戦闘後
思ったように話が進まずグダグダになってしまいました。これ以上ヤバくなる前にいったん切りますのできりが悪く感じるかもしれませんが申し訳ありません。
街に戻るとなんだか街中が騒がしい。一体どうしたんだ?
「てかコボルトの討伐してた最中だった…。でも街に着いちまったから今更戻るのもなあ。」
そう、俺たちは本来コボルトを狩りに行ったのであって決してあのキメラもどきを狩るために外にでたわけではないのだ。
「でもあれだけ強いやつならコボルト程度の依頼失敗なんて問題にならないだろ。たかだか依頼の一つ失敗しただけで退会処分になるわけじゃなし。」
そう気楽に考えながらギルドに向かっているとギルドの前に人だかりができているのに気付いた。
「どうしたんだろうな?何かデカいやつでも出たか?」
「コーン!コンコン!」
「ああ、もしかしてあのキメラもどきか?あんだけデカけりゃ人目にも着くだろうし。」
案の定人ごみをどうにかして潜り抜け受付に行き、マリーに事の次第を確かめる。
「なあマリー、この人だかりはどうしたんだ?」
「あ!シキさん。大変なんですよ!ナルーダの森でマンティコアが出たんです!」
「マンティコア?」
「SSランク級の超猛獣ですよ!そういえばシキさんってナルーダの森に依頼に行ってましたよね?何か見ませんでしたか!」
人ごみのせいでざわついているから大声で喋っていたためだろう、いつの間にか周りから話し声がやみ、俺に注目している。
「おう、シキじゃねえか!」
呼ばれたので振り返ってみるとそこには異世界で初めて出会ったガルクがいた。後ろにはルーク達パーティーメンバーの姿もあった。
「ガルクじゃねえか久しぶりだな。元気してたか?」
「ああ、おかげさんで…って違え!ナルーダの森に行ってたんだろ、何か知らないか?ここに集まった奴らは全員マンティコアの討伐に向かう連中だ。見かけたっていう情報は確かだが相手に関する情報が足りねえんだ。」
「マンティコアってそんなに珍しいのか?」
「当たり前だろ!Aランク級ですらたまに見かける程度でほとんどの冒険者は逃げだすんだ。それがほとんど目撃例も戦闘例もないからどんな攻撃をするのかすらほとんど知られてねえんだよ。」
「んー、とにかくスピードは速かったな。100メートルくらいあったのに一瞬で間合いを詰められたし。後、腕の筋力が以上に高かったな。あのスピードでバカみたいに筋力があるから一撃で地面に大穴開けるし尻尾の蛇はバカみたいに消化液吹きかけるし衝撃波は吹き飛ばされるしさんざんだったな。」
「な…なんでそんなに詳しいんだ?まさか戦ってきたのか!?確かにシキの実力なら少し戦って逃げ出すくらいはできそうだが…」
「ん?ああ。とりあえず切れたからぶっ殺してきた。」
「は?」という感じで空気が静まり返った。まあそりゃそうか、どこの誰とも知れないやつがSSランクと戦ってきてあまつさえ殺してきたなんて空気を読まない冗談だわな。
「おい、クソガキ!今はバカな嘘ついてる場合じゃねえんだ!見かけてないなら見かけてないで素直に言いやがれ!」
「そうだそうだ!」「ホラ吹いてんじゃねえぞガキが!」「時と場所を考えろ!」とかいろいろ言われてる。温厚なおれでも嘘つき呼ばわりは怒ったぞ。目に物を見せてくれるわ。
「あーあー。とりあえずうるさいぞ雑魚共。大体にしててめえらが今から森に行ったって撃退どころか見かけることさえ出来ねえんだよ。それくらい分かれ、ゴミども。」
「んだとこらあ!」
さっき俺に罵声を浴びせてきたやつが殴り掛かってきた。あーやだやだ。どうも冒険者ってのは血の気が多くてやってらんねえ。あれ?俺って前にも冒険者に絡まれたっけか?
「まあまあ、話せばわかるって。」
と言いながらも殴り掛かってきた男の拳を左手の小指で受け止める。男の拳は俺の小指に拳をふるったが俺はビクともしない。
「な、なんだ!どうして俺の拳が指一歩に阻まれんだよ!ありえねえ!」
「目に映ることが真実だよってね。」
どっかで聞いたようなセリフを言いながら左手で男の腕を掴み壁まで投げる。投げられた男は何か言ってたみたいだけどスルー。あれ?なんかデジャブった。
周りもあまりのことに唖然としているのか、さっきとは違った種類の静寂がこの場を包む。この場にいる全員が俺に注目している。
「し、シキさん!今は緊急事態なんです!本当に何も知らないんですか?」
マリーが静寂を破って聞いてくる。この空気の中聞いてくるとは勇気があるな。いや、一つのことに集中すると他のことに目がいかなくなるだけか。
「まあまあ落ち着けって、マリー。殺してきたのは本当さ。今から証拠を見せてやるよ。」
俺はギルドを出てギルド前の広い路上に出た。行く途中でモーセみたいに人が左右に割れて面白かったな。路上の人をどけさせてからマンティコアとやらを亜空間から出す。
俺の影から少しずつ出したもんだから周りの連中が「ヒッ!」とか悲鳴を上げた。影から化け物を少しずつ出すのが面白いんじゃないか。
「これがウワサのマンティコアってやつだ。ギルドの魔物の資料に乗ってないか?」
皆唖然としている。目の前に20メートルの虎とゴリラと蛇と鳥の特徴を持った奇怪な化け物が死体で出てきたから当然だけども。皆のバカ面がおもしれー。
「こ…これを本当にシキさんが倒したんですか?一人で?」
「結構手こずったけどな。見ろよ、鎧なんかボロボロだ。気に入ってたのに。」
そう、マンティコアの消化液がかかったから溶けてボロボロだ。もともとの耐久値や素材のおかげでそうヒドイことにはなってないけど鎧に消化耐性をつけてなかったせいで無事とは言えない状態になってんだよな。
「て…手こずったって…SSランクの魔物を相手に…シキさんって一体何者なんですか!」
「ん?知ってるだろ?ぽっと出のFランク冒険者だ。」
周りから驚愕と疑惑のまなざしが向けられる。中にはその場にがっくりと膝をついて落ち込みまくっている奴もいる。きっと自分の技量とかに自信があった奴なんだろうな。ちょっと年食ったやつらに多いし。
「コーン…。」
「あーそうだよな、リイ。人目にさらされるっていうのはあまりいい気分じゃないよな。さっさと換金すませるか。ってわけでマリーちゃん。こいつの素材っていくら位になる?」
「こ…ここまでくると普通に換金というわけにはいきません…。い、今すぐギルドマスターを呼んできます!」
ダッシュでギルドに戻るマリー。そんなに急がなくてもいいのに。
「コン!コンコン!」
「ん?あいつの肉が食いたいのか?ちょっと待っててくれよ。買い取りの時に肉をもらうからさ。今勝手に手を付けたら値段が下がっちまうんだ。」
「コーン…。」
残念がってんな。リイのためにも食わせてやりたいけど今は我慢してもらわないと。
「おお…これがSSランクのマンティコアか……。現役時代にもこんなやつは見たことがなかった…。」
マリーを後ろに伴ってギルドから出てきたじいさんがいた。こいつがギルドマスターってやつか?
「あんたがギルドマスターか?さっそくで悪いがこいつの素材を買い取ってくれねえか?さすがにまるまる売ってやるわけにはいかないが。」
リイのための肉もそうだけどシュタインにもどっか持って行ってやろう。もしかしたらこれを素材に何か作れるかもしれないし。ああ、研究材料をわざわざ提供してやるとかなんて優しいんだろう、俺。
「ああ、わかった。とりあえず聞きたいこともあるから私の部屋に来て欲しいが構わないか?」
「了解、さっさとすまそうぜ。」
マンティコアをまた亜空間に仕舞ってギルドマスターとやらのあとに続く。仕舞うときにも周りから悲鳴が聞こえたが気にしない。
ギルドマスターの部屋ってのはもっと豪華なもんかと思ってたが案外そうでもなく質実剛健って感じの部屋だった。意外だ、この世界のお偉いさんってやつはどいつもこいつも派手好きだと思ってたんだが。
「まあ派手好きなのが多いのは否定しないがな。そういえば自己紹介がまだだったな、私はバルタックだ。」
「悪いな、聞こえてたのか。知ってると思うがシキだ。せいぜいよろしく頼む。」
「ああ、こちらこそ。…本題に入るがあのマンティコアは本当に君が一人で倒したのか?だとしたらどうやって?」
「疑うのは無理ないが事実だ。コボルトの依頼を受けてる途中に会ってな。ちょっと剣を交えて何発かもらっちまったけど魔法で動きを止めてボコったら死んだな。」
「それだけ聞くと簡単に聞こえるが君のその鎧を見る限りそういうわけではないようだな。」
「ああ、ヒドイだろ?直すのなんかわけないがお気に入りだったのによ。」
「ふむ…まあいいだろう。それよりマンティコアの動きについて教えてもらいたい。もちろん謝礼もするしマンティコアの素材も買い取ろう。」
そこからしばらくの間マンティコアについて質問攻めだった。終わるころにはもう日は暮れて夜になっていて結局マンティコアの素材の買い取りは明日ということにしてリイと一緒に宿に戻る。リイは途中からつまらなくなったのかすでに寝ている。ギルドマスターのおっさんもリイをチラチラ見ていたようだが
どうしたんだろうな。
「おっちゃん、ただいま。飯って今大丈夫?」
「おお、お前か。どうやらすげえことやったらしいな。」
「なんだ、もうそんなに広まってんのか。」
「ああ。なんでもSSランクの魔物を惨殺したFランクの冒険者だとか全てを闇に引きずり込む悪魔だとか人を人と思わない鬼畜外道だとかいろいろ言われてるぜ。」
「どんな噂だよ、それ…。」
「それはそうと気をつけろよ。こんな噂こそ流れちゃいるがFランクってこととあんたが倒したってことは確定だからあんたを狙ってマンティコアの素材を横取りしようと狙ってるやつらもいるって話だ。」
「へえ?SSランクを倒した奴だってのに?」
「それでも不意をつけばやれるって思ってるやつが結構いるみたいだな。どんなに強くても所詮はFランクって侮ってんだよ。」
「バカだねえ、そいつらも。ありがとよ。これは情報代と礼だ。」
「おいおい、こんなに銀貨もらえねえよそんなつもりじゃなかったのに。これどう見ても20枚はあるぜ。」
「マンティコアの素材が売れればそんぐらいはした金だって。いいからとっとけ。」
「そうか、なんか悪いな。」
「気にすんな。命に関わる情報だからな。」
そういって部屋に入る。一応探査も使って部屋の中には罠の類も伏兵も潜んでいないことがわかった。それにしても俺を狙ってくるやつか…うざったいな、ここに来てまだ少しだけどもうこの街を離れた方がいいかな?
なんて思いながら目を閉じる。おやすみ…。
…無粋な連中だな、これから寝ようとしているやつの寝こみを襲おうなんて穏やかじゃねえ。訪問のマナーを守ってから訪ねて来いよ。
リイを左手で抱えて窓がある方と逆の壁に寄り掛かる。しばらく待っていると
ドン!ドンドンドン!ドン!!
ドアが蹴破られた。そこから二人組の連中が入ってきてベッドに飛び込む。
「へっへ、大人しくしやがれ!」
「おとなしくマンティコアを差し出しゃあ…あん?いねえぞ!どこ行った!」
「こっちだよ。超重化!」
「ぐああああああああああ!」
「お、重ええええええええ!何が…」
「お前らさあ、こんな時間に襲ってくるとかバカなの?死ぬの?殺していいの?」
さて、こいつらどうしよう。ここで死んでもらっても寝場所がなくなって困るしこんな時間に外に出るのも億劫だしなあ。
「た…頼む!もう…やめてく…れ、し…死んじまう…」
「わ…悪かった!お…俺…た…ちが…悪かったから…」
「だーかーらー、許す許さないの問題じゃないんだって。どうやって始末しようかの問題なんだって。」
ホントにどうしよ、こいつら。なんだかんだ言って眠いし今から拷問にかけるのも面倒なんだよな。
「まあいいや。とりあえず体動かなくして声出させなけりゃいいだろ。」
ザ・バランサーで脊髄を切って体を動けなくする。口は…釣り針と糸でいいか。
「ああやっと静かになった。お休みー。」
こんどこそベッドに横になり今日も眠る。明日はギルドに行って金を稼いでシュタインのところに行って素材をくれてやってガルク達にも挨拶すっか。
次こそは実りのある話にしたいと思います。




