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やってきた悪魔

 ◆


 ヴェンゼロスを追放してから十日余り経ち、十二月に入っている。

 冬の風は冷たく、波は高い。


 エル諸島から、ゼロスが出撃したという情報が入った。

 時期的なものから、ヴェンゼロスが彼に情報を齎した結果であることは間違いないだろう。

 それにしてもヴェンゼロスとゼロス……名前が紛らわしいな。

 日本人だとしたら、孝太郎と太郎みたいなものか。

 そういう俺の名前も「ス」で終っているから、日本人で例えれば「〜郎」みたいなものだけれど。


 とにかく、ここまでは予定通りだ。

 この季節、風は北から南へ流れ、潮流は西から東へ流れる。

 したがってアイオスから出航する艦隊の船足は遅く、反対にエル諸島から来るゼロスの足は速い。

 だからこそ、敵は自らの優位を確信している。強烈な一撃を、こちらに見舞うつもりだろう。

 俺は五日間そんな敵の攻撃を、のらりくらりとかわす。それだけでいい。

 それが可能であるかどうかは、ヴァレンスの用兵に掛かっている。

 だから俺は先日、彼を部屋に呼び出して聞いた。単刀直入に――だ。


「出来るかな?」


「兵力は五分です。正面切って戦っても、負ける相手じゃありません」


「地の利は無いよ」


「関係ありません」


 仏頂面で言うヴァレンスには、少し不満があるようだった。

 暫く無言で待っていると、彼は続けてこう言った。


「どうして、そんな回りくどいことを。ヴェンゼロスもゼロスも、殺せばいい。俺は裏切り者が一番嫌いだ」


「無駄な血を流す必要は無いさ。本当は戦わずに勝つのが最上だけれど、今回はそうもいかないからね」


「提督は甘い。一度叛いた者は、何度でも叛くぞ」


「それなら何度でも屈服させるさ、面倒だけどね。そうしたら、そのうち諦めるよ。はは」


「笑い事じゃないぞ、提督。俺はアンタを心配しているんだ」


「ヴァレンス、私の目的はマーモスの統治にある。その為に設定した戦略目標は、マーモス諸島における海賊団の壊滅だ。しかしそれは、全てが武力に頼る訳じゃない。

 まず第一段階において強さを見せつけ、恐怖心を植え付けた。次にマーモスの島民を慰撫し、安心させた――つまり、味方に付く事の利を教えたんだ。その次は敵対勢力の結束を崩し、最後に壊滅させる」


「じゃあ、これから結束を崩すと?」


「まあ、そうだね」


「意味が――分からない」


「つまり――ゼロスは救出しようと思っていたナナが、こちらに付いていたことに衝撃を受けるし、その情報を齎したヴェンゼロスの真意を疑うことになるだろう。

 すると残った海賊達は、こう思う――ヴェンゼロスが裏切った。ナナも。次は誰だ? お前か? とね」


「疑心暗鬼……そういうことですか?」


「そうだね。特に、ニコラオス諸島のトリスタンとイラペトラ諸島のエリティス――この二人の関係を崩し、各個に撃破する。これにて海賊団は全滅、全ては予定通りってところかな」


「そんなに、上手くいくのか……?」


「さあ」


「さあって……アンタ」


「別に、上手くいかなくても構わない。その時には、別の手も用意してある」


 ヴァレンスが俺の顔をまじまじと見つめ、額に汗を浮かべている。

 むむ……ヴァレンスってよく見たらカッコいいな。

 無精髭も似合ってるし……いいな、俺、髭がぜんぜん生えないからな……。

 まあいいか、俺は観葉植物になるんだし、髭なんてどうでも。


「提督は、どこでそんなことを覚えたんだ? そこに、書いてあるんですか?」


 机に乗っていた本を指差し、ヴァレンスが眉を顰める。


「ん、ああ……コレね……書いていないことも無い、かな」


 今、机に乗っているのは、この世界の兵法書だ。

 内容の深さに関しては、クラウセヴィッツの戦争論や孫子に及ぶべくも無いけれど、魔法を効果的に使う方法など、この世界ならではの事柄も書いてあった。

 だからそこに注釈を付け、応用しようと試行錯誤している最中なのだ。

 ヴァレンスが余りにもじーっと見ているので、俺は仕方なく「読む?」と言って貸してあげた。

 

 そして今日。

 目の下に隈を作ったヴァレンスに先導され、俺は港の一角へと向かう。

 そこには既に兵士達が整列しており、俺はすぐ、壇上に上った。出撃前の訓示を述べる為だ。

 くだらないことだと思うけれど、兵士というものは指揮官の言葉でやる気を出したり出さなかったりする。

 いわゆる大義が無ければ、人は人を殺せない。

 だから俺は、兵士達に自分が正義だと信じ込ませる必要があるのだ。

 しかしどんな理由であれ、殺人が正義になることは絶対に無い。

 そういう意味で俺の訓示は大体の場合、詭弁である。

 けれど今日は違う。俺は本心から、こう言った。


「みんな、今回の戦いは五日間、逃げ回るだけでいい。ちょっと大変だけれど、それで勝てるから私を信じて欲しい」


「しーん」とした。沈黙だ。

 また適当なことを言ってる、とでも思われたかな?

 だが、暫くして歓声が上がった。 


「「おおーっ!」」


「「提督万歳ヴィーヴァ・プラエトルナーワリース!」」


 お、なんだか妙に士気が高いな。

 俺が首を傾げていると、隣に立つテオドラが肘で俺の腕を小突いた。


「常勝不敗の天才――兵達の噂です。その提督が言うんだ、みんな信じます」


「いや、この前捕まったしね……そのうち負けるよ、多分」


「アレクシオスさまは、絶対に負けませんっ!」


 テオドラさまに睨まれた。

 何その自信、逆に恐いんですけど。


「この前のアレもね、策だったと、みんなが噂しているよ」


 目深に被ったローブの奥で、ディアナが瞳を怪しく輝かせている。


「噂の元凶は、お前か……お前が常勝不敗とか言ったんだな?」


「フヒヒ……」


 舌を出しても可愛く無いぞ……男のクセに。


 今日、ここから出撃する艦船は三隻だ。

 指揮は一番艦がヴァレンス、二番艦がドムト、三番艦がアイーシャとなる。

 三番艦は以前ヴェンゼロスが座乗していた船で、帝国の軍艦より少し小さいけれど、戦闘能力に大きな差異は無い。


 今回アイーシャがこちらの艦隊と行動を共にする理由は、別働隊であるナナに対する人質の意味合いもあった。

 以前ヴェンゼロスに裏切られたという経緯から、ディアナが人質を取れと主張したのだ。

 もともとリナとルナがこちらの身内であっても、それだけでは足りないと言うのだ。


 俺としても、今回の作戦は完璧を期したい。

 その意味でも彼女の意見を取り入れ、このような布陣とした。


 また兵士に関しても信頼が置けるよう、三番艦には俺の私兵を入れている。

 そこにはレオン・ランガーが率いる元帝国近衛兵四十二名が、斬り込み隊として乗り込むことになっていた。

 

 さて、問題はこの時点で発生した。

 俺は、そこに妙な人物が混ざっているのを見つけたのだ。

 それは帝国近衛兵の軍装でありながら、兜を目深に被り、しかも面頬をして顔の大部分を隠している。

 しかし長過ぎる金髪が肩の辺りに見えて、そのまま鎧の前面に流れていた。

 特筆すべき特異点としては、腰に佩いた直剣グラディウスとは別に、背中に大剣を背負っていることだろう。

 しかし兵士全体から見れば小柄で、その剣を扱えるのか怪しい程だ。


 俺はこんな恰好をする人間を、ただ一人だけ知っている。

 そこで隣に立つディアナに目配せをして、ちょっと聞いてみた。


「なあ、ディアナ、あれ……」


「あー……うん……えんじゅだね」


「やっぱりそう思う?」


「思う……ていうかさ、アレでバレてないと思ってるんだよ。バカって凄いね」


「あとさ、その隣にいる人って」


 ガブリエラの隣に並ぶ人物は、他と変わらぬ佇まいがならも圧倒的な圧を放っていた。

 間違いなくあれは、剣聖のセルティウスさんだ。


「剣聖だね……フヒヒ。あの人も脳筋だから」


「やっぱりか……」


 本来はガブリエラの目付役だろうに、どうして一緒に来ちゃったんだよ。

 しかし、確認している時間は無い。

 俺は剣を掲げ、皆に号令を下す。


「さあ、行こうか」


「「おおーっ!」」


 アイロスの港には剣と盾を打ち鳴らす兵士達の雄叫びが響き、士気は天を衝く勢いを見せた。

 ガブリエラは少し遅れて左右を見渡し、慌てて盾を地面にガンガンと打ち付け、バーンと破壊している。

 相変わらずとんでもない腕力だと思い、俺とディアナは肩を竦めるのだった。

 

 ◆◆


 アレクシオス・セルジュークが出征してからというもの、ガブリエラ・レオにとって平穏な日々は甚だ苦痛であった。

 その一番の原因はユリアヌス皇子が二日と開けず、邸を訪れることだ。

 

 皇子自らの来訪とあっては、流石のガブリエラも丁重に対応せざるを得ない。

 なので大体の場合、剣の稽古や格闘訓練を中断してドレスに着替え、中庭に面した応接間へ移動する。その後は美貌を褒められ続け、馴れない宮中言葉で応じるのだ。

 これはもう、ガブリエラにとって立派な拷問だった。


 それでも彼女が耐えていたのは、アレクシオスとの約束があったから。

 少なくとも帝都の情勢をいち早く知る為には、彼女のように上流階級に属す者の存在は欠かせない。

 それに公爵令嬢が帝都を離れることは、さまざまな意味合いで良く無いとの認識もアレクシオスと共有している。

 しかし――あるときガブリエラはリナと話していて思ったのだ。

 

「あれ? リナの方がおれより政情に詳しいんじゃ……?」


 それは当然だった。

 暗殺者アサシンを束ねるリナ・ハーベストは、あらゆる所に闇の耳を持つ。

 対してガブリエラは、脳が筋肉で出来た生粋のアホの子。

 その残念な頭脳で皇子やクロヴィスの言葉の裏にある真意を探るなど、百万光年彼方を望遠鏡も持たず、肉眼で見る様なもの。ゆえにガブリエラは、段々と皇子に会う事が億劫になった。

 そしてついに彼女は仮病を使い、ユリアヌス皇子を追い返したのだ。


「熱が出て湯浴みも出来ない状態なので、皇子殿下に合わせる顔が無い」


 こうメディアに言い含めると、皇子は大人しく帰って行ったという。

 皇子は自らが紳士である事を示したかっただけだが、ガブリエラはこれを大いに喜んだ。

 その後、馬鹿の一つ覚えで病に臥せったガブリエラは、平民の衣服に着替えて街をウロウロしていたと云う。

 

 そんな日々を送るうちに、レオン・ランガーがマーモスから戻ったとの報告が彼女に齎された。

 もちろんガブリエラはすぐに使いを出し、レオン・ランガーと接触を図る。

 それは彼が持っているであろう、アレクシオス・セルジュークからの手紙をもらう為だ。


 使いに出たのは、いつも貧乏くじを引くメディアだった。

 彼女は最初、金竜湾へ向かっている。

 それはレオンの目的が物資の補給であり、積み込みが終れば、すぐにも出発することが分かっていたからだ。

 しかしレオンはおらず、アレクシオスの家へ向かったという。


 メディアがアレクシオスの家に到着したとき、レオンはリナとルナに手紙を渡しているところだった。

 また、口頭でも色々と伝えているらしく、リナが「はい」と「なるほど」を無表情で何度も繰り返している。

 そんな姿が、門を入ってすぐに見えた。昼間なので、大きな窓のある居間にいた彼等の姿は、見る気が無くとも見えてしまう。


 暫く待って扉をノックし、用件を三人に告げると、メディアは頬を上気させた。

 実は本人も気付かないうち、メディアもアレクシオスに惹かれている。

 彼がマーモスでどう戦っているか、ガブリエラが気にするのと同様に興味があった。

 そんな彼女にレオンは微笑み、懐から一通の手紙を取り出した。

 

「丁度良かった、メディアさん。あなた宛の手紙も提督から預かっています」


 破顔したメディアナは、すぐに封を開けて手紙を読む。

 一刻を争う様な手紙だった場合を考慮して――という言い訳を胸に、アレクシオスの言葉をその目で追った。


「拝啓、親愛なるメディア。近頃は寒くなってきたから、ガブリエラのベッドで一緒に寝た方が良いと思います。尚、風邪をひかない為にも、お互いの肌で暖をとる事をオススメします。

 もちろん朝は、お互いのキスで目覚めるのが良いでしょう。また、側に一つだけ観葉植物をおいて下さい。それを私だと思って頂ければ、幸いに存じます」


 内容は、はっきり言って無い。むしろ変態だ。

 いや、変態を通り越して、猟奇的かもしれない。

 しかし恋する乙女の精神は、さらに猟奇的だった。

 そのせいで解釈が歪み、自分に別の男が言い寄らないよう、ガブリエラをガードに付けようとしている――との勘違いをメディアはしたらしい。

 

 これらの情報をメディアが持ち帰った結果は、当然ガブリエラの激怒だった。


「なんでリナ、ルナに手紙があって、おれには何にもないんだ!? メディアにもあったんだぞ!」


 邸の中庭で、藁に着せた金属製の鎧を大剣で叩き割り、吠えるガブリエラに同意する者がいた。


「御意――私に許可も得ず、娘に手紙を寄越すなど言語道断。人としての筋が通っておりませんな」


 セルティウスだ。

 彼にとってメディアは、たった一人の娘である。

 別に彼は娘を政治的に利用しようなどと思う男ではないが、しかし、だからといって娘の恋愛に無関心でいられる訳でもない。

 従って、剣聖も激怒していた。

 もう一つの鎧が、音もなく上下に両断された。

 剣聖が剣を鞘に納めると、“キン”と甲高い音が響く。それを合図に、鎧の上部が地面へと落ちた。


「レオン・ランガーを呼べ」


 炎も凍る程の冷たい声で、ガブリエラが言う。


「御意」


 応えるセルティウスの瞳にも、確かな殺気があった。


 こうして怒りに燃えるガブリエラはメディアを一室へ幽閉し、すぐに使者を出してレオンを招聘した。

 レオン・ランガーも、アレクシオスとガブリエラの関係は知っている。

 当然、挨拶には行こうと思っていたのだが、いきなり呼ばれて、流石に驚いていた。「すぐに来い」とは尋常ではない。


 レオ家の大きな応接間に通されたレオンは、頭上を覆うフレスコ画に感嘆の声を漏らした。

 到着すると、「少し待て」との事だったので、手持ち無沙汰だったのである。

 ガブリエラが部屋に現れたのは、きっちり六十秒後のことだ。

 彼女は湯浴みが終った直後だったのか、薄い白のシャツを纏い、黒いズボンを履いている。

 黄金色の豪奢な髪を後ろで無造作に束ね、一房だけが天を指していた。

 

 ガブリエラは緑色の長椅子に座り、短く「座れ」と言う。

 彼女の青い瞳は怒りを通り越し、もはや半ベソだった。

 そして花のつぼみを思わせる愛らしい唇を開くと――途端に怒鳴り散らす。

 レオンが正面の椅子に腰を下ろそうとした、ちょうど、その時だ。


「なんでおれに手紙が無いんだ! おれのことを何だと思ってる!? おれのことが大事じゃないのか!? 親友なんだぞっ! ……メディアにも手紙があったのに、こんなの、こんなの……あんまりだ……」


 彼女が座る長椅子の後ろで、長身の紳士が大きく頷いていた。

 レオンは、彼が剣聖であることを知っている。

 そしてガブリエラが激怒しており、それと同じくらい剣聖が怒りに震えていることも理解できた。

 ここで迂闊なことを言えば、首と胴を切り離されかねない。

 レオン程の男に、この状況はそれ程の危機感を抱かせていた。


 レオンは脳内で言うべき事と語るべきでない事柄を丁寧に分け、ゆっくりと語り始めた。


「まず、リナとルナには、姉が見つかった件、これを知らせる為に手紙が必要でした。それからメディアどのへの手紙は、その……ガブリエラ閣下の身を案じる内容だと伺っております。

 また、現在提督はマーモス本島とネア諸島を既に奪取され、エル諸島の賊を平らげるのも時間の問題かと……」


 レオンがここまで語った時、音もなく褐色のエルフが彼の背後に立った。リナ・ハーベストである。


「私も、ご報告がありますわ」


 ガブリエラの射る様な視線が、リナに向けられた。


「なんだ?」


「私達の姉が、見つかりました」


「……その話は、今聞いた」


「はい。でも、ご報告したかったのは、もっと別の事ですわ」


「なんだ、回りくどいな。早く言え」


「アイーシャ・ペガサスが生きていました。それが、どうやらご主人さまの奥方になられる由――この情報はミネルヴァさまからの手紙に書かれていたのですが……私、それはどうかと思いまして……だってミネルヴァさまや私、ルナだっているのですわ。これ以上、妾を増やす意味が分かりませんもの」


 この瞬間、分厚いテーブルが割れ、乗っていた茶が宙を舞った。

 レオン・ランガーは慌てて席を立ち、オロオロと盾を探すほか為す術が無い。

 こんなことは、彼にとっても初めての経験だ。

 どんな強敵に会っても決して平静さを失わない彼にしては、実に珍しいことであった。


「ア、アイーシャ姉だとっ! そ、それは嬉しいが! 嬉しいが違う! なんか嬉しくないっ! レオン! おれをアレクの所に連れて行け! 様子を見に行く! じいっ! 行くぞ!」


「御意……ペガサス家のご令嬢まで……何と言う……」


「いや、じい。あいつ、テオドラとも何かをやってるかもしれない……」


「ほう……皇女殿下も……それはそれは……些か悪戯が過ぎますなぁ」


「……そうだ、アイツに節操って言葉を教えてやらなきゃならん」


 こうしてレオン・ランガーは、二人に近衛兵の装備一式――正確にはそれに似せて作った装備を渡し、輸送船に同乗させる事となる。協力しなければ、命は無いと二人の脳筋バカに脅迫されて……。


 しかしアイオスに向かう途上、船上においてレオンには、ガブリエラの本音に接したと思える出来事があった。


「ガブリエラさま……その、いっそアレクシオスさまとご結婚されては如何です?」


「ひゃう? な、ななな、なな、な、なな……身分が、あれだ。身分差だっ! だから無理っ! レオン、変なこと言うなっ!」


「ですが、今回の件で功績を上げれば、アレクシオスさまは子爵となられる。であれば、ご結婚も可能では?」


「し、子爵になるのは、めでたい、それは、めでたいな。なあ、じい! ちょっと、向こうへいったついでに、アイツの仕事を手伝ってやろうか……なぁ!」


「御意……姫が夫人であれば、我が娘が第二夫人となるは道理。もっとも、物事には順序が必要ですが……とはいえ、ふむ……アレクシオスの武勲の手伝い、吝かではありませんぞ」


「そ、そうだな、大事なのは順序だ。では手伝ってやろう、仕方ないなぁ……もうっ! ふふ、うふふ……!」


「ですが、我らが手伝ったなどと知られては、後が面倒ですぞ」


「うむ、分かっている。絶対にバレないようにしないとな!」


「御意」


「……じい。ところでだが、おれが夫人って変じゃないか? 大丈夫かな?」


「変なものですか、嬉しゅうございますぞ。なにせ暴れ者の姫が……姫がご結婚なさるのです」


「そうか……そうだな。アイツだったら、なってやってもいいか……親友だしな……どうせおれ、もう……」


 レオンは海を見つめながら、苦笑した。

 自分は皇帝の近衛である――昔も今も――それを変えるつもりは無い。

 だからこそ、何と言われようと装備を変えていないのだ。

 だが――後宮ハーレムのことまでは知らん。

 そう思いながらガブリエラの横顔を見つめ、そして踵を返した。


「ま、男の私が惚れるのだ。女が惚れぬ道理も無いか……」

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