戦闘を英霊に任せるとこうなるよねって話
前回のあらすじ
・70階のボスを一撃で倒したよ!
格上の、しかも厄介な魔物相手に完勝。そのことに気分を良くした俺は意気揚々と隅で見ていた英霊たちの元へと戻って行った。
「これぐらい楽勝楽勝。さてこの勢いでそのまま攻略しようぜ」
調子に乗った俺に返ってきたのは英霊たちの辛辣な言葉だった。
『何言ってんだ?全然ダメだ』
『失格ね』
『落第よ』
『不合格ですね』
『うん、このままじゃ無理だな』
上からフェルド、ルキナ、クリスタ、レイン、アルバセロである。もの見事に全員が全員俺に対して真正面からダメだしをしてきた。
「なんでだよ!完勝だったじゃねぇか!」
思わず強めに反応してしまう。流石にここまで全否定されるとは思わなかった。
英霊たちはお互いに顔を見合わせた後、やれやれと言ったようにフェルドが口を開いた。
『いいか桃、ダンジョン探索・・・だけじゃねぇが敵との連戦が想定される環境下に於いて一番大事なことは継戦能力だ。どんなに格上だろうと厄介だろうと全力を出すのはダメだ。それが許されるのは死ぬために戦い、死ぬことを運命によって定められた悲劇の英雄だけだ。ま、俺たちみたいな奴らのことだな。』
悲劇の英雄か・・・確かにフェルドたちはその時代で天下無双の武力を誇っているもののその死に様は正しく悲惨。フェルドのいう通りまるで運命を司る神に戦さ場での死を決定づけられているかのようだ。
『だいたい桃、お前は召喚騎士とはいえいきなり召喚騎士になったひよっこもいいところ。それを自覚しているからだろうが俺たちと死に物狂いで戦闘訓練を行っているがそれでも圧倒的に前衛の経験が足りない。
そもそも召喚士の本質は後衛だろ?召喚騎士としてあいつの弟子となり召喚老からも一目置かれ、来訪者の中でも強者として注目される重圧はわかる。わかるがあいつや召喚老の連中はそれこそ数えるのが馬鹿らしいほどの死線を幾度となく乗り越えている正真正銘の猛者だ。だからこそ英霊と一緒に戦える。英霊ってのはその時代で光り輝き神にまでなった強者どもだ。そいつらと肩を並べて戦えるあいつらは間違いなく英霊になる。
それにあの召喚院の連中だって隊長格を除けば英霊と肩を並べて戦うどころかまともな英霊すら召喚出来ていない。むしろ戦える召喚士=召喚騎士となっているものがほとんどだぞ?』
フェルドの話は寝耳に水だった。確かに俺が知ってる召喚院のメンバーは召喚老と師匠とそれから隊長格のみ。あとは受付のお姉さんとか研究所の謎のおっさんとかの明らかな非戦闘員だけ。他のメンバーが戦っている姿を見たことない。まさか召喚院全体のレベルが戦える召喚士程度だったとは・・・
補足しておくが桃のこの認識は最初から召喚院の中でも化物クラスとだけ会っていたことに起因する。そもそもこの世界において戦える、すなわち近接格闘が出来る召喚士はかなり少ない。これは住人の召喚士だけでなく来訪者も含めてごく稀である。
つまり戦える召喚士というだけで全召喚士の中でもかなり上位に位置する。その中でさらに人格等に問題のない人間だけが召喚院に所属することができる。さらにその召喚士の中で英霊を召喚できるもの、さらに英霊と共に戦えるものとなるとほんの一握りしか存在しない。桃はこのほんの一握りの存在にしか出会っていなかったため、召喚騎士=英霊と共に戦える猛者と捉えていたのだ。
『それから、あの犬っころの幻影に気がつかなかったのは完全に油断だし、そのあと攻撃が透かされたからって硬直するのもない。』
はい、それについては何も言い訳出来ません。
『そして何より【魔纏】を使った上であれだけの高威力の魔法だ。当然反動も凄まじいはずだ。隠しているつもりだろうが全身ボロボロだろうが。全く、そんなのでよくこの先に進もうとしてるな。そんな戦い方をしているようじゃ必ずこの先で力尽きて死ぬ。だから俺たちは桃の戦い方を否定する。そんな身を壊すような戦い方をするんじゃない。』
フェルドの言葉が心に刺さる。実際、あの魔法の反動は凄まじかった。涼しい顔をしていたがHPはほぼゼロ。なんとか制御していたが一瞬でのMP枯渇による頭痛、反動で部位欠損の異常状態のオンパレードだった。纏っていた【聖炎】の効果で回復したができれば封印したい魔法だったことは確かだ。
それがバレたこともそうだが、それより自壊ダメージに言及した時の英霊たちの悲しみの目が何よりも堪えた。彼らの気持ちがわかるとは言えない。英霊には英霊にしか、本当にその身を賭して誰かを救うために戦い散っていった人たちだ。だからこそ戦って生き延びることを何より大切にする。その身を壊してまで戦うことを何より嫌うのだろう。
「フェルド・・・みんな・・・。わかった。もうこんな戦い方はしない」
『分かればいいんだ。もちろん本当にそういう戦い方をしなければならない場面が来るかもしれないがそれは今じゃない。桃にはそんな命を削るような戦い方はして欲しくないだけだ。もう一度言うけどそう言うのは俺たちだけで十分だ』
フェルドたち英霊の思いは痛いほど伝わった。これからは短絡的に勝とうとしないで体を大事にでできるだけ戦おう。
『よし、桃もわかってくれたみたいだ。ダメージも大きいだろうから見学だな!』
「は?ちょっと待・・・ってもういないし」
さっきまでの悲しげな雰囲気は一瞬にして消え去り、満面の、しかし獰猛な笑みを浮かべた英霊たちはフェルドの言葉に大きく頷くと一瞬で駆け出していった。
くそ、あいつらさっきまでの話が嘘じゃないだろうが絶対抜け駆けするって目的も入ってただろ!このまま置いていかれるわけにはいかない!【魔纏】を使ってでも絶対に追いつく!
消え去った英霊たちの後を猛然と追いかける。幸いすぐに追いかけ始めたのでさほど離れることなく追いつくことができた。
そこで初めて六英雄と呼ばれる伝説の存在とその仲間たちが本気で魔物相手に戦う姿を目の当たりにした。
炎熱の斬線が空間を埋め尽くす。1撃で数体をまとめて葬り去る炎の英雄。その間隙を縫うように1体1体を凄まじい速度で確実に切り裂いてゆく炎の戦女神。
他方では全てを凍てつかせる氷と水の魔法が吹き荒れる。ここは灼熱のダンジョンなはずなのに2人の氷の華が舞い踊り、一瞬にして辺りを凍りつかせている。そしてその死の領域に踏み込んだが最後。生きとし生きるものは一切の区別なく氷像と化す。そしてその全ての氷像が一刀の元に斬り伏せられる。
4人の英霊が織りなす圧倒的な死の世界を前に本来は引くことを知らずただただその身が朽ち果てるまで侵入者を攻撃するように本能に刻まれている魔物の群れが恐れをなして逃げ出そうとする。それを防ぐのは土と雷の防壁。干渉が困難どころか不可能とされているはずのダンジョンの壁や地面がまるで意思を持ったかのように動き出す。逃げ出そうとした魔物を取り囲み壁から突き出た土槍から不意に紫電の閃光が迸り頭部を蒸発させる。
「ハ、ハハ。マジかよ。これが英霊たちの本気かよ。太刀打ちできるわけねぇじゃん。」
5人の英霊は俺がほとんど目で追えないほどの速度で攻撃をしながら恐るべき速度で移動して階層そのものを地獄へと陥れる。5分もしないうちに71階に巣食っていた左右二対の鎌の部分が炎で包まれたフレイムマンティスを殲滅してしまった。
俺がドロップアイテムを集めている間に英霊たちは勢いそのままに72階へ突入。そして俺は安定の置いてけぼり。まぁ、確かにあれだけの戦闘を見せつけられたんだ。俺がいても俺のところに魔物は来ないだろうし大人しく素材を集めるかー。
そしてダンジョンの壁に干渉できるアルバセロがいると言うことは隠し部屋のようなボーナスステージも簡単に見つかると言うことだ。本当なら土とか探索とかの技術と魔法を極めた斥候が探し当て、中にいる宝箱を守るボスを死力を尽くして討伐することで手にできるご褒美だ。
しかし俺からしてみればそんな隠し部屋も英霊たちが嵐のように狩り尽くしたダンジョンの通路のドロップ品拾い、宝箱回収のただの通路でしかなかった。そこで落ちているアイテムを眺めながらここにいた魔物はどんなだっただろうなぁと思いを馳せる。俺にできるのはそれだけだ。
さてさて調子が上がってきたのか英霊たちの姿が一向に見えない。すでにレベルは62まで上昇している。やばくね?
70階に到達するまで1時間半、そして俺が再び英霊たちに追いついたのは90階だった。流石に90階にもなると英霊たちでも一撃で敵を葬り去ることはできないようだ。それの理由は至ってシンプル。極めて強く、極めて速く、極めて堅い。それゆえにレベル差が壁となって立ちはだかっている。
それでもフェルドたち5人は圧倒的な技術でその戦力差をカバーしている。そして速度は落ちているものの次から次へと魔物を斬殺している。しかし流石の英霊と言えどもニノ太刀、三ノ太刀と攻撃するのは疲労が一気に蓄積するだろう。それにこのレベル帯の魔物となれば一撃食らっただけでも死ぬ。その死地での戦闘は精神力をゴリゴリ削られるだろう。
「なら援護するのが召喚騎士としての役目ですかね。召喚、ヴォート、ユグドラ、ミリム、ルーセント、ファースト、ヴィクティム、ジャック!」
六英雄とその相棒、全12人が狂宴する。召喚された英霊たちは一瞬で戦さ場の空気を感じ取り今まさに戦っている5人を援護するように攻撃を開始。ただでさえ優位だった5人に加勢が加わった。一瞬で魔物は命を散らした。
わちゃわちゃと英霊たちが話しながら一瞬で階層の魔物を殲滅していく。これまでは安全マージンをとって5人で戦っていたが2人組を6チーム作ったことで殲滅速度が急上昇。俺のドロップ回収が追いつかないほどだった。
そして12人はその圧倒的武力を以て100階のボス、このダンジョンのダンジョンマスターでもあった火焔龍ボルケーノを瞬殺。ついでに100階の隠し部屋にいた双頭火焔龍ダブルボルケーノすら5秒もしないで屠り、無事ダンジョンの攻略が完了した。
<お知らせします。ダンジョン【太陽の墓場】がプレイヤー名:桃によって初めて踏破されました>
<称号【太陽の墓場の踏破者】を獲得しました。>
アナウンスと共に称号とその他のクリア特典が与えられる。正直言って俺が戦ったのって70階のボスだけだし、ここまでほぼマラソンしてただけだから全然疲れてすらない。そんななのに称号とかもらってもなーと思うが、英霊たちは俺の仲間だし、まぁ、いいか。
俺に出来るのはここまで戦ってくれたフェルドたち5人と加勢してくれた残りの英霊たちの慰労をすることぐらいかな。
それから俺がログアウトするまで約3時間、英霊12人が満足するまで大宴会をダンジョンの100階で開催しましたとさ。まぁ、召喚主として福利厚生は当たり前でしょ。
さてさて、これにて【太陽の墓場】は攻略完了だな。ひとまず課題をクリアできたことに安堵しつつログアウトする。意識が現実世界へと戻るまでのほんのわずかな時間、ふと俺は上を見上げた。
そしてそこに描かれた太陽の聖騎士の壁画を目の当たりにするのだった。
ボス?名前が出てきただけでも感謝して欲しいですねぇ。瞬殺される噛ませですけど。
基本的にダンジョンはこんな感じでサクサク進みます()だって六個もあるし・・・早くしないといつまでたってもPvPにたどり着けない・・・(自業自得)
こんな感じで行き当たりばったりでゆるゆる進みます




