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隠れ里

相変わらずの亀更新です。それでも毎回読んで下さる皆様には感謝してもしきれません。

「着きましたぞ。ここが我らの村です。」


 イヌ耳に案内されてやってきたのは巨大な岩だった。イメージ的にはエアーズロックが一番近い。さすがにあれ程巨大なものではないがそれでもかなりの大きさだ。


「ていってもよ、岩しかねえじゃねえか。村なんかどこにもねえぞ。」


「そうでしょうとも。ですがここをずらすと…。」


 そういってイヌ耳は近くにあったちょっと出っ張っている部分を横にずらし始めた。見た目は結構でかいのだが案外簡単にずらせるらしくすぐに馬車が横に二台ほど並走できるほどの空間が現れる。


「コーン!」


「へえ、おもしれえな。もしかしてこの岩の中身って…。」


「そうです。この巨大な岩の内部は空洞になっており、その中に我らは住んでいるのです。」


「…イーターワームの襲撃を回避できるのはそのせい?」


「ええ、中に入ってもらえばわかりますが内部の地面もまた岩でしてな。結構な厚さがあり、さしものイーターワームもここばかりは地面を潜ってこれないのですよ。」


「そりゃすげえな。天然の要塞ってやつじゃねえか。だからあのミミズも村までは手出しできねえんだな。」


 話を聞くと入り口はこことさらに反対側にここより小さいのが一つあるだけなので例え外的にばれても防御しやすく、イーターワームが出てくるまで安全な暮らしができていたらしい。


「さあどうぞ。早くしませんとまたイーターワームが襲ってきかねませんぞ。」


 今口を開いたのはさっきまで狂乱状態だったネコ耳だ。今は立ち直って通常運行だが他の二人は驚いていた。普段ならああなると一日は元に戻らないのに一時間もたたないうちに回復できたのはこれが初めてということだ。どんだけだよ!


 俺たちは案内されて中に入った。岩自体の厚さのせいか、村の入り口とおぼしきところまで若干の距離がある。といっても数メートルだが。


 村の入り口にまで来るとそこはまさに村だった。俺自身トーラム以外の街や村を見たことはないがそれでもあちこちに民家や畑、畜舎のような施設もありどこからどうみても村だった。


「コン!コーン!」


 リイも驚いているのか興奮したように声を上げる。


「本当にすげえな。正直言ってこれほどとは思わなかった。」


「そうでしょうとも。これといって自慢できるものはありませんが言ってしまえばこの村自体が我らは自慢なのですよ。」


「…これほどの村を一体どうやって…。」


 ルナの疑問ももっともだ。まずこんだけでかい岩の中身をくり抜いたって時点で並大抵のことではなかっただろう。それこそ何代にもわたってやったはずだ。


「それがですな、我らにもわからんのですよ。何世代か前にこの場所を見つけ、そこに村を作ったらしいので…。」


「…自然にこのような巨大な空間が生まれるとは考えられない。なにかしらの外的要因があったはず。」


「当時の連中も最初は警戒していたらしいのですがそれでも今まで何もなかったので今では特に疑問も持たずに住んでおるのですよ。」


「ヘイス。村の歴史もいいが今はシキ殿に治療をしてもらうのが先だろう。」


「そうだった!すまないなゾルダ。ではシキ殿、今から我らが村長や村人たちに知らせてきますので少しまっていただきたい。」


「わかった。魔力の心配はしなくていいからとにかく連れて来い。」


「助かります。では!」

 

 そういってイヌ耳は村の奥の方に走っていった。ウサ耳も家屋が多いところに走っていく。


「いやはや、シキ殿が来てくれたおかげで我らの村も救われます。」


 案内のためか残されたネコ耳が話しかけてくる。


「それはそうとどのくらいの人数なんだ?場合によっては治す優先順位も決めなくちゃならない。」


「病気の進行状況だったらどれも似たり寄ったりなもんで強いて言えば幼子や老人が体力的にやばいってとこですかな。」


「そうか、じゃあ先に子どもと老人からやっていくぞ。ところで村長みたいなやつに挨拶とかはしなくていいのか?」


「村長自体は病気になってますから治療してからのほうがいいと思いますぞ。それにヘイスは次期村長、もう挨拶はしたと思っていいですな。」


 ヘイスというとさっきのイヌ耳か。ならさっきの約束も安心だな。一村民が言ってもなんの役にも立たないが次期村長がいったなら話は別だ。


 そんな感じでいくつか話をしていると徐々に表に人が出てきた。動ける奴におぶさられていたりしているものもいるがほとんどの連中は這うようにして出てきた。それだけ病気が蔓延しているってことなんだろう。


「お待たせしました。ではシキ殿、手数ですがお願いします。」


 出てきた連中の先頭に立ってイヌ耳が言ってきた。


「そうだな。だがこれだけの人数だと一人ずつやっていくのは効率が悪いから一気に治すぞ。」


 病気自体はメガヒールで充分治療が可能だろう。あとはその範囲を広げればいいだけだからメガヒールを少し改良すればOKだ。


「いくぞ。パーティーヒール・(メガ)!」


 効果範囲を広げたメガヒールが目の前に出てきた連中を一気に治療する。効果は抜群なようでものの数秒もしないうちにメガヒールを受けた連中が全員元気になった。


「おお!痛くない!苦しくないぞ!」

「私たち助かったのね!うれしい!」

「すばらしい!これほどの魔法を使えるとはなんという御人だ!」

「ママ!苦しくなくなったよ!」

「体が軽い!健康な体ってこんなにも素晴らしいものだったのね!」


 口々に嬉しそうな声を上げて喜んでいる。どうやらうまくいっているようだ。


「皆、喜ぶのはいいがまだ治療を受けていない人たちもいるんだ。道を開けてくれ。」


 イヌ耳が村人たちに声をかける。その言葉でハッと我に返ったのか、俺に感謝の言葉をかけながら後から来た連中へと道を譲る。


 それから次々と湧いてくる村人たちに対してヒールをかけまくった。途中から何度もイヌ耳とかが大丈夫かとわりと真剣に聞いてきたが全部無視したのはいい思い出だ。

 日が暮れる前には全員分の治療が終わり村は入った時とは全く違った歓声に包まれた。


「お疲れ様でした、シキ殿。これで村は救われます。」


「まだミミズのことが残ってんだろうが。まあ、すぐに終わらせるけどな。約束を忘れるなよ?」


「もちろんです。先ほど村人たちに約束とシキ殿のお言葉を聞かせたら声を合わせて承諾してくれました。」


「ならいい。じゃあ明日からミミズを狩りに行くからな。どのくらいいる?」


「そうですなあ…現れ始めたころからすでに数匹発見し、その後も我らが切ったせいで数を増やしましたから…。」


「どの程度かはわからないってか?」


「申し訳ないですが…。」


「…無責任。」


「ルナ、そう言うなって。俺には完璧にミミズを発見できる方法があるんだから。」


「…わかった。」


「何から何まで申し訳ない!今日のところは私の家でお休み下さい。なにももてなすことはできませんが…。」


「そうか、じゃあ世話になるぜ。」


 途中で道行く人から感謝の言葉を投げかけられながらイヌ耳の家であり村長の家に行く。


 若い女性の獣人族は獣耳を生やし、尻尾を揺らすまさに絵にかいたような獣っ子が多かった。まあ中には相応に不細工なやつらもいて、そいつらは完全に獣耳や尻尾が似合わなさすぎて吐き気がしたが…。


「どうぞ、ここが我が村の村長宅兼私の家です。」


 案内された家は他の家に比べて一回り大きい程度の大きさだった。岩の中のスペースは限られているのであまり大きな家を建てることはしなかったのだとか。


 中に入るとリビングに相当する場所なのだろうか、中央に大きなテーブルと数個のイスがあり壁には棚が二つ置かれていた。奥には他の部屋に行くためのものなのか扉もあった。


 その中央にあるテーブルとイスに一人腰かけている老人の獣人族がいた。


「初めまして、この村の村長をしておりますゴルザックといいます。このたびは村のために尽力していただきありがとうございます。」


 次期村長のイヌ耳と同じようにイヌ系の獣人だった。ただ、このじいさんの方は耳はタレ耳だが次期村長の方はピンと尖った耳だった。


「かまわねえよ。こっちも見返りがあるしな。」


「ええ、そのときにはどうぞお手柔らかにお願いします。」


「りょーかい。まあ、まずはあのミミズの討伐がすぐに終わることを祈っといてくれ。」


 その後俺たちは奥の客間に招かれた。食事はさすがに自分たちが用意したものでまかない、少量ではあるが村にも提供した。スズメの涙ほどの量だったがそれでも泣いて喜ばれた。幼児期の子どもや餓死寸前の人に優先的に回されたらしい。


 一晩寝て翌日、あのミミズを一匹残らず森から駆除する作業に取り掛かる。


「んじゃあ行ってくるからリイとルナはここで留守番を…。」


「…私も一緒に行く。」


「コン!」


「…一匹殺すのに見つけてから数分もかからねえよ。ついて来ても暇だぞ?」


「…それでもいい。」


「コン!コン!」


「正直言ってあまり二人を危険な目に合わせたくねえんだよ。大事な仲間なんだし。」


「…私はイーターワームの生態を多少なりとも知っている。それに不測の事態が起こった時に人手はあった方がいい。」


「コン!コンコーン!コン!」


「ああ、分かってるってリイ。確かに昨日もお前が一番初めに気づいてくれたから助かった。ルナの言い分も分かる。でもな、それでも言っちゃなんだがあのミミズを殺すには二人は少し実力が足りねえんじゃ…。」


「…それでもついて行く。あなたの側にいたい。」


「コン!」


「はあ~。…わかったよ、じゃあ頼むな?」


「…了解した。」


「コン!」


 こうしていつものメンバーでミミズ討伐に行くことが決定した。二人とも健気でいいやつらだよ、感謝してる。


 村長とイヌ耳にこれからミミズ討伐に向かうことを告げ、もしかしたら野営するかもしれないから馬車ごと外に出ることを伝えた。村がこんな状況なのでできればイチイチ村に戻って休むのではなく一気に狩りたいからだ。


「それではよろしくお願いします、シキ殿。我ら一同この場所からで恐縮ですがご無事を祈っておりますぞ。」


「どうか、どうか村をお願いします。もはやシキ殿しか頼れる人がおらんのです。」


「分かった分かった。それじゃ行ってくるぜ。」


 家のドアを開けて外が見えるようになると外にはガリガリではあるが病気が治ってある程度動けるようにはなった村人たちがたくさん集まっていた。村人全員ではないがそれでもほとんどが集まっているんじゃないだろうか。


「おお!出てきなすったぞ、シキ殿だ!」

「村を、村をどうか御救い下さい!」

「孫が死にそうなのです。どうか、どうか一刻も早く平和を…」

「子ども達を死なせないであげて!」

「御武運をお祈りしておりますじゃ。どうぞお気をつけて…。」


 集まった村人たちから口々にこんな言葉が聞こえる。さすがにここまでたくさんいると誰が何を言っているかわからないしうるさいだけだがいちいち指摘はしない。


「わかった、わかった。今から行くから待ってろ。」


 そいつらの目の前で言葉をかけてやると村人中から「わっ!」と歓声が上がった。この分だとこの村を手に入れた際の支配も用意そうだ。


 村中からの歓声を背に俺たちは馬車に乗ったままミミズしかいない森にくりだした。


もっと登場人物をうまく動かしたいのですがイマイチです…。どうやったら皆さんの作品みたいにあんなに上手く書けるんですかね?


亀更新ですがこれからもどうぞよろしくお願いします!

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