表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
194/248

(西から迫る兵火)7

 大物見の第二隊がドッと動いた。

先頭を切ったのは右田隆量率いる騎馬三百余騎。

馬足が遅い事を理由に、第二隊に組み込まれた者達だ。

その鬱憤を晴らそうと意気込んでいた。

 続いて南条宗勝率いる徒士二千余。

足自慢の徒士衆が馬を追い越さんばかりに駆けて行く。

敵鉄砲隊の脇腹を突かんとした。


 とっ、新たな敵が出現した。

この時を待ち構えていた、と言わんばかり。

第二隊の側面に敵鉄砲隊。

ここでも草地に擬態していた。

 厚い横隊が一斉に火を噴いた。

ここでも鳴り止まぬ斉射の轟音、白煙。

バタバタと倒される味方兵。


 大物見の第一隊を撃ち崩した敵鉄砲隊で新たな動き。

その背後から徒士衆が湧き出した。

第一隊目掛けて駆けて行く。


 大物見の第二隊に対してもそう。

そちらからも徒士衆が湧き出した。

てんでばらばらではない。

完全に統制が取れていた。


 小笠原は焦った。

このままでは大物見が二つとも壊滅してしまう。

兵糧が届かぬ事態から、兵力を積極的に削ったが、これは計算外。

これを許すと、自分の責が問われる。

「太鼓を打て、攻太鼓だ」

 敵味方にこちらの存在を誇示し、味方を力付けし、敵を威嚇する。

太鼓が打たれる中、矢継ぎ早に指示を下した。

与力衆を含めた手勢に、次々と隊列を組ませた。

この際、頭同士の仲など知った事ではない。

何よりも数を優先させた。

下りなので間隔の保持も、くどく説いた。

「この丘を駆け下り、その勢いで味方を助けるぞ。

乱太鼓を打たせろ。

その後に法螺貝だ」


 法螺貝と共に鬨の声を上げて手勢が丘を駆け下って行く。

それを見たのか、大物見の第二隊が息を吹き返した。

無様な動きだが、必死になって隊列を組み直して行く。

 対して、攻め手側が後退した。

それも戦線を維持しながらの後退で、付け入る隙を与えない。

熟れた指揮だ。

 小笠原の手元に残った供回りの者達の顔が綻ぶが、

小笠原は素直に喜べない。

まるでこちらの動きを事前に察知していたかの様な後退。

これは、読まれている、・・・。

慌てて左右を見回した。

時すでに遅し。


 後方と左右から敵兵が湧いて来た。

少数ではあったが殿軍を置いていた。

それは物音一つ立てずに壊滅したのだろう。

左右の見張りも同様なのだろう。

小笠原の供回りの者達もそれに気付くが、なす術なし。

 敵は慎重だった。

後方には鉄砲隊。

左右には槍を手にした徒士衆。

それがジリジリに迫って来て、距離を置いて停止した。

 数は小笠原方が五百余。

敵方は、三方にそれぞれ千余、合わせて三千余。

動けば真っ先に鉄砲が放たれる。

次に左右から圧し潰される。 


 敵鉄砲隊から五名が進み出て来た。

装いから何れも上級者である様だ。

それが中間点で止まった。

旗が振られた。

交渉を求められた。

 小笠原は応じた。

腕の立つ者を選び、交渉点に向かった。

真ん中の若い将が開口一番。

「止太鼓を打って貰いたい。

それでそちらの被害が減る」


 もっともだ。

小笠原は共の一人を後方に走らせた。

直ちに止太鼓が打たれ、触れの旗が振られた。


 暫くすると戦火の喧騒が消えた。

若い将が再び口を開いた。

「ご賢明、感謝する。

某は美濃与力衆を率いる竹中半兵衛と申す」

「近江支配の明智殿の配下とお見受けするが」

「如何にも、明智家の足軽です」

「足軽とな」

 うちの武将と変わりない装いだ。

疑問を察したのか、竹中が教えてくれた。

「当家の主が足軽大将で、我等はその下に付く足軽です。

足軽ですが、俸禄や装備品はどこにも負けません」

「相分かった。

それで我等はどうなる」

「どうもしません。

死傷者全員を連れて近江から退去して頂きたい」

「それは竹中殿の一存か」

「はい、私に任されています、が、他の方々も同意されてのこと。

手違いは起こらぬでしょう」


 小笠原は敢えて訪ねた。

「明智家は、松永を見逃すのか」

「はて、・・・、あちらは顧客です」

「顧客とは」

「明智家の商品を、何時も大量に買って頂いております」

「それで見逃すと」

「それに礼儀を知っておられる。

事前に先触れがありました」

「我等も先触れをすれば」

「それはない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ