【22】緊急依頼
そろそろストックがきつくなってきた・・・。
休みをフルに使って執筆しようと思います(笑)
ヒュマニオン王国 ━王城・王の間━
「━━━以上が、ファーレンで知らされた、忌み子についての内容です。気が動転するあまり精霊獣との仲を取り持てなかった事、深く謝罪致します。如何様な処罰も受け入れる所存です」
玉座の前に膝をついて話すのは、ファーレンの街に来ていた外交官のバゼラードだ。
バゼラードの話を聞いたヒュマニオン王国の重鎮達は、一様にざわめき始める。
「馬鹿な・・・、それでは忌み子とは、魔力が多いだけの人間だったという事か」
「精霊獣だと?伝説の中だけの存在ではなかったのか」
「膨大な魔力。それが“消滅”が起こる原因であったか」
半信半疑だった重鎮達も、王国に絶対の忠誠を誓っているバゼラードが真剣に話している事でその話を信じざるを得ないといった所だろう。
「ふむ、バゼラード」
「はっ!」
玉座に座る、壮年の男。
彼こそ、ヒュマニオン王国を治める国王、ゼルディア=ヒューマニオである。
バゼラードを呼ぶ、彼の声が発せられたと同時に、重鎮達のざわめきは一瞬にして消え去る。
「精霊獣の件は確かに惜しいが、それはこの場にいる誰であっても同じ結果だっただろう。構わん、不問とする」
「はっ、恐縮にございます」
バゼラードは、本気で死罪を言い渡されていても受け入れる気でいた。
それ程までに現国王への厚い忠誠を持っている。
伝説としてしか伝わっていない精霊獣。
その力を手に入れる機会を逃した失態は、並の器では許せるものではない。
あっさりと不問にした現国王の器は相当なものだろう。
「それよりも、その忌み子、ヴィルムと言ったな?その者を我が国に連れて来る事は可能か?」
「恐れながら、某では出会った際の心象が悪すぎます。交渉には他の者を立てた方が良いかと」
「ふむ、そうか」
目を瞑り、背を玉座に預けるようにして考え出した国王を見て、重鎮の一人が手をあげる。
「陛下、私にひとつ考えが」
「申してみよ」
国王は、その声に瞬時に反応して続きを促す。
自身の考えを押し付けず、周りの意見を取り入れる姿勢は為政者として正しいものだろう。
「バゼラード殿の話を聞くに、そのヴィルムという者は冒険者との事。で、あるならば、その者にファーレンから我が国への護衛の仕事などを指名で依頼し、我が国へ赴くよう仕向けては如何でしょう」
「うむ、良い考えだ。どうせその者は呼び寄せるつもりなのだ。我が国の重鎮の護衛とすれば、怪しまれずに城内まで招く事も可能であろう。よし、では誰を護衛対象としてファーレンへ派遣するかだが・・・」
国王や重鎮達による忌み子を招く会議は、しばらくの間、続く事になる。
「へぇ~、忌み子で冒険者のヴィルム、か。 ふふっ、面白そうな話ね」
その会議を隠れて聞いていた者がいる事に、気付いた者はいなかった。
* * * * * * * * * * * * * * *
ファーレンの冒険者ギルドにて、依頼完了の報告に来ていたヴィルム達は、少なからず注目を集めていた。
「はい、依頼の完了、確認致しました。おめでとうございます!本日をもって、ヴィルムさんとクーナリアさんはDランクに昇格になります」
すっかりヴィルム達の専属受付扱いに慣れてしまったセリカが、嬉しそうにランク昇格を伝える。
先日、冒険者ギルドに登録したばかりの初心者としては、昇格スピードは早い方だろう。
だが、周囲が注目しているのはそこではない。
「いや~、ヴィルムさん達が受けた依頼は、達成率もさる事ながら、クオリティも高くて依頼者の方々が大変満足されてるんですよ~。ソノッタ夫人を始め、すでに名指しで依頼したいって方々がちらほらいる程なんです」
そう、ヴィルム達の仕事内容である。
達成率は十割。
これだけでも驚愕すべき数値なのだが、それ以上に注目されているのはセリカも言った仕事のクオリティだ。
素材の採取であれば、質や保存状態が最高の物を取ってくるし、どんな雑事であっても数時間とかかる事なく済ませてしまう。
古くなった建物の解体という依頼があったが、十数人で三日間と見ていた仕事を、ヴィルムとクーナリアの二人だけで半日で終わらせてしまった。
唯一、魔物の討伐だけは、きっちりと依頼された数だけしか討伐してこないが、些細な事だろう。
「私も監査役として鼻が高いわ。ま、これからは私もヴィルム達のパーティメンバーとして参加させてもらうけどね」
「わぁ!やっとメルちゃんと一緒にお仕事出来るんだね!」
Dランクに昇格した事で、メルディナが監査役に付く必要がなくなり、次回からの仕事で協力して取り組める事に喜ぶクーナリア。
メルディナの隣に立ちたいと思っていたクーナリアの喜びは一回り大きいだろう。
「あ、そうだ。ヴィルムさん達は、今から少し時間をとれますか?」
「あぁ、今日はもう切り上げるつもりだったから大丈夫だが、何かあるのか?」
「えぇ、実はギルドマスターがちょっと話があるとかで、ヴィルムさん達が来たら部屋に通してくれって言われてたんです。案内しますので、こちらへどうぞ」
受付の席を立ったセリカは、ヴィルム達をカウンターの奥へと案内する。
部屋の奥にある扉の前まで進んだセリカは、軽くノックする。
「ギルドマスター、セリカです。ヴィルムさん達がいらっしゃったのでお連れしました」
「わかった。入ってもらってくれ」
シャザールの許可を得たセリカはゆっくりと扉を開け、その横に立ち、ヴィルム達に中に入る様に促す。
ギルドマスターの部屋というには素朴すぎる感じであるが、綺麗に片付けられており、清潔感の漂う空間だった。
「やぁ、ヴィルムくん、クーナリアくん、Dランク昇格おめでとう。メルディナくんも監査役ご苦労様。ギルドマスターとして祝いの言葉を贈らせてもらうよ」
ニコニコ笑ってはいるものの、疲労からきているのか、目の下にできた大きな隈が整った顔立ちを曇らせている。
「シャ、シャザールさん。凄い隈が出来てますけど、大丈夫なのですか?」
「少し休んだ方がいいんじゃ・・・?」
「いやぁ、ヴィルムくんが教えてくれたルオナ草とクシケドの実の件でここの所ずっと忙しくてね。研究も一段落ついたし、そろそろちゃんと休むから心配はいらないよ」
心配そうにシャザールを気遣うクーナリアとメルディナだが、当の本人は軽い調子でつらそうな感じが見られない。
「しかしヴィルムくん、本当にいいのかい?この研究に君の名前を出せば、君の名声はかなり上がると思うんだけど」
「あぁ、今は冒険者としての活動が楽しくてね。たまたま知っていただけの薬草学の研究に時間をとられるのが惜しいんだ。この前も言ったが、発見者の名前は伏せておいて欲しい。何だったら、シャ・・・ギルドマスターの名前で発表しても構わないぜ?」
「流石にそんな厚顔無恥な真似は出来ないよ。まぁ君がそう言うのなら、発見者の名前は公表しないでおくとしよう」
ヴィルム自身、名声を得る必要はあるのだが、今回の名声を得てしまえば、薬草学の研究に縛られ、行動しづらくなるという考えがあっての辞退だった。
「さて、今回ヴィルムくん達を呼んだのは、山賊団の討伐を依頼したいからなんだ。本来であればCランクの冒険者達に割り振る依頼なんだが、あいにく全員出払っていてね。緊急性の高い依頼だからBランク以上の冒険者にも打診してみたんだが、断られてしまった」
やれやれといった表情で溜め息を吐くシャザール。
「そこで思い出したのがヴィルムくん達だ。ヴィルムくんやクーナリアくんはCランク以上の実力はあるし、依頼受注においてのランク制限はBランクのメルディナくんがいるから問題ない。特別依頼という事で達成時の報酬には色をつけるから、どうか受けてもらえないだろうか?」
頼み込むシャザールの表情は真剣そのものである。
黙って聞いていたヴィルムだったが、メルディナとクーナリアの方へ向き直り、口を開いた。
「メルディナ、クーナリア、俺はこの仕事を受けようと思うが、二人はどうだ?」
「受けるに決まってるじゃない」
「私も、受けますよ!」
即答する二人を見て、ヴィルムは頷く。
「決まりだな。ギルドマスター、その依頼は受ける。詳細を教えてくれ」
次回は前振りで出ていたあのキャラが出る予定です。
次回投稿は5/15予定です。




