【27】ナナテラのオススメ
上手く話を繋ぐ事が出来ずに四苦八苦しました。
ファーレンの街へ帰って来た翌日、冒険者ギルドから呼び出しを受けたヴィルム達は、ギルドの受付に顔を出した。
すっかりヴィルム達の担当になってしまったセリカがにこやかに対応している。
「今回の仕事をこなした事で、昇格ラインに到達しました。おめでとうございます!ヴィルムさんとクーナリアさんは本日付でCランクに昇格となります」
「・・・一昨日Dランクに昇格したばかりなのに早すぎないか?」
「問題ありませんよ。山賊や盗賊の討伐は、本来であればCランク以上の依頼ですから、その分達成した時の昇格ポイントも多いんです。山賊団のアジトの調査及び討伐、死体の処理や盗品の運搬等はそれぞれ別枠の仕事になりますしね。普通なら昇格ラインに達した後、試験として山賊や盗賊を討伐する仕事を受けてもらうのですが、ヴィルムさん達は今回の件で済ませちゃってますから」
早すぎるランクの昇格に疑問を持ったヴィルムだったが、セリカの説明を受けて納得したようだ。
周囲の冒険者達も、ヴィルム達がギルドに入ってきてからは、その噂話で持ちきりである。
「あのエルフの娘がBランクのメルディナさんかぁ。以前は遺跡探索がメインだったらしいかはあんまり見かけなかったけど、やっぱりエルフなだけあって美人だなぁ」
「俺はクーナリアちゃん派だな。あの健気で守ってやりたくなるような雰囲気が堪らねぇ。背中に背負った大斧を振り回して戦うらしいけど、そのギャップもいいよな」
「見た目と人間族達の噂で敬遠してたけど、ヴィルムくんていい男よね。仕事も選り好みしないし、若いのに落ち着いてて頼りがいありそうだわ」
「つーか、たった三人で山賊三十人ほぼ殲滅するなんてCランクレベルじゃないだろ。絶対にAランク、もしかしたらSランクまで上り詰めるかもしれないぜ。あの三人」
冒険者ギルドに登録に来た日に比べれば明らかに好意的な噂が飛び交っている。
「しかしヴィルムの奴は許せん。メルディナさんとクーナリアちゃんを独り占めにするとは・・・!」
「あぁ、メルディナさんとあんなに親しげに話しやがって!」
「羨ましい!俺もクーナリアちゃんに“お師様”って呼ばれてみたいぜ」
ヴィルムに対しては怨嗟渦巻く男達の嫉妬の念が送られているようだったが。
Cランクへの昇格手続きを終えたヴィルム達は、緊急依頼の報酬を渡すという名目で、ギルドマスターの部屋へと案内された。
部屋にはシャザールを始め、ファーレン代表のシエラ、生産系ギルド総括のアッセム、商人ギルドの総括であるナナテラが集まっていた。
「ヴィルムはん!ホンマに、ホンマに助かりました!山賊達に商品を奪われる商人が増えてきて難儀しとったんですわ~」
ヴィルムの姿を確認すると同時に、商人ギルドの総括であるナナテラはその両手をとってブンブンと上下に振り動かす。
彼女の目には涙が溜まっており、ヴィルム達への感謝が本物である事を伝えていた。
「まさか会議で決定した緊急依頼を、その翌日に解決出来るとは思っていませんでした。ファーレンの住民を代表して、貴殿方に感謝を贈らせて頂きます」
ファーレン代表のシエラは深々と頭を下げて礼を尽くしている。
「ワシらの方にも影響が出始めとったからな。流石はヴィルム殿だわい。嬢ちゃん達に贈った武器も役に立ったようで何よりだ」
「なんとっ!? アッセムはん、抜け駆けはアカンて言いましたやろ? 何でウチにも報せてくれはらんかったんですのん?」
「別に抜け駆けした訳ではないわい。嬢ちゃんの武器を探しておったから、ワシの店にある武器を譲ってやっただけだ」
やいのやいのと言い争いを始めるアッセムとナナテラを放置して、シャザールがヴィルム達の前へと移動する。
「騒がしくてすまないね、ヴィルムくん。皆、解決するまでにもっと被害が出ると予測していたものだから、即日解決という結果に興奮しているんだよ」
「いや、役に立ったようで何よりだ。クーナリアにとって良い経験にもなったしな」
「本当に助かったよ。さて、今回の報酬の件なんだけど━━━」
あらかじめ用意していただろう巾着を数袋、机の上に置くシャザール。
「まずは依頼書に書かれていた基本報酬金貨三十枚、アジトの探索及び発見で金貨十枚、山賊達の人数が予想より多かった事で報酬の上乗せ金貨十五枚、死体の処理で金貨六枚、盗品の運搬で一人につき金貨二枚、締めて金貨六十七枚だ」
「・・・確かに」
どうやら一袋につき金貨が二十枚入っているらしく、しっかり数えた後でメルディナとクーナリアに一袋ずつ渡す。
余った七枚は立て替えていた宿代返済分という事で、ヴィルムの懐に収まった。
大金が入った事で、メルディナはほくほく顔、クーナリアは落ち着きのない表情をしている。
「大体アッセムはんは━━━」
「ナナテラ、ちょっといいか?」
ふと、ヴィルムが何かを思い付いたように、未だアッセムと絶賛口喧嘩中のナナテラに声をかける。
「━━━はいはい!何でっしゃろ?ヴィルムはん」
瞬時にアッセムと言い争っていた事を忘れたかのように、目尻を下げてヴィルムの側に移動してくるナナテラ。
自身の感情よりもヴィルム達との繋がりを優先させるその姿勢は、流石商人ギルドの総括といった所か。
「メルディナとクーナリアに服を一式、見繕ってくれないか? 山賊達の返り血で着ていた服がダメになっちまったから、俺からのプレゼントだ」
「そう言う事なら任せといて下さい! ウチの商人魂にかけて、お二人さんの魅力を最大限に活かしつつ、丈夫で動きやすい、性能の良い服を見繕わせて頂きますわ!」
「ちょっとヴィル、いいの?」
「お、お師様、お金も貰いましたし、自分で買えますよ?」
遠慮がちにヴィルムを見つめる二人だが、瞳の奥には喜色の感情がチラついていた。
「おいおい、メルディナ嬢ちゃんはともかく、クーナリアの嬢ちゃんは前衛だろう? 鎧の方が良いんじゃないか?」
アッセムの横やりに、「余計な事を言うな」とばかりに睨み付けるナナテラ。
「クーナリアには鎧でもいいかと思ったんだが、今は体型の変化が大きいみたいだからな。現状は身体作りもまだまだだし、もう少し安定したらアッセムの店に寄らせてもらうよ」
「お師様、その言い方だと私が太ってるみたいで嫌です・・・」
事実、ヴィルムの部屋に真っ裸で突撃したあの日を境に、クーナリアの胸は日に日に大きくなっている。
やはり牛人族の特徴なのだろうが、クーナリア自身は身長が伸びて欲しいらしく、複雑な心境のようだ。
「ふむふむ、クーナリアはんには胸元がゆったりとしとって、動きやすい服、と。メルディナはんは魔法戦闘が主体なようやから、ローブやマントなんかどうでっしゃろ?」
「あ、それならマントがいいわね。弓や投擲された物を振り払えるくらい丈夫な品物はない?」
「それなら先日手に入ったえぇ品物がありますわ。レイジスパイダーっちゅう魔物の糸で作ったマントなんやけど、鉄製の武器程度なら傷ひとつ入らんくらい丈夫ですねん」
すでにナナテラの頭には二人へ贈る服が思い浮かんでいるらしく、品物のアピールポイントを説明している。
どうやらクーナリアの服にも同じ素材が使われているらしく、見た目もナナテラから見て一級品だという話に年頃の二人は釘付けになって聞き入っている。
「二人も乗り気みたいだし、そのナナテラのお勧めを買おうか。代金はどれくらいになる?」
「素材が良いものやから、クーナリアはんの服は金貨二十枚、メルディナはんのマントは金貨十六枚にはなりますなぁ。せやけどヴィルムはん達には迷惑かけたし、世話にもなりました。二人分で金貨二十枚でどないでっしゃろ!」
「流石に金貨十六枚は負けすぎだ。そうだな、六枚分はありがたく負けてもらう。金貨三十枚でどうだ?」
ナナテラは、まさか値段交渉で値切る所かその逆をされるとは思っていなかったのだろう。
呆気にとられた表情を浮かべるが、次第に楽しそうに笑いだした。
「あっはっはっはっ! ウチも長い事商売に関わってきたけど、ヴィルムはんみたいな人は初めてや! その金額でお売りしますわ。宿は〈飛竜のとまり木〉でしたな。今日中に届けるよう手配しますよって。今後ともよしなに」
改めてヴィルムに頭を下げたナナテラは、シャザール達に一言断り、品物を準備する為に退室していった。
その後、雑談を終えたヴィルム達は、〈飛竜のとまり木〉に戻る事にした。
ヴィルム達が戻った時には、すでにナナテラが品物を持って来ており、その早すぎる対応にメルディナとクーナリアが驚いていた。
「そら恩を受けたからにはキッチリお返しせな商売人の名が廃りますからな。という訳で、メルディナはん、クーナリアはん、これが御注文の品ですわ」
渡された包みから出てきた服とマントは、素人目から見てもセンスの良いデザインだとわかる。
「うわぁ、このマント気に入ったわ! ヴィル、ありがとう!」
「は~・・・。こんな素敵な服、貰っちゃっていいんでしょうか。お師様、ありがとうございます!」
二人はナナテラの選んだ物を大層気に入ったらしく、早速試着するべく自室に戻っていった。
「気に入ってくれたようで何よりやわ。ほな、ウチは店の方に戻りますよって。ヴィルムはん、またのご利用お待ちしとりますわ」
「あぁ、今度はこっちから寄らせてもらうよ」
ナナテラに金貨の入った小袋を渡して見送るヴィルム。
その後、ひと休みも兼ねて食道で飲み物を頼み、一服していると、納得のいくコーディネートが出来たのか、二人が降りてきた。
「このマント、肌触りも凄くいいわね。ヴィル、どう?似合ってる?」
「こんな可愛い服、初めて着ました。おかしくないですか? お師様」
ヴィルムに感想を求める二人。
「いいんじゃないか? メルディナのマントは動きを阻害しないし、投擲物を振り払うにも良い長さだ。クーナリアの服は掴まれやすくはあるが、そうなれば近接格闘に移行すればいいだけの話だし、問題はないな」
ファッションに関心を持たないヴィルムの的外れな意見に苦笑いしながらも、二人の表情は柔らかいものだった。
今回の話と同時に【27】までの新キャラクター紹介を投稿してます。
次回は5/20投稿予定です。




