お店訪問2
街中でリイをうまく動かせなくて苦労します。もうちょっと後で遠出とかに出したいと思ってるからその時にでもと思ってるんですが…。
過去最多の文字数です。今まで4000字くらいだったのが一気に7000字に…。原因は後半を見ればわかってもらえると思いますが。
PV25000オーバー ユニーク5000オーバーを記録しました!これもこんな駄文を読んで下さる皆さんのおかげです。これからもどうぞよろしくお願いします!!
「ヒヒヒ…お客さんも好きですねぇ、ここは自分で言うのもなんですが誰も寄り付かないような店ですのに。」
「いや、昨日ここに来たばかりだから何とも言えないんだが昨日来た時からこの店は確かに目立ってたな。他の魔道具屋もこんな感じなのか?」
「いえいえいえ~。この店は私の趣味をそのまま反映してますからねぇ、他はもっとちゃんとしてますから安心してもらってもいいですよ。」
「じゃあこの店で採算取れんのかよ、失礼だけどさ。」
「いったでしょう、私の趣味ですって。採算なんて二の次三の次なんですよねぇ~。売ってるのって私の研究成果ですし。」
「研究成果?自分でこの店の商品全部作ったのか?」
店の中はかなり雑多としていてオドロオドロしてるが量はものすごいことになっている。一応区分はされてはいるがそれぞれがいちいち多くて山を作っていて天井まで届いている山もある。これらを一人で作ったとしたら相当だ。
「ええ、私ったらついつい研究に熱心になりすぎてしまう癖がありましてねぇ~。おもしろくってついつい毎回作りすぎてしまうんですよ。時には道行く人に実験に協力してもらったりもしてるんですよねぇ。」
「実験ね…。もしかして路地裏のやつか?」
ニヤリと笑いながら店長に聞いてみる。この人俗にいうマッドサイエンティストってやつかね?だとしたら俺たちに危害が無い限りは仲良くしたい人種だ。こういうアウトローな存在って適度な距離を保ってればおもしろいからな。
店長もニヤリと笑いながら返事をする。
「ええ~。いつでもいて後腐れがなくて大変便利なんですよねぇ~。お客さんもどうです?今なら一か月間不眠不休で働ける手術の用意があるのですが?」
「いや、俺は遠慮しておくよ。でも俺にもちょっとあてがあるからこの後もしかしたら連れてくるかもしれんがどうだ?」
とりあえずあのバカ三人組とかさっきから俺の後ろをついてくる孤児のガキとかな。バカ三人の方は口が縦に切れてるかもしれんがそれぐらいじゃ死なないべ。孤児のガキもちょっとひねれば大丈夫だろ。
「いいですねぇ~。それではその時は是非私のところに持ってきていただけますか?お礼はしますよ?」
「いいね、報酬云々はその時に考えるとするよ。今はちょっと店の中を見せてもらうぞ。」
「ええ~、どうぞごゆっくりぃ~。」
そこから俺はゴミ山…もとい商品の山に孤軍奮闘した。リイは興味がないのか、店の隅でさっき買った肉を食っている。俺より肉か…肉以外にも反応しようぜ、俺悲しい…。一時間ほどかかったが、どうにか役立ちそうなものと興味をひかれたものをいくつか買い揃えた。今度旅に出たときにでも紹介しよう。
「これだけくれ。それと見た限りじゃ腕もいいんじゃないか?効果がそん所そこらのものよりもいい気がするぞ。」
「うれしいこと言ってくれますねぇ~。合計で銀貨2枚になりますが大丈夫ですか?不足分はこちらでバイトをしていただいてもいいんですよぉ。」
「さすがにそれは遠慮しておくよ、ほら銀貨2枚。」
「はい毎度どうも。…おやぁ?」
「どうした?」
「あなたのその財布ですがどうも妙な感じがしましてねぇ~。見た目は間違いなく普通の品なのですが魔道具の気配がするんですよねぇ~。普通ならこんなことありえないのですが。」
「へえ?そんなの感じるんだ。じゃあちょっと面白いもの見せてやるよ。」
さっき買った道具屋のセットの中からいくつかある袋の一つを取り出し、店長に見せる。何の変哲もないのを確認させたら今買ったものを次々と入れていく。
「おや!おやおやおや!あなたは魔法使いだったのですか?でもさっきまでは普通の袋だったはずですがねぇ。普通は魔道具用の袋を作ってから魔法をかけますし、その魔法もちゃんと準備をしないといけないはずなのですが…。どうやったのです?」
「ちょっと特殊な例なんだ、俺は。普通の袋を魔道具にするなんて簡単なのさ。俺以外にはできなくて教えてやれないのが残念だがな。」
「ほお~、実に興味深いですねぇ。…ちょっと解剖されてみません?」
「はは、言うと思ったよ。ついにバイトとかの建前も取り払いやがって。でも断るぜ。その代りといっちゃなんだがこれからも面白いもん見せてやるよ。」
「それはそれは!解剖できないのはかなりかなりかなり残念ですが仕方ないですねぇ。これからもどうぞ御贔屓にお願いしますよ。」
「おう、よろしく。いい関係を築いていこうじゃないか。俺はシキだ。」
「これはこれはご丁寧に。私はシュタインと申します。これからの関係に期待させていただきますよ。」
次に俺たちが向かったのは武器屋だ。ファンタジー世界では必須とも憧れとも言われているところだが特にこれといって今は買う気はない。自分で作れるし性能も他を圧倒しているという自信がある。それでも行くのは一般的な武器の性能を確かめるためと、もしかしたら掘り出し物があるかもしれないからだ。
「おう…。勝手に見てけ…。」
武器屋に入った途端これだ。この店長商売する気あんのか?店構えはちゃんとしているようだが、店長が無愛想すぎる。よく言えば生粋の職人という感じだが悪く言えば商売を舐めているとしか言えない。
ざっと鑑定込で見てみたがやはりというか目ぼしいものはない。魔法が込められてたり持ち主に特殊な効果を施すものもあったが俺の能力を基準にするとやはりぱっとしない。金は結構かかるみたいだが他の武器の相場を知らない以上何とも言えない。
「なあ、ここの武器って全部あんたが作ってるのか?」
「ああ…。そうだ…。」
「値段ってどこもこれくらいなのか?」
「坊主…何が言いたい…。」
「は?」
「ここの武器は誰が作ってるのか?値段はどこもどれくらいか?回りくどいこと言わねえで言ったらどうだ、ろくな店じゃねえと!」
「いや、あんた何言って…。」
「うるせえ!値段だ誰が作っただ関係ねえだろうが!武器自体の性能を聞くならまだしもそんなこと聞くやつになんざここの武器を売れるかってんだ!とっとと帰れ!」
「いや、だから」
「うるせえクソガキが!とっとと失せろ!」
だめだこいつ、やっぱり職人肌の人だった。そんなやつに性能について聞かないで値段とか聞いちまったら確かに切れるわな。…別に殺してもいいがそろそろ日も暮れるし仮にも武器屋の店長だからな、簡単に殺しちまうのはいろいろとマズイ。
「わかったよ、お世話様。」
「二度と来るんじゃねえ!」
ハア~、嵐のような店だった。シュタインといいあの店長といいどうやって店構えてんのに生活してんだろうな?
「さて、そろそろ来るか?」
そう、肉屋から俺の後をコソコソつけている孤児と思われるガキ連中だ。なんでここまでアクションを起こさないのかは不明だが目立った動きがあったからそろそろだろう。さて、シュタインのところにも連れて行く予定だしどうやって痛めつけようか。
side 孤児
僕、マッシュは孤児だ。でも最初から孤児として生きてきたわけじゃなくて、ついこの間、お母さんが再婚した相手のお父さんに村から連れてこられて、ここで奴隷として売られそうになったところをお母さんに逃がしてもらって助かったんだ。今孤児の仲間たちに色々教えてもらっている最中なんだけど…。
「おい、ぐずぐずすんなよ!お前がやらないなら俺がやるぞ!」
「ご、ごめんなさい…。だ、大丈夫、今からやるよ。」
今はスリの実践をさせられているところだ。でも人の物を盗むことに抵抗があって今までなかなか手を出せずにいた。
相手は剣を七本もって白いキツネを肩に乗せたお兄さん。装備は貴族という感じなんだけど護衛らしき人も付けないで周囲をキョロキョロ見て道行く人に道を尋ねているから世間知らずのバカな貴族なんだろう、いいカモを見つけたって皆はよろこんでいた。お金もかなり持っているらしく、肉屋で店の肉を全部買った後でもまだお店を見て回っていたから本当にたくさん持っているんだろうなあ。僕もあんなにたくさんお金を持ってみたい。
「やるなら早くしろよ。確かに日が暮れたらやりやすいけど俺たちだって見失うかもしれないんだから。」
「そうだぜ、あんないいカモ滅多にいないんだ。ここで逃がしたらもう面倒見てやらないからな。」
「ただでさえお前は失敗ばかりしてんだから。これを失敗したら…わかってんだろうな?」
上からデグン、ネルト、ホーストだ。デグンが僕たちのリーダーで僕が来る前から三人でつるんでいて路地裏をウロウロしていた僕を見つけて仲間に入れてくれたんだけど…都合のいい使い走りにされているとしか思えないんだ。
けどここで見捨てられたら僕は本当にどうしようもなくなってしまう。今までだってデグン達に食べ物を盗ってきてもらってきたんだ、失敗したら本当に捨てられてしまう。
「お母さんごめんなさい…。でも僕頑張るよ。頑張ってお母さんとまた一緒に暮らそうって約束守るからね。」
そう、お母さんは逃がしてくれるとき僕と約束してくれたんだ。『今は無理でもいつかきっと迎えに行くからね。絶対に見つけるからそれまで生きていてちょうだい。約束だよ。』って。
だから僕は頑張るんだ。絶対にお母さんは僕を見つけてくれる。再婚したお父さんのことだってきっとなんとかしてくれる。だって僕との約束をいつだって破ったことがないんだから。
僕は人ごみに紛れて、助走をつけて一気にお兄さんに向かって駆け出して腰に吊るそうとした財布をそのまま奪い取った。後ろは振り返らないで一気に走りきる。何度も道を曲がって、人の多いところを通って、夢中になって走った。まいたと思ったところでデグン達と合流した。
「よしよしよくやった。これで今までの失敗の分はチャラってことにしてやる。捨てないでおいてやるから感謝しろよ。」
デグンは僕から財布をひったくって中に手を突っ込んだ。ネルトとホーストも期待した表情をしている。一方僕はといえば、後悔とお母さんに対する罪悪感で一杯だった。人の物を盗むなんて僕は本当に…
「おい、どういうことだ!中は空じぇねえか!手前、途中でどっかに隠しやがったな!」
「え?ええ?し、知らないよ。僕は何も…」
言い切る前に殴られた。ネルトとホーストも一緒になって「どこに隠した!」とか「使い走りが調子に乗りやがって!」とか言いながら殴ったり蹴ったりしてくる。顔はパンパンに腫れて体中が痛い。助けて…お母さん…。
「あー、そろそろいいか?その財布の持ち主なんだが?」
声がした方を向いてみるとそこにはさっきのお兄さんがいた。僕たちのことをさっきから見ていたのか顔がニヤついている。肩には白いキツネが乗っていて最初はこっちを興味なさげに見ていたけどすぐにお兄さんから渡された肉にかぶりついてしまった。僕が殴られてるのを面白がってたのかな…。
「ち、やべえ逃げるぞ!」
デグン達は僕を置いて路地裏に逃げようとする。でも、
「おっと。ここまで来て逃げるのは無しだろ。お前らあの子の仲間なのに袋叩きな上放置ってのはひどいんでない?」
お兄さんはまだニヤニヤしながらデグン達の逃げた方向に一瞬で移動していた。あれ?さっきまであっちに…と思ったらそこにはもうお兄さんの姿はなかった。
「お、俺たちは関係ねえって!やったのはあいつだ!」
「そ、そうだ!むしろ俺たちは止めたんだぜ?な?」
「あいつなんか仲間じゃねえんだよ!だから見逃してくれ!」
「あーあーあー。だめだだめだだめだ。だってお前ら肉屋からついてきた四人組だろ?じゃあだめだって見逃せねえ。一人残らずお仕置きだ。」
お兄さんが七本の内の一本を抜いてデグン達に向けた。デグン達は「ヒッ!」と怖がっていたけどすぐに立ったまま固まった。それから
「うわあああああああああああああ!来るな来るな来るなああああああああ!」
「いやだ、いやだいやだ!やめろ!どこに連れて行くつもり…ぎゃああああああああああ!」
「助けてぇ…いやだよう…誰か助けてよぅ……誰かあああああああああ!」
といきなり絶叫をあげて地面をのた打ち回った。僕は驚いてその光景を見ていた。でもきっと恐ろしいことが僕にも起こるに違いない。とにかくここから逃げないと、と思ってろくに動かない体を動かして移動しようとして
「マッシュ」
お母さんの声がした。顔を上げて前を見てみるとお母さんがあのにっこりとした笑顔で僕を見ている。
「お母さん!」
僕は叫んだ。体中痛かったけどそれでも力の限り叫んでフラフラの体を引きずりながらお母さんの元に行こうとした。お母さんも右手を僕の方に向けてくれている。もうちょっとでその手に僕の手が届く!嬉しくて泣きながらその手に触れようとして
「このクソガキ!」
頬を殴られた。え?なんで?この人は僕のお母さんだよね?僕が間違うはずないもの。でも僕のお母さんだったら僕を殴ったりしない。クソガキなんて言わないしあんな恐ろしい表情もしない。え?
「あんたのせいで私がどれ程大変だったと思ってるの!あんたを逃がしたせいであの人からは何度も殴られるし蹴られるし物を投げつけられるし村に帰ったら子どもを捨てた母親として白い目で見られて周りから無視され続ける日々!あんたはあんたでいつもいつもお母さんお母さんお母さん!前からうっとおしかったのよ!あの人と一緒になる時だってあんたがいるってわかってからは結婚をしぶられ続けてやっと結婚できたと思ったらあんたがあの人と仲良くしようとしないせいでいっつも家の中はギスギスしていていごこちが悪いし新婚生活もろくに楽しめなかった!それでいてあんたはあの人への不満ばっかり!『お母さん、お父さんにぶたれたよう。』『お母さん、お父さんが僕からお小遣いを持って行ったよう。』『お母さん、お父さんがいっつも意地悪なのはなんでだろう?僕が悪いのかなあ?』はぁ?何言ってるのあんたが悪いに決まってるでしょいつまでも乳離れできないクソガキが!全部あんたが悪いのよ!今までは村の皆の目もあるからいい母親を演じてきたけどこうなったからにはもうそんな演技やめてやるわ!あんたがイチイチ『約束、約束』とか言ってたのやあんたがあの人にいびられてきたとか言って慰めてやったのに付き合ってやってきたのもあんたが私に従順だったら色々便利かと思ったから内心イライラしたり吐きそうな不快感に耐えてたけどもう無理もう限界!それに何?あんたのことだから私を後から追いかけて来るだろうと思って待ってたのに!その時は今度は私だけで奴隷商館に連れて行って私だけのお金にしようと思ってたのにひたすら私が来るのを待つだけとかあんた自分で行動できないの?仕方ないから探しに来てあげたのにそんな汚らしい姿になってるとか聞いてないわ!こんなんじゃ売れないし一緒に歩くのすら気味が悪いじゃない!ホントに使えないガキねもういらないわ!さっさと私の視界からその醜い顔をなくしてちょうだい、不愉快なのよ!何であんたなんか生まれてきたの?何で死んだのがあんたじゃなくて私の夫なのよ!この疫病神め!あんたなんか生まれてこなけてばよかったのよ!寄らないでよ触らないでよ近寄らないでよ!あんたなんか私の子どもじゃないわ!」
お母さんが僕のことを殴る。何度も何度も何度も何度も何度も何度も殴る。そんな……そんな風に思ってたの?あの優しい笑顔もたくさんの約束もお父さんにいじめられた僕を慰めてくれたのも全部嘘だったの?じゃあ僕は?本当のお父さんもいなくなって新しいお父さんにも拒絶されて村の皆とも友達とも離れ離れになってお母さんも僕の前からいなくなってしまうの?そんなの……そんなの嫌だよう………。
「待って、待って!お母さん!」
一人になるのは嫌だ絶対に嫌だ。これからはお母さんの言うこと何でも聞くよ、お母さんが嫌なこともしないし嫌いだったら好かれるように努力するよ…だから一人にしな
「うるさい!さっさと死ね、このゴミムシ!」
お母さんの右足が僕の顎を蹴り上げて僕は壁に叩きつけられた。そのまま僕の意識は遠のいていく。
待…って、待ってよう…おかあ…さ……
side シキ
「こんなもんか?それにしてもザ・チャームがここまで便利だったとは。まさか『こいつらが一番恐れているものを見せる』なんて思ったら本当に見せるとは思わなかった。」
そう、財布を盗まれた後俺は追跡を使って財布を盗んだバカガキの後をゆうゆうと歩きながら追いかけてって、たぶん中身がなかったから疑われて袋叩きに合っていたバカガキをニヤニヤしながら眺めて一段落したところで他のクソガキどもも含めて悪夢見せて一網打尽。
財布を盗まれた時からもう亜空間は閉じてただの袋に戻してたんだよバーカ。いやーシュタインに持っていくお土産が増えて助かった。めんどいから一人でいいかなとか思ってたけど固まってくれてたから手間が省けたよ。
「さてと、悪夢は解いたし後はこの暴れると電流を流して動きを止める腕輪と足輪をかけてっと。」
よしよし準備オッケー。俺は意識が無くなったガキ四人組を鎖でつないで引きずりながら歩き出す。道行く人も最初はなんだろうと見ていたけどすぐに興味を失ったようでそれぞれの行動に戻っていった。前の世界でも孤児を鉄砲玉にするっていう話があったし、この世界でも案外あることなのかもな。
着いたのは壁に魔法陣が所狭しとかかれている怪しい店。俺は中に入り、
「おーい、シュタイン!実験協力者もってきたぜー!」
商品を卸した。
人をいじめるとついつい話が長くなってしまう自分です。もっとコンパクトにするはずだったのに…どうしてこうなった!
リイの態度が最初とちょっと違くね?と思った方はその理由をそのうち説明するのでちょっとお待ちを。




