命の危機?
やっぱり戦闘描写は苦手です。けっこう変になっちゃいました…。
「グルオオオオオオオオオオオオオオオ!」
「おいおい、まさかのまさかか、これは。いや、低ランク依頼で上位の魔物が出てくるとかよくあることだけどさ。」
探査にひっかかった魔物に対するマーカーの大きさは今まで見たことがないくらいの大きさになっていた。リイやあのスケイルベアーとやらよりも反応が大きい。
「しかもこっちに向かってくるとかなんでだよ。なんかしたっけかな、俺ら。」
「コーン…?」
と思ったら周りに血と肉の焼ける匂いがしているのに気づいた。これは…
「まさかコボルトの血と肉の焼ける匂いにつられてやってきたとか言わねえよな。いや、たぶんそうなんだろうなあ…。」
「コーン…」
「落ち込むなって、リイ。お前のせいじゃねえよ。けしかけたのは俺だし。それよかおいでなすったあいつのお相手の準備をしねえとな。」
ズウウウウン!と木々を倒しながら現れたそいつはでかい奴だった。大きさは周りの木々(約20メートル)とほぼ同じくらいで全体的な長さという意味ではサンドワームにこそ及ばないものの十分にでかい。
問題なのはその姿で、体と頭と足は虎っぽいものの、腕は胴体と同じくらいの太さで全体的に鋭い毛で覆われている。下手な鎧なんか簡単に串刺しにしそうだ。背には今は閉じているが翼があり飛ぶこともできそうだ。尻尾に至っては蛇が自立行動していて口から垂れた液体が地面をジュウジュウと溶かしている。
しかもそいつは後ろ足で二足歩行している。後ろ足だけは細く、前足の太さの半分もない。どうやってバランスとってんだ、こいつは。
「ギャオオオオオオオオオオオオ!」
「いやいや、いきなり襲いかかってくるとかまじか!てか速!」
距離は少なくとも100メートルはあったはずなのに一気に間合いを詰められた。間一髪でリイを連れてその場を離れた瞬間、さっきまでいた場所にクレーターができてた。あの太い腕で殴り掛かったらしい。あのスピードであのパワーとかまじ勘弁してくれよ。
「ち、リイ、離れてろ!こいつはまだお前が勝てる相手じゃねえ。下手に近づくな!」
「コー…」
「いいから行け!早く!」
まずい、こいつはマジヤバイ。この世界に来てから三日ぐらいだがこいつはまずいってのはすぐわかる。いくら俺がチートでもあのスピードはギリギリだ。ちょっとでもかすったら全身持って行かれる。
幸いにもリイは俺の指示に従ったらしく、かなり遠くに行っていた。よしよし、そのままそっちに行っててくれよ。
スピードにはスピードと左手にザ・アクセルを。動きをちゃんと観察するために右手にはザ・シールドをそれぞれ持つ。これでそう易々とはやられはしないはずだ。
「ギャオオオオオオオオオオオオ!」
またやつがあのスピードで突進してくる。だが俺のスピードもさっきまでの比じゃない。危なげなくかわすとザ・シールドでとりあえず一凪ぎしてみる。腕に当たったが、『ガギイイイイン!』と音がして刃が通らなかった。
「おいおい、防御型とはいえオリハルコン製で攻撃力測定不能のこいつの攻撃が通らないのかよ。どおなってやがる。」
測定不能の攻撃が弾かれたってことは考えられることは二つ。
一つは俺の力不足。要するにこいつの防御力が俺の作った武器の性能を上回っているからダメージが通らないってこと。測定不能なのは俺の鑑定で測りきれないってだけで俺よりももっと上位の鑑定能力があるやつがみれば測定不能なんて結果にはならないのかもしれない。
二つ目はこいつ自身の能力。なんらかの固有能力を持っていて、それが俺の攻撃を防いでいるって可能性だ。だとしたらこいつはかなり強い。Aランクの魔物なんてまったく比べ物にならないほどだ。
とりあえず様子見は不要ということで右手の剣をザ・デストロイに変える。今度はこっちからだ。
「おら、これでも喰らえや混ざりもの!全方位火槍!」
魔法で奴の周りに超高温の証である青色の炎の槍を隙間なく配置して発射する。これならひるむぐらいはするはずだ。
「グギャオオオオオオオオオ!」
予想通り多少の効果はあったらしい。串刺しにこそならなかったが炎が体のいたるところに燃え移っている。目などの大事なところはかばったらしいがその分身体は疎かになったらしい。
「ゴオオオオオオオオオオオオオ!」
「くうううううううう…。おいおい、マジかよこいつ…。」
体中に燃え移った炎であわよくばとも思ったがそうはいかなかったらしい。閉じていた羽を思いっきり広げ、怒りのこもった雄たけびをあげると衝撃が周囲を襲った。
その衝撃から起きる風で燃え移った炎は消え、周りの木々は吹き飛び、俺もちょっと吹っ飛ばされた。衝撃は鎧の効果で吸収されて大丈夫だったがあまりのことに行動するのが一瞬遅れた。
間合いを詰めたあいつは右前脚で俺をぶん殴った。しかし俺は吹き飛ばない。むしろその場で踏ん張っている。
「打撃無効にしといて命拾いしたぜ…。けど今のは焦った、今のは焦ったぜえええええええ!」
このやろう、ヒヤヒヤさせやがって!死んだかと思っちまったぞちくしょう!その自慢の足切り落としてくれるわ。
「拘束しろ!鎖牢!」
地面から無数の鎖が奴に向かって飛び出し、体中をがんじがらめにする。必死にもがいているようだが無駄だ。次から次へと絶え間なく鎖はまき続けさせている。ちぎった端からまた次の鎖が絡まっていくのだ。
「それでも足はぶっ壊せるぜ!砕けろおおおおお!」
ザ・デストロイを足に叩きつけようとしたその時
「フシュルルルルルルルルルルル!」
尻尾の蛇が顔を上に向けたかと思うとさっきまでの比ではない量の消化液がまるで噴水のように吐き出された。『シュウウウウウウウウウウ!』と鎖が溶けて奴が自由になる。消化液を吐き出したまま今度は俺の方に頭を向けてきた。
「フシュルルルルルルルルル!」
「ゴオオオオオオオオオオオ!」
正面からは消化液が、上からは拳が降ってきた。あわててザ・デストロイで上の拳を、左手のザ・アクセルをその場に捨ててザ・シールドを構えてバリアーを展開したが少しだけ間に合わなかった。
「ぐあああああああああああ!」
頭の方は先にバリアーが展開されたから無事だったが体の方はもろに消化液を喰らってしまった。鎧で守られていたから大事には至らなかったが鎧のところどころが溶け、体に達してしまった。焼けるように熱い。
拳の方はザ・デストロイの絶対破壊属性が効いたのか腕を粉砕することに成功したものの、剣で拳を受け止めた形になったため吹っ飛ばされた。鎧には打撃無効がついてあったものの剣にはそれがなかったため衝撃こそ無効化に成功したが打撃は無効化できなかったのだ。おかげでかなり奥の方に空中を飛びながら飛ばされてしまった。木に当たってやっと止まる。
「クソったれがあああああああ!ふざけやがって、ふざけやがってよおおおおおおおお!」
ここでもか!ここでも俺はあんなわけのわからないやつに虐げられなきゃいけないってのかよ!ふざけるな!この世界もこの力も俺が選んだものだ。誰にもやられないための力なんだ。俺が誰にも勝てるための力なんだ。なのに…なのに…
「こんなところで終わってたまるかってんだよクソッタレがあああ!もう許さねえ!虐殺だ!跡形もなく粉々にしてやるよおおおおおおおお!」
奴は追撃をしようともうこちらに向かってきてるが問題ない。こっちに来るまでに準備は全部終わらせる。
「全ての異常を治し回復せよ!メガヒール!」
ヒールの上位版メガヒール。瞬時に傷が治り、溶けてなくなった部分まで完全に再生させる。それだけでなくスタミナや疲労感といったものも回復させることができる。身体はこれでいい。あとは…
「ブンブンブンブンうざってえんだよ!超重化!」
奴にかかる重力が通常の20倍になる。さすがに20倍の重力ではあのスピードが出せず、目に見えて動きが遅くなる。さっき不意を突かれた蛇も重力の影響でろくに頭も動かせないようだ。
「まだまだあ!超重化! 超重化! 超重化! 超重化!!!」
100倍の重力が奴を襲う。100倍の重力に耐えられないのか地に伏し、体中がメシメシといやな音をさせている。それでも潰れたりしないところやはりそうとうタフなやつなのだろう。
「これで終わったと思うなよ!ハンマー創造!続いて付加:稲妻!」
奴の頭上に巨大なハンマーを創造しそれに付加:稲妻で稲妻をまとわせる。
「喰らいやがれ!トールハンマー!」
ズガアアアアアアアアアアアアン!と音を立てながらハンマーが振り下ろされる。ハンマーによる衝撃もさることながらあまりにも強力な稲妻は奴だけではなく地面も側の木々も瞬時に黒こげにした。
「ギイイイイイイイイイイイイイ!」
奴が断末魔をあげる。それでもまだ死んでいないといことはやはり何かしらの能力の性なのだろうか。もう虫の息のそいつにザ・デストロイを向けて、重力が俺にかからないようにしながら奴の頭にあてる。さっき拳に効いたんだから頭にも効くだろう。
「これで終わりだ、キメラもどき。だがお前のお陰で気が引き締まったよ。だからといって殺さないってことはないけど。」
首にザ・デストロイを振り下ろす。グシャアアア!といって首が壊れてもげた。尻尾の蛇もちゃんと付け根の方から壊し落としておく。
「ようやく終わったか…アッブネー。正直何回も死ぬかと思ったぞ。装備に感謝だけどやはりどこか穴があるな。」
最強と思われたこの装備たちにもいろいろな穴があるということがわかった。また今度その穴を塞ぐために改修しなきゃな。
奴はバラバラにしてゴミにするところだったけどトールハンマーを振り下ろした時点ですっきりしたからまあ良しとしてやろう。これだけ強いやつなら素材も高く売れるだろうし。後でステータスチェックもしないとな。
「おーい、リイ!もう大丈夫だぞー!帰って来ーい。」
「コーーン!コン!コンコンコン!コーーン!」
「おいおい…確かにヤバかったけどさ、もう大丈夫だって。だからそんなにしなくても…」
「コン!コンコン!コンコンコーン!」
どうやらだいぶ心配かけたみたいだな。キツネ状態で泣きながら俺にしがみついてくる。爪が食い込んでんだけど、まあどうでもいいか。だいぶ心配かけたしこのくらいは甘んじて受けよう。
「はいはい、分かった分かった。今度からは危なくないようにするよ。悪かったな。」
「コーン!コンコーン!」
「さて、今日は今までで一番疲れたな。さっさと今日は帰るか。」
「コン!」
キメラもどきをスケイルベアーと同じ亜空間に入れて俺たちは街に戻っていった。
倒し方をもっと工夫すればよかったかもと思う今日この頃です。




