表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
158/248

(平穏な日々)5

 山科卿の扱いは決まった。

それを持って松永は接岸した二艘目に向かった。

私は松永に続こうとした。

信長に止められた。

「ここで待とう。

山科卿に納得する時を与えよう」

「納得しますか」

「ああ、納得せざるを得ない。

その前にお主が向かえば、何のかのと注文を付けるかも知れん。

だろう、違うか」

 信長が視線を私の後ろの片岡源太郎に向けた。

それを受けて片岡が深く頷いた。

「あのお方は交渉慣れされていらっしゃいます。

殿では少々、分が悪いかと」

 信長が同意した。

「山科卿にかかれば赤子の手を捻る様なものだ」


 私は再考した。

確かに私は交渉ごとの経験が少ない。

大抵は側仕え任せ、大人衆任せ。

ふむ、これは拙いか。

私の思考を読んだのか、片岡が言う。

「人には得手不得手がございます。

殿は得手の事に専念なさいませ。

不得手の所は私共が補います。

何なりとお任せ下さいませ」

「それで良いのか」

「はい、それで宜しいです。

でなければ私共の仕事が無くなります」

 聞いていた信長が腹を抱えて笑う。

それをお市が窘めた。

「兄上様、旦那様に失礼だがや。

年下とはいえ、大名なのだがやよ」

「すまんすまん」

 信長がお市の気取りをした。


 説明を終えたのか、松永がこちらを振り向いた。

にこやかな笑みを浮かべて頭を下げた。

信長が言う。

「どうやら話が纏まったようだな。

光国、お主は山科卿とは口を利く必要はない。

聞かれたら聞こえぬ振りだ」

「宜しいので」

「ああ、面倒だろう。

何かあれば俺に任せろ。

あの方とは面識がある。

父の代からの付き合いだ」

「そうなのですか」

「あのお方は鼻が利く。

特に銭の臭いにな」

「銭ですか」

「朝廷は銭に困っているからな」


 尾張は先代の頃から山科卿と付き合いがあるそうだ。

だったら任せよう。

苦手は克服するより、得手の者に任せた方が好結果を齎す。

たぶん。

 そうとも知らずに三好家御一行様がこちらに向かって来た。

先頭に三好慶興。

その慶興の笑顔は、左後ろに従う松永の笑顔とは色合いが少し違う。

満身の笑み。

足早に近寄り、顔を合わせてから述べた。

「此度のご出産、心よりお祝い申し上げます。

母子共にご健康であられるとも聞きました。

このまま健やかにお育ちになられ事を私共は、

父や母も含めて三好家一同願っております」

 さっと両手を差し出して来た。

私はそれに両手で応じた。

「これはご丁寧なご挨拶、ありがとうございます」

 そこへお市の手が重なった。

「慶興様、ありがとうございよーる。

そのお言葉、姉にしっかり伝えよーる」

「お方様に似て美男美女だとか漏れ聞いております」

「慶興様、お言葉が擽ったいだがやわね。

でも、ここではお酒は出せんわよ」

「それは残念です」


 お市がついでに信長を紹介した。

「慶興様、これが兄だがや。

尾張を治めている信長だがや。

今は三河も治めとったね」

 これを契機にお市は信長と慶興を引き合わせた。

ああ、お市は私よりも、やり手だった。

私の出番が・・・。

否、丸投げしよう。

するとお市からの意外な提案。

「慶興様、私共は馬で先に参りせんきゃ。

伊吹山から来る風も心地良いだがやわよ」

「ほう、湖面を走る風の次は伊吹から吹き下ろす風ですか。

それは楽しそうだな」

 信長が我が意を得たり、そんな顔をした。

私の後ろに控えている側仕えを振り返った。

「四頭だ」

「はい、直ちに」

 誰の家来だ、お前。

気付いたら信長とお市の兄妹が場を支配していた。

言葉もない私に松永が声を掛けた。

「光国様、私共はゆるりと参ります。

お気になさらず、お先にどうぞ」

 隣に並ぶ山科卿が横目で松永をギョロリと睨んだ。

それに構わず私達は牽かれて来た馬に騎乗した。

側仕えの手を借りて騎乗したお市が馬に手鞭をくれた。

「お先にゃ」


     ☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] え? 公家と見たら皆殺しなのでは? 異世界からの転生でしょう、身分などに頓着せずに殺すと思った。 公家の言うこと聞いてしまう他のなろう作品と区別化しなければ駄目でしょう。 門前でころころした…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ