表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
185/248

(平穏な日々)32

 猪鹿蝶からの文とは別に沖田蒼次郎も文を出していた。

宛先は大人衆。

それは吟味されて参謀役方へ指示が下った。

忍び衆役方と相諮り、詳細に調べよと。

 懸念は管領の細川晴元。

彼が政争で葬った筈の平島公方を、どんな顔をしてか、抱き込み、

新将軍に擁立しようと動き回っていた。

それだけなら問題なかった。

ところがここに来て、その彼が細川京兆家の氏綱と手を携える動き。

管領の細川家と細川家宗家が一つになって動けば、

その影響力は計り知れない。

衰えたとはいえ、昔からの被官が多い。

彼等を糾合すれば、一大勢力となる。


 三好家も被官の一つ。

細川の下で守護代を務めた家柄。

下剋上にて細川家を押し退けて、一大勢力に伸し上がったが、

互いの思惑が一致すれば肩を組むかも知れない。

そうなると当家はその先を判断するのに苦慮する。

何しろ当家は三好家の嫡男とは良い関係だが、

そこの当主・長慶とは面識すらない。

彼が何を思い、どの様に動くのか、さっぱり分からない。


 そして、三好家は別にしても、一つになった細川家も侮れない。

口先一つで被官を糾合できるのだ。

その穂先をどこに向けるか。

現状からすると上洛を公言している尼子勢だろう。

新将軍宣下の獲得争いが優先される。

が、その先は。

尼子のみを注視していたが、

細川家が一つになれば問題がより複雑になる。

 当家としては、これ以上の領地拡大は望んでいない。

一部に、天下万民と口にする向きもあるが、

多くはそこまで思い上がってはいない。

その理由は、人材が足りない、そこに尽きる。

身の丈で満足すべきなのだ。

ただ、売られた喧嘩は買うけど。


 尼子勢は着実に東進して来た。

覚慶様を神輿とし、途上の、尼子家と敵対する家々を数で圧倒し、

膝下に加え、その数を膨れ上がらせた。

 そんな中、細川家が一つになった。

共に平島公方の足利義栄を推戴すると明らかにした。

管領と宗家の二頭になるが、神輿は一つだから問題は無いとのこと。

 残されたのは三好家の去就。

長慶がだんまりなのだ。

未だ持って熟慮中とか。

そんな三好家に対し、両細川家はお味方催促の使者を出した。

一方の尼子家もジッとはしていない。

三好家の後背地、伊勢や紀伊、大和の守護代や有力な国人衆に、

覚慶様の御内書を発した。

こちらもお味方催促。


 畿内がきな臭いが当家は当家で忙しい。

大人衆筆頭と参謀役方筆頭が揃って執務室に現れた。

まず伊東が口を開いた。

「飛騨の平定が成りました」

「予定より早いな」

「お味方を約していた国人衆の働きが大きいですな」

「困った顔だな」

 表情を露わにしない伊東が苦笑い。

「いかにも、小人には困りました」

「それは」

「連中は、持ち領地保全の約を、拡大解釈したみたいです。

こちらの侵攻に合わせて、

これまでの経緯から毛嫌いして相手の領地に攻め込み、

その領地を占領し、自分の持ち領地と主張しておるのです。

そして、それを当家に認めろと」

「侵攻する前に持ち領地は認めた。

だが、それ以上は認めぬ。

その者達の此度の占領は、当家の侵攻を利用したもの。

早い話が、盗人も同様の仕儀、盗人猛々しいと伝えよ」

 伊東がニヤリとした。

「宜しいので」

「その者達に、分からぬなら兵を挙げよとも伝えよ。

そうだ、私からも正式な書状を送るとするか」

 私は右筆に指示した。

「飛騨に侵攻した七番隊の原源五郎に書状を発す。

今の話を簡易に記し、こう纏めよ。

臣従する者達を付け上がらせるな。

無理して臣従させても、何れは厄介者にしかならぬ。

であれば、今のうちに野に放て。

以後の処置は任せる。

ただし、その旨の報告は忘れるな」


 私は大きく頷く伊東に尋ねた。

「能登はどうした」

「非常に手間取っております。

想定より悪化しているのではないかと」

 伊東が事細かに説明してくれた。

能登には吉田佐太郎率いる八番隊を向かわせた。

手間取っているのは彼が悪い訳ではない。

事前に想定されていたこと。

何故なら能登には、越前や加賀の一向一揆衆を追い出したからだ。

そのせいで、飛騨が国人衆の内部争いで疲弊していたのに比べ、

能登はより最悪な状況に陥っていた。

地元の一向一揆衆が越前や加賀の者達を加えて膨れ上がり、

守護・畠山家を追い出して惣国一揆にせんとしていたのだ。

「まさかここまで畠山家が衰退するとは思ってもいませんでした」

 そう言って伊東が口を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
細川京兆家当主の座を奪われた晴元と三好の力を借りて晴元から京兆家当主の座を奪った氏綱が手を結ぶ?無理じゃね?不倶戴天の敵同士だよ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ