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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
28/248

(斎藤義龍)1

     ☆


 斎藤義龍は大桑城を居城としていたが、

厄介事が生じたので急遽、鷺山城へ移動した。

率いた兵は大桑城から選び抜いた五百。

この時期に領民から徴用するのは難しい上、国人衆にも頼み難い。

そこで旗本を柱として軍勢を編成した。

直臣の旗本に陪臣の地侍を与力させ、足軽を率いらせた。

大桑城の守りもあるので、これ以上は出せない。

 到着を見澄ましたかのように、厄介事が現れた。

稲葉山明智家の軍勢だ。

このところ、しきりと出没して荒らしまわる。

西濃に現れたかと思えば、次の日は中濃、さらには東濃。

田畑を焼き、水路を壊し、橋を落とす。

余裕があれば在地の領主の屋敷を焼き払う。

あくどいことに、その領地の兵が駆け付ける前に退却する。


 困った国人衆が長良川沿いに物見を放って警戒しているのだが、

その網にかからない。

小勢なので、捕捉し難い。

 たまたま、退却する敵勢に遭遇した領軍も幾つかあった。

これ幸いと襲いかかった。

慌てて退却の足を速める敵勢。

嵩にかかって追撃に転じる領軍。

ところがこれが罠だった。

伏兵が置かれていた。

側面から槍足軽隊の突撃を喰らった。

指揮官を含めて殲滅の憂き目に遭った。


 稲葉山明智家への報復に動いた国人領主も数人いた。

怒りに駆られていたが、略奪目的もあったので、他の領主と連携せず、独り占めせんとして軍勢を進めた。

村の一つか二つを制圧し、物資を奪い、

村人を奴隷として売り払おうと皮算用した。

意気込んで奇襲せんと長良川を渡河した。

これが間違いだった。

一向に稲葉山明智の物見に遭遇せぬ事を疑うべきだった。

 突如、法螺貝が吹かれた。

一斉に弦音、上に向けて矢が放たれた。

丈の高い草地の中に稲葉山明智軍が待ち構えていた。

立て続けに鉄砲の轟音が鳴り響いた。

上からは矢の雨が降り注ぐところに、正面からは鉄砲の弾。

隊列が崩れたところを側面から槍足軽隊に襲われた。

 いずれの国人領主も奇襲せんとしたが、

逆に待ち伏せに遭ってしまった。

這う這うの体で逃げるのが精一杯だった。


 義龍は自ら軍勢を率いて城を飛び出した。

物見の報告では村を襲っている敵勢は五百。

こちらは鷺山城の兵五百、大桑城からの兵五百、合わせて千。

数ではこちらが上回っていた。

 敵勢の行動は読めていた。

これまでの数々の行為は焼くか壊す。

そして素早く退却する。

略奪行為はしない。

鉄砲隊は帯同しない。

それは退却の足を考慮してのことだろう。

 義龍は敵の退路を予想した。

追撃した領軍は必ず伏兵に遭っていた。

つまり敵勢は焼き討ち部隊と伏兵部隊で編成されている証。


 退路は幾つか考えられるが、伏兵を置き易いところ一択。

予想される地点に鷺山城兵を向かわせた。

伏兵がいれば排除せよ、いなければ村へ急げと命じた。

 そして自らは襲われている村へ急いだ。

一番いい解決策は退却前に潰す。

気が急いた。


 小川に架けられていた橋が壊されていた。

問題はない。

下流の浅瀬を渡河した。

雑木林の向こうで煙が上がっていた。

声が聞こえた。

怒号、奇声、悲鳴。

戦場が近い。

 雑木林で馬を止めた。

ここからでは村は見えない。

後続の徒士や足軽を待つ間に物見を走らせた。

あらかた手勢が揃った頃合いに物見も戻って来た。

物見がへし折った枝で地面に村と周辺道路を描いた。

「この道の先を曲がると村が見えます。

田畑が焼かれ、現在は庄屋の屋敷が襲われております」

 村へ通じる道は三つ。

一つは敵が伏兵を置くと予想した林道。

残り二つは畦道を広げた悪路。


 義龍は軍勢を二つに分けた。

右に向かう軍勢を見送ると、左の悪路へ馬を進めた。

焼かれる臭いが鼻をつくが平常心を保ち、

徒士や足軽の足を考慮しながら村へ急いだ。

 右手から鬨の声が上がった。

別手組だ。

突入したらしい。


     ☆


 お知らせです。

思っていたよりも物語の進行速度が上がってしまいました。

このままですと、今年中にこの太陽系を統治し兼ねません、たぶん。

この速度を続けると中身がガバガバ、薄味になる懸念もあります。

ついては更新速度をちょっと落とします。

素人解釈の小説とは言え、信憑性も大切なので、

見直す余裕がほしいのです。

そんな訳で、スローな文芸にしてくれ~♪でした。


     ☆

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