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出発前日

課外に疲れて書きました。後悔はしています。

「またまた悪いな、シュタイン。けどここ以外に当てがなくってよ。」


「いえいえ構いませんとも。今更一人や二人増えたところでなんの変わりもありませんからねぇ。」


「そうか、助かる。ところでこいつだれだかわかるか?やたらエラそうだったんだが。」


「ええ、この人はこのウルカリオン帝国の第三王子の方だったはずですよ。なんでも上二人に比べてあまりにも無能すぎたからここに飛ばされたともっぱらのウワサです。」


 さらなる衝撃の事実!キチガイマザコン君は劣等感に酔った悲劇の主人公((笑))だった!


「なーる。でよ、こいつも『あれ』に参加させようと思うんだがどう思う?」


「…正直言ってそこまでのことをしてしまうとさすがに他の国でも指名手配されてしまう恐れが高いでしょうね。仮にも一国の王子ですから。」


 まったく、なんて扱いに困る生ごみなんだ。このまま捨ててもダメ、バラバラにして捨ててもダメ、連れて行くなんて言語道断。まったく、迷惑が服着て歩いてるやつだ。


「それとよ、さっき商店通りに行ったら人っ子一人いなかったんだが何か知ってるか?」


 ちなみにシュタインの店は商店通りから離れた路地裏に存在している。初めはあっちにあったらしいんだがシュタインを嫌った他の連中と客がうるさくて研究に集中できなかったシュタインとで取り決めたらしい。ホントに商売する気あるのか?


「ええ、実はこの方、時々街に来ては暴虐の限りを尽くす方でして街の皆さんもほとほと困ってらっしゃったんですよ。それで最近は門の前に見張りを立てておいて出てきたら街の皆さんに知らせて通り過ぎるのを待とうという動きがあったらしいですね。」


 なるほど。それで皆自分の店が標的にされないように閉めてたってわけか。ホント、迷惑な産業廃棄物だ。


「…よけいなことを。」


 げしげしとマザコン君を蹴るルナ。そのたびに「おぶ」「あぶ」とうめき声を上げる。顔が怖いぞ。そんなに買い物に行きたかったのか…ルナの境遇を考えればわからなくもないが。


「それにしても本当にどうするおつもりなので?頭を手術することで記憶を失くすこともできますが?」


 なにさらっと怖いこと言ってんだこいつは。…大丈夫だよな?俺って知らない間に頭とか身体とかいじられてないよな?それを手術で忘れさせられているなんてことないよな?


「いや、やっぱり俺はこいつを『あれ』に参加させるわ。よくよく考えてみれば俺の目的に役立つだろうし。」


 そう、この間、リイの本音を聞いたあの日に俺は考えたのだ、これからの旅の目的を。そのためにこいつは使えるだろう。この街でことが起こる時にはもう俺たちはこの街にはいないだろうし。


「そうですか。どのような思惑があるのかは私にはわかりかねますが…貴方がそういうということは大丈夫なのでしょうねぇ。」

 

「クックックックック、わかってんじゃないか。お前も悪だねえ。」


「ヒッヒッヒッヒッヒ、シキさんにはかないませんよ。」


 クックックック ヒッヒッヒッヒ と俺たちが意気投合しながら話していると後ろから腕を引っ張られた。


「…『あれ』って何?」


「コーン?」


「ああ、そういえばお前たちには言ってなかったな。…かなり血なまぐさい話になるがいいか?」


「コン!」


「…構わない。貴方のすることなら何でも受け入れる。」


 嬉しいこと言ってくれるな二人とも。それとルナ?なんでちょっとモジモジして顔を赤らめてんだ?


「いやあーいいですねぇシキさん。うらやましいです。」


「なにわけのわからないこと言ってんだよ。それより話すぞ、二人とも。」


 そうして俺は二人に話し始めた。俺の旅の目的、これからやろうとしてること、そのためにしている準備。全部を話した。話し終えた後の二人の反応は


「…私は何があってもあなたについて行く。例えあなたが何をしても。」


「コン!コンコン!」


 どうやらわかってもらえたようだ。いやーホントに良かった。これで二人に嫌われたりしたらどうしようかと思ってたところだ。ホントにいい仲間たちに恵まれたもんだよ。


「ホントにいい方々をそばに置けましたねぇシキさん。こういった方々は我々みたいな人種にとっては本当に貴重ですよ、うらやましいです。」


「ありがとな。でもよ、お前もその中に入ってんだからな。そこを忘れんなよ?」


「おお!それは嬉しいお言葉をいただけましたねぇ。嬉しい限りです。」


 割と本気でよろこんでやがんな。やっぱり仲間とかそういうのにあこがれてたりとかしちゃってたのかね?


 それからしばらく俺たちはこれからの行動を打ち合わせた。とりあえずは夜までに買い物と宿探しだ。そしてその後はシュタインと夜遊び(・・・)の約束をする。どちらもニヤニヤしてるのはご愛嬌だろう。


「それにしてもあの王子様をそのように使うとは考えましたねぇ。惜しむらくはあまり私が得意とする薬品関係があまり登場しないところですが。」


「そういうなって。その代りあいつらは派手にやっちゃっていいからさ。」


「そうですか、それでは遠慮なく。最近は実験ばかりでそちらはご無沙汰でしたからねぇ、カンが鈍ってないか心配ですが。」


「じゃあ今回でカンを取り戻してくれ。…そろそろ俺たちはまた買い物に行ってくるぜ。悪いがこのバカ王子の世話を頼む。」


 なんだかんだでさっき15刻━大体午後3時くらいか━にはなった。いい加減店も開いてるころだろう。これ以上遅くなると今度は夕方になる。夜に行動することも考えるとそろそろ準備を開始しておきたい。


「…わかった。急いでいく。」


「コーン!」


「おっとっと、引っ張るなって。言われなくてもすぐ行くって。じゃあな、シュタイン。また後で。」


「はいはい、いってらっしゃいませ。」

 

 街に出た俺たちは商店通りにむかうとそこは朝とは違っていつも通りのにぎわいを見せていた。まずは食料を買い揃えるために食材を主に扱っているエリアにむかう。


「金ならいくらでもあるからなにか欲しいものがあったら遠慮せずに言えよ。とくにルナ、お前はもともと持ち物が少ないんだからこれを機に揃えておけ。」


「…いまのままでも問題ない。」


「おいおい、それじゃダメだろ。女の子なんだから身だしなみとかちゃんとしとけ。それに今のままじゃ着てるものぐらいしかないんだから身の回りの物全部揃えとけ。」


「…では選ぶのを手伝ってほしい…。」


 ですからね?なんでいちいち顔を赤らめてもじもじするんでしょうかねルナさん。ホントに大丈夫?


「そりゃもちろんだ。じゃあ行くぞ、リイもなんかあったら言えよ。」


「コン!」


「…早く行く。」


 ルナに引っ張られてどんどん奥に進んでいく。ルナは俺の腕を掴んだままだ。はぐれないからいいんだけどさ。


 まずは食料を買いに行った。荷物は亜空間にいくらでもしまっておけるからどれだけ買おうと問題はない。とりあえずいくつかの露店や店を回りつつ買い物を続けていく。今は八百屋のような店で野菜や果物を見ているところだ。


「そういえばルナは料理とかできるのか?」


「…それなりには可能。ただ、旅の料理はあまり経験はない。」


「そっか、なら簡単に調理できるものと保存食だな。調味料もいるか。」


「…余裕があるのなら生鮮食品も買ってほしい。練習する。」


「わかった。じゃあおばちゃん、店頭にあるやつを少しずつ売ってくれ。」


「あらあら、ずいぶんたくさん買ってくんだねえ。毎度あり。若いカップルさんにサービスしとくよ。」


「おいおい、おばちゃん。俺たちはそんなんじゃ…」


「…………………………」


 ぞっとした。なんか隣りからものすごいプレッシャーというか殺気というか覇気のようなものが俺に向けられている。これ以上言葉を続けたら俺は…死ぬ。


「お…おー。じゃあ頼むぜおばちゃん…。」


「ずいぶん照れ屋だねえ。彼女さんを困らせちゃいけないよ。」


「…その通り。ちゃんと自覚を持つべき。」


 セーッフ!どうやら命は助かったようだ。それにしてもなんだったんだ?余計なこと言ってサービスしてくれなくなるのが嫌だったのか?


「………………」


 おっっっと!余計な事を考えたらまた殺気が!…俺なんかしたっけかなあ。


 八百屋での死線?を潜り抜けたら今度は服を買うために服飾関連の店を回っている。さっきはルナを引き合いに出したが俺も着替えが心もとない。今までは適当に水洗いして乾かしたりそのままだったりしてたがこれからはさすがにまずいだろう。  


 この世界では生地を選んで採寸をしてその人のために作るオーダーメイドが主流らしいがそれでも古着などで出来上がった服を売っている店も少なくはなくそこを回っているのだ。


「…どう?」


「おー…いいんじゃないか…。」


 そして今はルナのファッションショーと化している。さっきからもう何十着着ては俺に感想を言わせているか分からない。リイなどは最初の三着目ぐらいでもう飽きてここに来る前に買っておいた肉をかじっている。


「…もう少しちゃんとほめるべき。」


「って言われてもさ…さっきからもう何十着着てるのかわからねえしよ、気に入ったのは片っ端から買っていいからここら辺で…」


「…………………」


 殺気が!またあの時の殺気が!プレッシャーが!覇気がああああああ!どうしちゃったの?昨日今日で変わりすぎじゃない?昨日まではあんなに無表情で自分から動こうとすらしなかったのに。


「…わかった。確かにこれ以上は買い物の妨げになる。」


 どうやら俺の命は救われたようだ。まああの後店中の服を片っ端から買って店の人に驚きあきれられたが。どこか憂さ晴らしや八つ当たりの雰囲気をまとっていたルナが印象的でした。


 その後はルナのアドバイスの元、旅に必要なものから日用品にいたるまでの細々としたものを買った。水と食料はほとんど店一軒分くらいは買ったしリイのための肉もまた店ごと買い占めた。肉屋の親父が泣いて喜んでたのが印象的だったな、あれは。あと必要ないかとも思ったが一応回復薬や各種ポーション、包帯や塗り薬などの薬用品も買った。万が一の備えだ。


「これで大体の買い物は終了かな。買い物の途中で宿もとったし。何かほかに買いたいものとかあるか?」


「コンコン!」


「…特にない。」


「そろそろ晩飯時だな。じゃあ昼間は無理だったコイルの店に行くか。」


 というわけで恐らく本日で食いおさめになるであろうコイルのもんじゃを食いに行く。明日は朝食を食う前に馬車を受け取ってこの街を出ていくつもりだから本当に今回で終わりになってしまう。


「コーン…。」


「そう落ち込むなって。俺の目的を話したろ?その気になればいつだって食えるさ。」


「コーン…コン!」


「そうそう、しばらくは食えないだろうけどその分今日はいくらでも食っていいからさ。そうした方がコイルも助かるだろうし。」


 そんな会話をしつつコイルの店に到着した。


「おう、シキからっしゃい。ん?また連れが増えたのか?」


「そう、昨日から仲間になったルナってんだ。いつのもをこいつにも食わしてやってくれ。」


「…よろしく。」


「おう、こっちこそよろしくな。で、今日は何枚作ればいいんだ?」


「それなんだがな。俺たちは明日の朝一番、それもほとんど深夜って自分に街を出ることにしてるからよ、ここに来れるのは今回が最後ってことになる。」


「なんだって!ずいぶん急じゃねえか…いや、冒険者ならそういうこともあるだろうな…。折角客がついたと思ったんだが…。」


「悪いな。その分今日は材料が切れるまで焼いてもらうことにするぜ、頼むわ。」


「わかった。これが最後と思ってとことん搾り取ってやっからな、覚悟しろよ?」


「へいへい、観念しますよ。じゃ、頼むわ。」


 それからコイルは本当に材料という材料を使い切りもんじゃを焼きまくった。俺もリイも満足したし、ルナも気に入ったようで下手をするとリイよりも食いまくってたんじゃないかと思う。

 後で話を聞いてみると「味は文句はないしこれ以上の見た目の物も食べたことがある」との返事をもらった。飯のクオリティーを落としてはいけないと俺に強く決心させる一言だった。


「いやーホントに使い切るまで焼き切るとか恐れ入ったわ。」


「こっちもだ。まさかあれだけの量を全部平らげるとはな。これでしばらく家族は食っていけそうだ、ありがとよ。」


「ん?お前が一家の働き手だったりするのか?」


「ああ、親父は年だから仕事にありつけねえし妹は体が弱いからあまり家から出れねえ。お袋が食堂で下働きしてるが給料も大したことないしな。だからお前が来てくれた時はホント助かったんだ。」


「そうか…これからも頑張れよ。それと、これはやるよ、好きなように使いな。」


 そういうと俺は金貨を一枚コイルの手に握らせる。


「おいおい、こりゃ金貨じゃねえか!もらえねえよ、こんなもん!」


「いいからとっとけ。金は有り余ってるし、俺がまたこの街に来て食いに来たときに貧乏が原因で一家もろとも死んでましたじゃ俺が困るんだ。」


「で…でもよお…。」


「いいから貰っとけ。かわいい妹と親が死ぬぞ。」


「…わ、わかったぜ…。じゃあ、ありがたく貰っとくが次に来たときはタダで作ってやるよ。だからまた食いに来いよな!」


「ああ、またな。」


 男の子なやりとりをして俺たちは分かれた。そのまま宿の部屋に行き、深夜になるまで部屋でくつろぐ。


 深夜になって約束通りシュタインの店に向かう。ルナやリイも来るとグズッたが「お前たちをあんなやつらと引き合わせたくないし危険な目に合わせたくない。」というと渋々だが引き下がってくれた。

 またもやルナが顔を赤くしてたが一体なんなのだろうか。こんどちゃんとした医者に見せてやる必要があるかな。


「ヒッヒッヒ…お待ちしておりましたよ。もう準備はできています。」


「悪いな何から何まで…じゃあ始めるとするか。」


「ええ…作るとしましょうか。『博物館』を。」


 俺とシュタインの『博物館』製作作業は夜遅くから人目につかないように行われ、作業は夜通し続いた。 


 

勉強が…大変です。自分ってこんなに頭悪かったんだとひしひしと…。

まあ皆さんの声援のおかげで頑張れていますが(笑)。

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