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初依頼達成

難産でした。まじでもっとテンポ上げないといつまでも終わらない…

 さあこのまま街へ行こう。ってその前に


「お前を洗って、名前付けないとな。」


「コン?」


 まずは桶を作って、その中に魔法ウォーターウォールで水をためる。子キツネを入れようとしたが何をするのかわからないのか、水に入るのを嫌がって入れるのに苦労した。野生じゃあまり水浴びとかしないのかもしれない。


「おいおい、暴れるなって。キレイになって気持ちいいから。」


「コーン、コンコンコン!」


 いくら言っても暴れて水に入ろうとしない。体を洗うのを嫌がる犬猫かよ。分類的には近いかもしれないけどさ。


「よし、わかった。それじゃあ体をキレイにしたらまたあのクマ肉をやる。」


「コン!」


 そしたら素直に洗われやがった。こいつ食い意地張ってんな。腹が減っている今だからと信じたい。でなけりゃいちいち飯を与えなきゃいけない。それはさすがにめんどくさい。


「おー、やっぱり洗ったらキレイになったな。うん、これでこそだ。」


「コンコン!コンコン!」


 体を洗ったらみるみる桶の水が黒くなっていったときにはびびった。野生の動物ってあんなに汚れてるんだ…。結局水につけて少しこするだけてすぐ黒くなるからその工程だけで水を五回も入れなおした。今度から絶対に定期的に洗ってやろう!


 けど、体を洗ったら本人も思いのほか気に入ったのか嬉しそうにしている。…それでも肉をねだってくるあたりちょっと悲しい…。結局食い終わったらまた洗う羽目になった。


「さて、次は名前だな。お前、自分の名前とかってあるのか?」


「コン?」


 首をかしげてる。因みに今は俺が胡坐をかいて、その足の上に子キツネを抱いている形になっている。やっぱりキレイになってるとかわええ~。やっぱり白色のモフモフって最高だよな。


「やっぱり無いのか。じゃあ俺が付けるぞ。それでいいか?」


「コン!」


「そうだな……。よし、リイなんてどうだ?」


 由来はキツネ→稲荷(いなり)→リイ(りといをくっ付けた)ていう安直な感じなんだけどどうだろうか。


「コンコンコン!コン!」


 おお、なんか尻尾ふってめっちゃよろこんでる。どうやらこれでいいっぽい。安直ではあるけど呼びやすいから俺も助かる。俺もリイをモフモフする。うん、やっぱりモフモフは正義だ。因みにリイの性別は体を洗ったときメスだと判明した。


「決まった。リイ、これからよろしくな。」


「コン!」


「後はこのクマか。どうすっかな、約束したからさっさと剥ぎ取って埋めてやりたいけど剥ぎ取り方なんて知らないし何が売れるのかわかんないしな。」


 リイはそんな俺の横でクマの肉をとろうとするが俺はそれを両手でガッチリとガードしている。せっかくキレイにしたのにまた汚してたまるか。


 収納する前にクマのステータスを鑑定で確認してみると


スケイルベアー

HP:0

MP:0

状態:死亡

備考:体の各所に裂傷と火傷あり。


「死んだらこうなるのか。状態異常があればちゃんと表示されるんだな。でもやっぱり閲覧項目が少ないな。」


 また今後の課題が増えた。鑑定を生き物相手に対してもっと正確で細かい情報がでるようにしないと。いっそ鑑定とは別に生き物専用の魔法を作るか?実際物質の方が情報は詳細だし。ま、今は置いておくか。それよりもこのクマはどうすっかな?


「そうだな…クマには悪いが亜空間に入れて街に持ち帰ろう。こいつのことがわかってから売っても別にいいだろうし。」


 クマの下に亜空間の入り口を作って収納を一瞬で完了させる。リイは驚いた後クマの肉が無くなったことに対してなのか悲しい声で鳴いていた。そ、そんな声出しても肉はあげないんだからな!


「いかんいかん、なんかキャラがぶれ気味だ。リイ、なんて恐ろしい子!」


「コン?」


「ああ、何でもない。ここでできることは全部やったし、帰るか。」


「コン!」


 リイを肩に乗せて今度こそ帰るために歩き出す。一人と一匹、森を行く。けどすぐに道に迷った、かっこわりい…。結局ここに来るまでに考えた、特定の足跡をわかるようにする追跡(ストーカー)を使って俺の足跡を逆にたどる。


「やっと着いた。我ながらなんてとこまで草むしってんだよ、バカじゃねえの。」


「コンコーン。」


 リイが慰めてくれる。まあそのバカのおかげでリイと出会ってモフモフを確保できたんだ、結果オーラいってやつだろ。


「おっちゃん、ただいま。」


「帰ったか、七日草の採集にしては時間がかかったな。ん?そのキツネはなんだ?」


「リイっていうんだ、よろしく頼む。でさ、こいつってランクフォックスってやつらしいんだけど街の中に入れても大丈夫か?」


「ランクフォックス…魔物か。尾は一本か、まあいいだろう。」


「やっぱりまずいのか?」


「いや、ときどき魔法を使う連中が使い魔として連れていたりもするからそう珍しくもないし街に入ることもできる。ただ、ちゃんと手続きをして中で連れている魔物が何をしてもそれは連れているやつに責任が全てかかるからある程度の覚悟は必要だな。」


「ま、妥当なとこだろ。リイはむやみに暴れたりとかしないもんな?」


「コン!」

 

 もちろん!みたいな返事を返してくれる。やっぱりリイは最高だな、捨てる奴の気がしれん。


「それじゃあ手続きを頼むわ。」


「わかった、それではこっちへこい。」


 それからまた書類になにやら書かされて待たされて、結局街に入れたのは門に着いてから二時間経った後だった。なんであんなに時間かかんだよ、普通に入る時よりもずっとかかるじゃねえか。


「仮にも魔物だからな。人里に入れるためにはそれなりの手続きがいるのだ。こればかりは文句を言われても困る。」


 そりゃそうなんだろうけどさ…。手続きが終わってやっと中に入れた。リイは俺の使い魔って扱いで中に入ることを許可された。今泊まっている宿では確か使い魔を入れることができるらしいからそれだけが救いだ。なんだかんだ言ってあの宿は安いから助かる。


「そういやどのくらい草採ったのか数えてなかったな。ギルドによる前に一回荷物の整理がてら宿に戻るか。」


 宿に戻る途中で道行く人からの視線を感じた。そういや使い魔って普通はローブを着た魔法使いが連れているものなのに俺は七本も剣をぶら下げてるから目立ってるんだろう。


「いっそ見せびらかしてやるか、なあ、リイ?」


「コーン!」


 肩にいるリイを撫でまわす。リイも気持ちよさげに甘えた鳴き声を出す。女性陣からの羨望の視線が熱いね!

 リイといちゃつきながら宿に到着する。宿のおっちゃんが声をかけてくる。


「らっしゃい、ってお前か。どうしたんだその白いの。」


「いいだろ、リイってんだ。今日依頼を受けて森に行ったらであったんだ。」


「白色のキツネなんざいたかね。」


「そこは置いておけよ禿るぞ。それよかこいつと今までの部屋に泊まっても大丈夫か?」


「おう、いいぞ。ただその場合は毎日掃除のために宿の人間が部屋を訪ねるがいいな?」


「構わねえよ。んじゃ、しばらく休むぜ。」


 おっちゃんとの会話を切り上げて部屋に戻る。どっかりとベットに腰を落とす。リイは部屋が珍しいのかウロウロしている。


「まずは採った草の整理か。その次にそうだな、リイのための荷物も必要になるし道具屋も見ておかなきゃだしそのためには金が必要だしあのクマとリイについてギルドの図鑑で調べなきゃだし…結構やること多いな。あといい加減偽造貨幣も使わなくちゃ。あ、鑑定魔法についてもやらなきゃ。」


 正直やること多すぎるだろ。でも全部必要なことだしなあ…図鑑とか本屋に売ってないか?でなきゃ記録魔法でも作って完全コピーを作ろう。


「何はともあれまずは草の整理からだな。」


 しかしこれが意外とめんどくさい。なにせ無計画に無差別に手当たり次第引っこ抜いたから俺が知らない草まで混じってる。見た目で分けるにしても俺は素人だから細かな違いが分からない。

 と、ここで思いついたのは亜空間にあるものをリスト化できないかということだ。それは案外簡単にできて、目の前にRPGでよくあるようなアイテム欄を他人には不可視の状態で出現させてしまっているものの整理を始める。草の内訳は


七日草 326束(依頼分を除く)

毒草  217束

麻痺草 165束

刺激草 114束

黄金草 56束

銀草  78束

銅草  97束

魔力草 5束


といった具合になった。

 

 七日草と毒草と麻痺草はもはや説明の必要はないだろう。七日草は前に確認した通りだし、毒草と麻痺草は字面のままだ。だがそれでも他の草の種類はわからなかったのでそれぞれ鑑定してまとめるとこうなった


刺激草 傷口に塗りこむとかなりしみる。毒草や麻痺草と混ぜると効果が上がる。

黄金草 食べると筋力が上がる。

銀草  食べると防御力が上がる。

銅草  食べると敏捷力が上がる。

魔力草 食べると魔力(MP)が回復する。


 まじでゲームみたいな効果だな。こういうのってポーションとかキノコとかにあるんじゃないのか?でも刺激草っていうのは楽しそうだな、そのうち合成とか試してみよう。


「魔力草って貴重だったりするのか?他に比べて収穫量が以上に少ねえな。だとしたらラッキーかも。」


 そう、俺には複製(コピー)があるのだ。生き物は無理でも草くらいならいけるかもしれない。そうすれば貴重な魔力草を売りまくってウハウハだ。


「それをするにもまずはギルドだな。七日草はとりあえず銀貨一枚分換金して道具屋をみてくるか。リイ、いくぞ。」


「コン!」


 リイを肩に乗せつつギルドに向かう。ギルドの中に入ると右側の席で数人の冒険者らしき連中が騒いでいた。依頼終わりだろうか。それにしてもガルクたちと出会わないな、ここを拠点にしてるって話なのに。


「依頼の達成を報告しにきたんだが。」


「あ、はい。…キャア!」


「おい、どうした?俺は何もしてないぞ。」


「かわいいですね~…て、すいませんでした!この子がとてもかわいかったものですから…。」


「そういうことか。こいつはリイっていうんだ。今回の依頼で森で会ってな。」


「うらやましいですね、こんなかわいい子を捕まえられて。あ、すいませんでした。依頼の報告ですよね。」


「そうだ、七日草20束と追加で100束ある。確認してくれ。」


 俺は影から七日草120束を取り出してカウンターに置いた。なにやら受付の子が驚いている。


「え?影から?へ?」


「なにを驚いてるんだ?これをできるやつは見たことないのか?」


「ええ…私は魔法に詳しいわけではありませんから詳しくはわかりませんが一般的に影から荷物を取り出すという魔法は聞いたこともありませんでしたから。それに…。」


「こんだけ剣ぶらさげているやつが魔法なんて。てか?」


「はい。申し訳ありませんがそう思ってしまって…。」


「ま、しゃあねえわな。それよりも早く依頼の確認してくれ。」


「あ、そうでした。それでは確認しますのでしばらくお待ちください。」


 受付の子は七日草を数えだした。自分で出しておいてあれだが、数えるとなると相当大変だな。ま、どうでもいいけど。


「おい、てめえ。」


 あーでも待つのってホントに退屈だな。そうだ!リイで遊ぼう、モフモフしよう。


「おいこら聞いてんのか!」


 ん?どうした、リイ?そんな後ろと俺をチラチラ交互に見て、『いいの?』みたいな顔をして。


「ふざけてんじゃねえよ!新人のくせに!」


 後ろから何か飛んできたが俺は避けない。俺を傷つけられるようなものなんてここにはないし。


「いってえ!くそ、生意気に装備だけは一級品かよ!」


 何かが後頭部に当たったんだが軽すぎて何も感じない。そういえば俺って頭に何かかぶってたっけ?防具ってつけてないところまでカバーできたっけかな?


「このクソガキ、こっち向きやがれ!」


 肩を掴んで振り向かせようとする何か(・・)があるがムシムシ。後ろでゴミが転がってるのにイチイチ振り向いてなんていられないし。


「くっそなんでだ!なんでビクともしねえんだよ!」


 さっきから後ろがうるさいな、俺は静かなのが好きなのに。ちょっと注意(・・)してやるか。


「おい。」


「やっとこっち向きやがったか、このクソガキ!今更謝ったって…」


「弱くて頭が悪い上に騒ぎまくるとかバカまるだしだからやめた方がいいぞ。」


「んだとこらあ!てめえこっちが下手に出りゃ調子に…」


「ゴミ掃除っと。」


 俺はちょっと大きなゴミ(・・・・・・・・・)を掴むとそのまま建物の隅にあるゴミ箱に投げ入れた。よっしゃ入った!飛んでる時に何か言ってたけどまあいっか。


「120っと。確かに確認しました。ってどうかしました?」


 どうやら数えるのに夢中で今のゴミ掃除(・・・・)のことは聞こえなかったみたいだ。いい神経してるな。少し気に入った。


「いや、なんでもない。それで依頼は達成か?」


「はい、それではこちらが報酬の銀貨1枚と銅貨20枚になります。」


「サンキュー。」


 俺はギルドを出た。買い物が俺たちを待ってるぜ。周りの驚いたような視線はリイと一緒にいるからだと思うから気にしない。


「んじゃ買い物に行くか。」


「コン」

 

 一人と一匹、街へくりだす。





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