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第21話 ~これより女王陛下が参るっ、我らとともに戦うおつもりだっ~


「トドリム様、後方から……ッ」


自らの名を呼ばれ、トドリムは頬に付いた血を拭いながら振り向いた。


いつの間にか城門が開け放たれており、門前では術戦士達が隊列を組んでいる――


――聖都の守備隊までもが出撃するなんて、俺は聞いてない……っ


 不意に整列する彼らの頭上に一本の軍旗が掲げられていった。澄んだ青色の布地に、純白の一角獣が綴られている――


――白色は、王族の象徴――


「あ、姉上……っ」


 思わずそうつぶやいた直後、視界に映る術戦士達が行軍を開始した。真っすぐにこちらへと向かってくる――


――ともに戦うつもりか……っ


 トドリムは強く唇を引き結ぶと、顔を戻しながら剣を振り上げた――


「皆の者、よく聞けっ」


 大喝とともにトドリムは周囲を見渡した。


味方の戦士達は眼前の敵軍に気を配りながらも、僅かに視線をこちらへと向けてくるのが分かった――


「これより女王陛下が参るっ、最前線にて敵軍と相まみえるおつもりだっ……」


 途端に周囲の味方戦士達から驚きと歓声が湧き上がってくる。


 当然の反応だろう――


「陛下の御前で勇敢な戦いを見せた者には、必ず褒賞をお約束されるっ……背中を向ける者には、同等の罰が下されるだろうっ」


 トドリムは手にした剣を高く掲げた。


「これで聖都に残した家族の心配は、もう要らないはずだ。存分に戦えッ――」 


 瞬く間に手勢の部隊から、次々と喚声が上がっていく――


「陛下が助けに来て下さる……っ」


「我らの働きを、お見届けに……ッ」


そう告げて再び立ち上がる味方の姿や安堵した表情でその場に斃れる戦士達を、トドリムは眼を細めて見据えた――


――姉上、ともに最期を迎えましょうっ……


 トドリムは再び前方に顔を向けると、自らの手勢が組んだ隊列を崩しながらこちらへと迫る敵戦士達に眼をやった――


「女王陛下っ、万歳っ……」


~登場人物~


 デドラ……リステラ王国に君臨する女王。女性。


 トドリム……王弟であり公爵。リステラ王国軍の術戦士隊の大将。男性。


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