【29】護衛依頼
執筆に時間がかかった割に短いです・・・。
「本っ当にごめんなさい! 私の護衛が早とちりで襲い掛かっちゃって」
拝む様に謝罪の言葉を口にしているのは、女騎士から姫様と呼ばれていた女性だ。
彼女が叱責と説明をしてくれたおかげで、リスティアーネは渋々ながらも納得してくれたようだ。
「姫様が頭を下げる事はありませんよ! 元はと言えばこの男が姫様に近付いていたのが悪いのです!」
「だからそれは私を助けてくれた結果だって言ってるでしょこの駄女騎士リスティ!」
〝パシーンッ!〟
スナップを効かせたビンタでリスティアーネの頬をはたくお姫様。
はたかれたリスティアーネの表情はどこか嬉しそうである。
「別に気にしてない。俺は助けるつもりはなかったからな。俺はこの二人が助けたいって言うからついてきただけだ」
「なんだと!? 姫様の危機に遭遇しておきながら助けるつもりがないなどと、貴様それでも男か!」
「赤の他人がどうなろうが知った事じゃないね。どうしても助けて欲しいなら、仕事として依頼でも出すんだな」
「貴様ァ! 許さ━━━」
〝パッシィィィンッ!!〟
再び、姫様のビンタがリスティアーネを襲う。
先程よりも力が込められていたからか、リスティアーネの頬には綺麗な紅葉が出来ている。
「はいはい、少し黙ってなさい。さて、ヴィルムさん? 今、仕事であれば助けてくれると言ったわよね?」
「あぁ、仕事ならな」
「えっ? あのお姫様、何でヴィルの名前知ってるのよ」
「あ、そう言えばそうですね」
初対面のはずの彼女がヴィルムの名前を知っていた事に、疑問が浮かぶ二人。
「まずは自己紹介からね。私はルメリア=ヒューマニオ。ヒュマニオン王国の第三王女よ。ヴィルムさんの事は勝手ながら調べさせてもらったわ。とは言っても、この街では有名人みたいだから、情報は黙ってても入ってきたけどね」
勝手ながらと言いつつも、彼女の表情に悪びれた様子は感じられない。
むしろ堂々と胸を張っている。
その際に〝ふるんっ〟と揺れる胸にリスティアーネの目は釘付けだ。
いやそこは普通ヴィルムじゃね?
「アンタが俺の事を調べようが何をしようが、それを咎める気はないし興味もない。だが、それが原因でこちらが不利益を被るのであれば容赦はしない。覚えておけ」
「貴様! さっきから黙って聞いていれば姫様に対して何という口の聞き方だ! そこへ直れ! 今度こそ叩き斬ってくれ━━━」
「黙っていなさいと言ったでしょう、この駄女騎士。 貴女の頭は私の命令すら覚えられない程に悪いのかしら? だったらそう言いなさい。今この場で、貴女の首を斬り落としてあげましょう」
“仏の顔も三度まで”というが、ルメリアは先程までの冗談を含んだ表情を引っ込め、生物を射殺せそうな視線でリスティアーネを睨み付けている。
おそらく最終警告だと感じとったのだろう。
冷徹な声と言葉に反応したリスティアーネは瞬時に姿勢を正すと、まるで石像の如く微動だにしなくなる。
「全く・・・。で、ヴィルムさん。貴方に頼みたいのは、ヒュマニオン王国までの護衛。それと、私の父であり国王でもあるゼルディア=ヒューマニオに会ってもらいたいの」
「護衛の件はギルドを通してくれれば構わない。だが、ただの冒険者を一国の王に会わせたい理由は何だ?」
「父は忌み子でありながら“消滅”から逃れて成長した貴方に興味があるそうよ。部下であるバゼラードの不用意な発言についても謝罪したいと言っていたわ」
(バゼラード・・・、あいつか。狙いは九割方ヒノリ姉さんだな。森への不干渉を約束させたい所だが、失敗した時のリスクが高い・・・。さて、どうするべきか)
ルメリアの返答に含まれていた、聞き覚えのある名前からヒュマニオン王の思惑を推察し、思考を巡らせるヴィルムだが、あまり良い考えは浮かばない。
(やはり今回の交渉は見送りだな。だが、今後の事を考えれば一国の王と面通ししておく事は必要か)
「いいだろう。話は冒険者ギルドで聞く。メルディナ、クーナリア、姫さんの依頼を受ける方向で進めるが、構わないか?」
「もちろんよ。一国の王と面識を持てる機会なんてそうそうないしね」
「私も賛成です!」
「ありがとう。じゃあ、冒険者ギルドで正式な仕事として依頼させてもらうわね」
話がまとまった所で、ヴィルム達はルメリアとリスティアーネを連れて冒険者ギルドへと向かっていった。
冒険者ギルドに着いた後、説明を受けたセリカがすぐにシャザールへと取り次ぎ、五人はギルドマスターの部屋へと案内された。
一国の王女を前にしても、シャザールの柔和な態度に変化はない。
セリカの方はガチガチに緊張しまくっているが。
「話はわかりました。ヴィルムくん達が受けると言うのであれば、この依頼は冒険者ギルドの預りとしましょう。セリカくん、依頼書の作成と受注手続きを頼みますよ」
「ひゃい! すぐに取り掛かります!」
一国からの依頼という、重圧がかかる依頼の処理を丸投げされ、涙目になりながらも仕事に取り掛かるセリカ。
相変わらず不憫である。
セリカを見送ったシャザールは、改めてルメリアの方へと振り向いた。
「さて、ルメリア王女殿下」
「ッ!?」
瞬間、部屋の温度が冷たいモノへと変わる。
「ヒュマニオン王国の方々がヴィルムくんに何を求めているかは大体の想像がつきますが・・・。もしもその要求を無理強いしようとするのであれば、ファーレンの上層部・・・いえ、私、シャザールが敵に回ります。と、ゼルディア様にお伝え下さい」
いつもの穏和な表情は鳴りを潜め、その顔には能面の様な無が張り付いている。
殺気こそ感じられないものの、常人には放つ事の出来ない威圧感がその場を支配する。
ルメリアとリスティアーネもその威圧感に呑まれそうになり、生唾で喉を鳴らした。
「えぇ。貴方の言葉、必ず王へ伝えましょう。勿論、彼に対しても非道な振る舞いはしないと約束するわ」
シャザールの威圧に耐え、しっかりとした口調で返答をするルメリアの精神力は素晴らしいと言えるだろう。
「約束、しましたよ?」
シャザールから発せられる威圧が消え、彼はいつもの柔和な表情へと戻る。
なお、ヴィルムと彼の殺気混じった訓練を毎日の様に受けているクーナリア、その訓練を近場で見ているメルディナはケロッとしていた。
書類の作成と受注手続きに少し時間がかかるとの事で、出発は明日の朝に決めたヴィルム達は、とりあえず解散する事となった。
ファーレンの街で関わった上層部の面々や、世話になった〈飛竜のとまり木〉の女将さんやルルに仕事で出立する旨を伝え、ヒュマニオン王国への旅路に備えるヴィルム達であった。
何に時間がかかったって?
ルメリアの名前が二転三転したからだよ!
更には駄女騎士の名前の方が先に決まっちゃったよ!
レギュラーや準レギュラー予定の新キャラの名前はどうしても悩んでしまう傾向にありますね。
ついにストックが底を尽きましたので、次回からは不定期更新となります。
※週一程度には更新していきたいと思っています。




