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第2話 ~全霊力を振り向けないと、この場にいる全員が死ぬ事になりますよッ~


「ヨハネス様」


 不意に傍らに立つ術士の声が聞こえ、ヨハネスは詠唱を止めて顔を向けた。


 そこには精神を集中させているであろう数多の術士達と、彼らを率いる若い女性が立っている。


 彼女は動物を彫り込んだ錫杖が握り、その瞳と同じく群青色の修道服に身を包んでいた――


「どうしました、エイシアさん」


 ヨハネスが声を発すると、彼女がゆっくりと中空を指差していく。


「上空に何か見えます。あれは……」


 彼女の声を聞き、ヨハネスは視線を向けた。


 空には暗雲が立ち込めており、そこに暗い紅色の輝きが放たれている。


 そして両眼を凝らすと、それが舞空している人影であることに気づく――


「――エイシアッ、すぐに攻撃目標を変更しますっ、あの宙に浮く少女を狙うのですッ」


 とっさにそう叫びながらエイシアへと視線を戻す。


 眼前に立つ副官の女性は驚愕し、こちらの意図を判じかねる様だった――


「猊下、それは一体――」


「聞こえませんかッ、あの娘を撃滅するんですっ……全霊力を振り向けないと、この場にいる全員が死ぬ事になりますよッ」


「は、はい……ッ」


 若き副官が当惑した声音を発しつつも、手にした錫杖を高く掲げた――


「ヨハネス術士隊、大神官様と霊力を連携せよっ、全員、超高位秘術の詠唱開始……ッ」


 副官である弟子の声を隣で聞きながら、ヨハネスは強く眼を閉じた。


 同時に自らも術句を紡いでいく。


 そのまま精神を集中させるに従い、身体の奥底で体温とは違う熱を感じる。


 仲間の術者達の霊力が、一気に自分へと注ぎまれているのが分かった――


――この霊力を使えば、あの超高位秘術を発現させれるはず……ッ


 ヨハネスが静かに眼を開けると、青い輝きが自らの全身から湧き上がっているのに気づく。


 周囲には手勢の術士隊から発せられる大詠唱が響き渡っていた。


 やがて青い煌きは百人術士隊をも包みこんでいく。


 この場にいる全員の霊力が連携したのだ――


「超高位秘術――」 


 すかさずヨハネスは言葉を発した。


 直後に自分達を包む青い輝きが、上空へと立ち昇っていく。


 その様はまるで大きな壁だった。


 やがて光は部分によってさらに広がり鱗をもつ身体や翼となり、また細長く伸びて尾を形づくりながら生き物の姿となっていく。


 今や壁画や書物の中でしかその存在を確認できない、かつてこの大陸に存在していたとされる伝説上の怪物――


――竜の姿だった――


「発現せよっ【蒼幻竜】ッ」 」


~登場人物~


 ヨハネス……リステラ王国の大神官であり、メイ術士学院の校長。術士。男性。幻の蒼き竜を召喚する超高位秘術の使い手


 エイシア……リステラ王国の高等神官。ヨハネス率いる術士部隊の副官であり術士。女性

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