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第15話 ~激戦~


「はあああぁぁッ……」 


 不意に力強い気合いを耳にしてノイシュが顔を向けると、戦士服を(ひるがえ)して敵戦列に肉(はく)するマクミルがいた。


 直後に彼と対()する敵兵達の身体が一(せん)光芒(こうぼう)が四(さん)するや骸戦士(むくろせんし)達もまたマクミルに向かって突進(とっしん)を始めた。


 きっと彼等も敏捷(びんしょう)増強術を使ったのだろう、互いの動きが影を引くほど素早い――


 やがて最前列の死霊(しりょう)兵とマクミルがともに攻撃の間合いに入り、武具を激しく打ち合わせる。


 直後、けたたましい金属音がして火花が()き散った。


 マクミルが次(げき)を打ち込もうと構えた途端(とたん)、すかさず他の(むくろ)戦士達が隊長へと()ちかかっていく。


 とっさにマクミルは身を引くと飛び交う剣閃(けんせん)回避(かいひ)、体勢を立て直す。


 双方(そうほう)とも再び攻撃の(すき)(うかが)うべく対峙(たいじ)するが、相手は二体がかりだ。これでは圧(とう)的にマクミルが不利となる――


 次の瞬間(しゅんかん)、ノイシュは自分が燐光(りんこう)に包まれている事に気づいた。


 燃えるような感(しょく)が身体に満ちていき、力としか形容できない何かが(みなぎ)っていく――


「ノイシュ、どうかマクミルを助けて……っ」

 少女の声に振り向いたノイシュは、同じ光芒(こうぼう)に包まれたミネアが両手をこちらにかざしているのに気づいた。


――霊力放出術……っ 


 ノイシュは眼を細めて義妹(いもうと)を見()えた。


「ありがとう、ミネア」


 ノイシュは再び激戦地へと双眸(そうぼう)を向けて術の詠唱(えいしょう)を続けた。


 やがてこれまで以上の強い光のきらめきが自らの身体を(おお)っていく。


 視界の先では死霊兵の斬撃(ざんげき)がマクミルに次々と襲いかかり、隊長の(かた)すね、脇腹といった()所を次々と(かす)めていく――


 ノイシュは燐光(りんこう)が刀身へと伝っていくのを視認(しにん)しつつ、とっさに(こし)を落とすと大剣を大きく引き(しぼ)った。


 直後、敵兵の剣がマクミルの大腿(だいたい)に深く突き刺さるのが見えた――


「ぐああぁッ……」


 マクミルが(ひざ)から(くず)れ落ちていく。


 一斉に死霊兵達が手負いの戦士へと殺到(さっとう)していった。


 同時に、ノイシュが大剣を一気に()(はら)う――


「マクミルッ、かわせ――ッ」 


 ノイシュが剣を横に振り切った刹那(せつな)の後、大剣から巨大な(せん)風が吹き()れた。


 轟音(ごうおん)とともに衝撃(しょうげき)波が生じて敵兵との距離(きょり)(ちぢ)めていく。


 不意に敵戦士達が動きを止め、(せま)りくる不可視(ふかし)の波動に顔を向けた。


 マクミルが身体を(ねん)転させながらその場を離れる――


 次の瞬間、衝撃波が死霊兵達を呑み込んだ。


 音もなく死霊兵の甲冑(かっちゅう)(くだ)かれていく。


 (あら)わになった()体の肉が裂け、血が飛び散る間もなく四散していく。


 解体された死霊兵の四肢(しし)はそのまま(れっ)風に巻き上げられていき、気がつくと残っているのは(わず)かな肉片や血痕(けっこん)だけだった――


――ミネア、君の霊力は一体……ッ


ノイシュは無意識のうちに自分の(てのひら)に眼をやり、そして震えているのに気づく。


 とても自分が放ったとは思えない程の()力だった――



~登場人物~


ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の(じゅつ)戦士で、剣技と術を組み合わせたじゅつけんの使い手


ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹いもうと。女性。ヴァルテ小隊の術戦士で、れい力を自在にあやつる等の支援術の使い手


マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 エスガル……レポグント王国の大神官。バーヒャルト救援(きゅうえん)部隊の指揮官。男性。術士。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ミネアの霊力は尋常じゃない様子……すごいけど、でもミネア本人は戦いを望んでるわけじゃないし……複雑だなぁ(;´・ω・)
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