型悪魔だった。悪魔と分かるのはその翼と頭部の角。あれは明らかに人間でない。
1人は長柄の斧を持ち、こちらを鋭く睨んでいる。一言で言うならクールビューティー。もう1人は服装からしてもこもこふわふわで可愛らしい見た目ではあるがその目に秘めた闘志はもう1人に勝らずとも劣らない。武器は杖のようだ。魔法使い系か?
そして俺がもっとも焦っている理由。それは倒したはずのゲフリーレンが光の粒子となって舞い上がり、目つきの鋭い方の悪魔が持つ長柄の斧にまるで初めからそうであったかのように小さくなってまとわりついたからだ。
当然ボロボロにしたはずの傷は全て癒えている。
『城から見ていたが、たった2人で私のゲフリーレンを倒すとは下等種にしてはなかなかやるじゃないか、褒めてやるよ』
いきなり仕掛けてくるかと思いきや話しかけてきた。内容的に俺とレイのことか。見ていたと言うことは俺の【英霊魔纏】もレイの技も手の内が割れてるな。チッ、失敗したな。まだ続きがあるならもう少し時間をかけてでも手の内を見せずに完封するべきだったか。
「そりゃどうも。せいぜいその下等種に命を取られないように足掻くんだな」
内心は顔に出さず、煽られたので煽り返す。どうやら目の吊り上がった美人さんは煽り耐性低いみたいだ。今にも飛びかかりそうなのを隣の可愛い系に止められている。その際お姉ちゃんとか聞こえたからこいつら姉妹か。
『本来であれば八つ裂きにしても飽き足らぬその言動。ルザミーネが制止しておらねばとうに死んでいたぞ貴様。私の可愛い妹に感謝するんだな。』
「遺言はそれだけか?」
『貴様!まだ言うか!そこまで死に急ぎたいなら殺してやろう。メライス六魔将が1人、氷龍斧士ルイーダが貴様らを血祭りにしてくれるわ!』
『もう、お姉ちゃんったら。すぐ挑発に乗るんだから。仕方ないわね、ここまで舐められたんですものその代償はきっちりと命で払ってもらいましょう。メライス六魔将が1人、氷操姫ルザミーネ。恨みはないけど死んでくださいな?』
前哨戦はここまでのようだ。2人とも戦意と魔力を今まで以上に膨れ上がらせている。この間に吹き飛ばされたやつも体勢を整えているし他の連中もバフなりなんなりと戦闘準備を整えている。厳しい戦いになるとは思うがあっけなく死ぬってことはないだろう。
『ゲフリーレン、あんたはリザードマンを召喚しな!』
『さあ、行くよ!私の兵士たち!』
この2人、あの語り口から突撃なり魔法なりで攻撃してくると思ったがそこまで単細胞ではなかったようだ。ルイーダの指示を受けたゲフリーレンは俺たちと戦った時に出てきたリザードマンの中でも強めの奴を3体、ルザミーネは周囲の雪から雪だるまのようなゴーレムを5体作り出した。
うん、これは前言撤回。ここにいる戦力だけじゃかなり厳しいな。英霊使ってゴリ押ししない限り勝ち目はない。しかしそれは最終手段、できるだけ温存したい。そうしないとイベントが盛り上がらない。
六魔将の2人は配下を召喚した時点で待ちの姿勢。油断ではなく余裕だ。きっちりとこっちの戦力を把握してやがる。その証拠に俺とレイ、それから白には視線が集中している。
『先ほどまで威勢のいいことを言っていたが所詮は下等種。口だけのようだな。』
煽られるが事実その通りなのでどうしようもない。さてどうしたものか。いっそのことルシファーを呼んでダンジョンごと消し飛ばしてやろうかと思ったその瞬間、六魔将よりもはるかに強大な魔力を感知した。
直後、場を蹂躙する暴風。抵抗など許されるはずもない暴力の塊。反応など誰もできず、ただただ暴虐の限りを尽くす暴風が過ぎ去るのを待つだけだ。暴風には敵味方の区別がない。来訪者達は極一部を除いて巻き上げられた。それは六魔将の2人が召喚した眷属も同じ。
俺たちもその場に止まるので精一杯。なんとか事前に強大な魔力を察知したので対処できたが、六魔将の2人はそうもいかなかったようだ。不意打ちの暴風はなんとか防いだものの体勢を大きく崩された。いかな六魔将でもそれは致命的。連続して巻き起こる突風と切り裂くような風に相次いて攻撃されている。
しかし問題なのはそこではない。この風は異次元となっているこのダンジョンの上空をいとも簡単に切り裂いて発動されたと言うことだ。ダンジョンの天井を破壊し、六魔将を2人まとめてボコボコにできる存在なんて限られている。
「はっ!六魔将とやらが2匹もいるって聞いたからよ、少しだけ本気出したがこのザマかよ。聞いたぜ?原始回帰とかいう変身があるんだろ?とっとと使ってくれよ。そうしないと一方的な弱いものいじめになっちまうだろう?」
暴虐の限りを尽くした暴風を従えるように上空から落下してきたのはご存知スタン。ユライとは一緒ではないようだ。スタンは暴風に煽られて吹き飛ばされている来訪者なんかには目も暮れない。スタンからしてみれば軽く本気を出した程度。その程度でやられるやつなんて眼中にないってわけか。
それにしてもスタンのやつ煽りの天才か?美人さんが台無しってぐらいの殺気と憤怒の表情を浮かべてるぞ?六魔将姉妹。
『貴様、言わせておけば!』
『この程度のかすり傷を追わせた程度で調子に乗らないでくれますか?』
その言葉と同時にルイーダはその斧を振り回しながら、ルザミーネは周囲に無数の氷の槍を生成し、スタンに向かって攻撃を仕掛けた。
「だ〜か〜ら〜、本気で来いって言ったんだろうがぁぁ!!!龍閃哮!龍門顎!」
スタンは剣を振り上げる。たったそれだけの動作で前方に竜巻を発生させて飛来してきた氷の槍を全てルザミーネに弾き返し、目に止まらぬ連続の斬撃でルイーダに何もさせることなく切り刻んだ。
「テメェら俺を舐めてんのか?本気で来ねぇのならマジで殺すぞ?」
ドスの聞いた声でスタンが脅しをかける。彼女らは悟ったようだ。このままではスタンの言う通りなすすべなく殺されると。
『くっ、下等種が!いい気になるのもそれまでだ。その自信に満ちた顔を絶望へと変えてやろう』
『確かに下等種にしてはそこそこやるようです。ですが調子に乗るのもここまでです。後悔と共に死んでいきなさい。その躯には私たちの名前を刻んであげるわ。』
『『原始回帰!』』
『長きに眠る力を解放せよ!古悪氷龍魔』
『氷の棺を抱いて眠れ!古天氷姫使』
巨大化したゲフリーレンがルイーダを飲み込む。しかしそれは食われたわけではなくその身にゲフリーレンを纏うのに必要な儀式。全身を古の氷龍で覆い身体能力を高める。そして悪魔の翼は魔法の発動体にも近接の武器にもなる。物魔の双方に優れたルイーダ本来の姿。
絶対零度の凍気を纏った氷の棺がルザミーネを優しく包み込む。その棺の中でルザミーネは天使の翼を取り戻す。その羽1枚1枚が魔法の発動体の役割を持つ。さらに飛翔能力も得たことで一方的な攻撃が可能。さらに天使として回復系の魔法も得意として後衛のアタッカーとしてサポートとして攻守に渡ってルイーダをサポートするのが本来の姿。
本当の姿を取り戻した六魔将が2人降臨。戦いはクライマックスを迎える。




