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第3話 ~女王陛下、謁見なされます~


 自らの靴音を耳にしながらノイシュは廊下を進んでいった。等間隔で連なる窓からは陽差しが一杯に差し込まれ、床石や外壁に至るまで白色で彩られた城内をより一層輝かせている。


ふと脇の壁に眼をやると、そこには威厳をたたえた歴代リステラ王の肖像画がかけられていた。彼等の焦点は常にこちらへと向けられておりこの王城にふさわしい人物かを見定めてくる。


つまり、この通路は王族の待つ場所へと続いているという事か――


「ノイシュさん」


 不意に自らの名を呼ばれた事に気づき、前方へと視線を戻す。そこには縹色の法衣を着込んだ御仁が黄金色の大扉の前で佇んでいる。


――ヨハネス猊下……


 大神官に向かってノイシュは再び歩み始めた。彼の前でそびえるあの扉こそ、おそらくこの向こうに王国の統治者が鎮座しているのだろう――


「ヨハネス様、お待たせして申し訳ありません」


 大神官の傍まで来たところでそう声をかけると、不意に彼が怪訝な表情を浮かべるのに気づく――


「エルンさんは、どうしたのですか」


 その言葉に胸の鼓動が早まっていくのを感じながらも、ノイシュは微笑んでみせた。


「ヨハネス様のお屋敷で、留守をお願いしました」


 そう告げるとつい顔を背けてしまった。あれからほどなく滞在していた宿舎へと使者が迎えにやって来て、一旦ヨハネスの屋敷へと案内された。


そこで身なりを整えた後に登城したのだが、その際に自分が戻るまでエルンを預かるようヨハネス邸の侍従長にお願いしたのだ。彼女は一緒にいたいと何度も訴えてきたけれども――


「なぜです」


 大神官の語調がどことなく強く感じられ、ノイシュは大きく息を吸った。何とか平静を保つと静かに頭を垂れる。どうしてもエルンをここに連れてきたくなかった。もう義妹を、戦いに巻き込みたくないんだ――


「申し訳ありません。あの歳で女王陛下との謁見は無理かと思い……」 


「そうですか、分かりました」


 大神官の穏やかな口調が頭上に注がれ、ノイシュはゆっくりと顔を上げた――


「女王陛下、謁見なされます」


 大扉の奥から声が発せられるのが聞こえ、ノイシュは急いで視線をそちらに向けた。黄金色の扉の脇に控えていた衛兵二名が素早く取っ手を掴み、両手で引いていく。


徐々に開いていく扉の様子を見据えながらノイシュは唾を呑んだ。もちろん女王陛下と謁見するなど初めてだった。先ほどとは違う緊張が胸に湧き上がる――


「ノイシュさん、参りますよ」


~登場人物~


 ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手

 

 ヨハネス……リステラ王国の大神官であり、メイ術士学院の校長。術士。男性。


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