58 センダイ港の攻防
アリアはセンダイの街の港に着いた。ここは入り江になってる。
私はアリア用ドロンに映る映像を見てる。
沿岸には通常の警備隊員だけ。広い港から非戦闘員を避難させると、戦える人間は40人しかいない。
大きな船が7隻。すでに先頭の船から小舟が降ろされ、方々から上陸を試みようとしている。
あらかじめ別の場所から上陸してた40人の魔族も現れた。けん制されて、警備兵は小舟を攻撃できない。
そこにアリアが走って行った。
アリアに並走してる奴がいる。確か決勝トーナメント1回戦で敗退したエルフ女子だ。
ダテ家で士官目的に自分を売り込んだらしい。けど、エルフ至上主義の匂いがぷんぷん。
おまけにシロウから恩人と紹介されたアリアを白い目で見た。
他種族に寛容なダテ家では、この種族偏重タイプを引き取りたい部隊がゼロだった。
けどエルフ女子、あきらめてない。ここで活躍して自分を売り込もうとしている。
「ハーフエルフは引っ込んでいて」
「・・そんな場合じゃないです」
アリアは知った顔を見つけた。
「ヒョウエさん手助けします」
「アリア殿、ありがたい」
シロウの実家、カタクラ家で歓迎してくれた若者が、2人の魔族に果敢に立ち向かってた。
アリアが加勢して、その2人だけは退けた。
けど、その間に最初の魔族11人が乗った小舟が岸に取り付いた。
エルフ女子は、苦戦する警備隊に見向きもせずに精霊を喚んだ。
そして小舟の魔族に火の精霊術ホムラを放った。
しかし、小舟の中にいたヒーラータイプが張った結界に、簡単に攻撃を防がれた。そして飛んできた矢で大きくのけぞらされた。
「どいて下さい」
「ハーフエルフがどうするのよ」
「誰も上陸なんてさせない。オユキサン、お願い」
『あいよ。あたしの出番だね』
いきなり3メートルで白装束の召喚獣オユキサンが現れた。
「なっ、精霊・・。こんな大きなの見たことない」
「みなさん、沿岸から離れて下さい」
アリアはエルフ女子に返事をせず、警備兵に呼びかけた。同時にオユキサンが迎撃態勢に入った。
『海から敵がきてるね。あるじ様、小舟と岸辺を凍らかすよ』
オユキサンが白い息を吐くと、近付いた小舟の周囲を凍らせた。
オユキサンの射程60メートルに入った4艘の小舟を立ち往生させた。
「ありがたい」
「シロウ様が言っておられたアリア様の隠された力とはこのことか」
先陣の魔族は止めたけど、大きな船が近付いてくる。
港に接岸して一気に多人数で攻める気だ。
アリア、無理しないでくれ・・
そんな私の言葉が聞こえてないのに、アリアはドロンに向かって何か言ってる。
「・・サラ、大丈夫だよ。私はあなたに大きな力をもらったから」
アリアは岸辺に立った。
アリアめがけて弓兵の放った矢が飛んでくる。
けど、ガギンって音がして全部の矢がアリアの前で止まった。オユキサンの氷の障壁だ。
『守りは任せておくんなさい。さぁて、あるじ様、大技の披露だよ』
大きな船はすでに港から50メートルまで迫った。
アリアは右手の指2本を前に突き出して、あえて『正しい呪文』を唱え始めた。
「雷雲の中に住みし神の子よ。閃光の力を秘めし者。その猛々しき姿を現し我に力を貸したまえ」
コメント欄
『とうとう出るぞ』
『ああ、寝ないでリアルタイム配信みて良かった』
『いけアリアちゃん』
『敵を倒してナメたエルフを驚かせてやれ』
「え、そ、その呪文は、まさか・・なんでエルフ族が・・」
女エルフの声が震えてる。
次の瞬間、エルフ女の声がかき消された。
大きな船の真上に逆さ魔法陣が浮かんでバチッ、バチッってスパークし始めた。
「イカヅチ!」
バリバリバリバリって音がして、稲妻が大きな船のマストに落ちた。目に見えるくらいの電気の帯が水面を走り、小舟も感電させた。
大きな船のマストが黒く焦げてプスプスいってた。少しの間は煙を出してたけど、いきなり船体から火が出た。
そうなのだ、「イカヅチ」は雷。雷魔法を使える魔法使いがレベル85になって、やっと習得できる。
さらに、魔力の練り方を覚えて呪文を正しく詠唱する。そしてようやく発動する。
だから強力なんだ。
女神印の力をもらったアリアは、レベル60で覚えた。そしてただ「イカヅチ」と言えば、こんな恐ろしい技を発動できる。
詠唱は女神印の異常性を隠すため。
みんな、大きな口を空けて驚いている。
「さあ、何とかなりそうです。魔王軍を退けましょう!」
アリアが大声を出すと警備隊のみんなが我に帰り、浮足だった魔族を攻撃し始めた。
アリアとオユキサンは、ビリビリの魔法、足元の凍結で敵の動きを阻害。サポートに徹した。
やがて大きな船6隻は、出撃しようとした小舟を回収し去っていった。
「おお、助かったぞ」
「我らの勝利だ」
「アリア殿のお陰だ」
「いいえ、みんなの勝利です。少人数でも勇気を持って戦ったみなさんが、街を守ったんです」
アリアが、沿岸警備隊のみんなに囲まれて勝利をわかちあってる。
「・・良かったな、アリア」
私は自分の戦いが目の前に迫ってるのに、呑気に呟いた。




