第26話 ~衝撃剣【連撃】ッ、いッけえェェ――ッ~
「前方に術戦士隊を発見……っ」
不意にウォレンの声が聞こえ、ノイシュは彼が指し示す方向に顔を向けた。
そこに幾十名もの術戦士で構成された大隊を視認する。
向こうもこちらの接近に気づいているらしく、素早く隊列を組んでこちらの行く手を阻もうとしてくる――
「僕がやるっ」
とっさにノイシュは声を発し、続いて意識を集中させながら術式を組み始めた。
やがて身体から仄かな輝きが湧き上がってくるのを感じた。
仲間達が疾走しつつ左右に分かれていき、一気に見通しが良くなっていく。
すかさず大剣を抜くと脇へ大きく引き絞った。身体にまとった霊力を刀身へと伝えていく――
――衝撃剣……っ
ノイシュが大剣を勢いよく振り払おうとした瞬間、思わず眼を細めた。
刀身に宿る光が余りに激しく煌めいている――
「はあああァぁッ」
とっさにノイシュは素早く剣を薙ぎ払った。
瞬く間に切っ先から旋風が湧き起こり、衝撃波が放たれていく。
すぐに刀身へと視線を戻すと、そこには未だ光が強く輝き続けていた。
すぐさま刀身を振り戻していく――
「衝撃剣【連撃】ッ、いッけえェェ――ッ」
ノイシュが流れるように大剣を斜めに振り下ろし、水平に払う度に不可視の衝撃波が次々と湧き起こっていく。
それらが瞬く間に砂礫を巻き上げながら敵戦士隊へと殺到していく――
「うわぁああ……っ」
「があァァ――ッ」
刹那の後、衝撃波を浴びた敵術戦士隊が次々と吹き飛ばされていく。
第一列目、二列目と隊列が崩れていき、さらに巻き添えとなって薙ぎ倒される戦士達も続出した。
やがて中央に扇状の空間が広がっていく――
「――全員、このまま突進するぞっ」
マクミル隊長の声が耳に届き、ノイシュは再び駆け出していった。
仲間たちとともに隘路へと突入し、砂煙が舞う中で左右を見渡すと手傷を負ってうめく敵戦士達が僅かに視認できた。
もしも全力で衝撃波を放出させていたら、きっと彼等はひとたまりも無かったはず――
――エルン、君はどれだけの力を秘めて……っ
「――見えましたっ、右手方向に白獅々の紋章です……っ」
ノヴァの声が耳に届き、ノイシュが振り向くと徐々に薄れてゆく砂煙の中から朝焼けの情景を視認した。
更に眼を凝らすと僅かに巨大な軍旗が見える。赤地に綴られているのは、確かに白い獅子の紋章――
――あれこそがレポグント軍の本隊……っ
「よしっ、このまま突撃するぞっ」
マクミルの鋭い声を聞き、ノイシュは一人うなずいた。
確かにこの脅威的な速度を保ったまま突き進んでいけば、程なく敵軍本隊へと迫ることができるはずだ――
「前方奥、新たな敵部隊を発見……っ」
~登場人物~
ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手
マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手
ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主
ノヴァ・パーレム……ヴァルテ小隊の隊員で、術士。女性。様々な攻撃術の使い手
ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手
エルン・ルンハイト……ノイシュおよびミネアの義妹。術増幅という超高位秘術の使い手




