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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
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(平穏な日々)1

 誤字脱字のご報告、大感謝しています。

暑さ、台風に負ける事無く、これからも宜しくお願いします。

     ☆


 私は朝早いにも関わらず、母子の部屋に向かった。

私の気持ちが分かるのか、側仕えは誰も反対しない。

先導しながらお宮が言う。

「寝ているお二人を起こしてはいけませんよ。

勿論、お絹様もですよ」

 付き従う沖田も言う。

「子供は寝るのが仕事です」

 斎藤も言う。

「直ぐに仕事に戻って頂きましょうか」


 正室・お絹の部屋に近付くに連れ、声が聞こえて来た。

赤子だ。

それも二人。

どれが男の子で、どれが女の子か、さっぱり分からないが、

間違いなく私の子。

自然、足が早くなった。

 部屋は女達で一杯だった。

お絹と赤子二人が起きているので、侍女や乳母達が付き添っていた。

早朝からお市の顔もあった。

「まあ、貴方様、こんな朝ちゃっとから、いらっしゃいませ」

「そういうお前も」

「甥姪だがやから当然だがや」

 お市の侍女達もいるので、広い部屋が狭く感じた。

私はその中に入った。

お市とお絹の間に座った。

赤子二人を上から眺めた。

 

 前世でも双子は忌諱された。

産んだ母親は畜生腹と卑しめられ、双子は忌み子として蔑まれた。

私は当時でもそれは間違いだと思っていた。

生まれたばかりの赤子に何の罪があるというのか。

忌み子でなくとも悪事には走る。

この世の中には騙す者、盗む者、殺す者がいて、

牢獄はそんな奴等で溢れている。

そう口にした事も一度や二度ではない。

だけど、ただの魔法使いの言葉が受け入れられる事はなかった。

当時の私は無力だった。


 私に忌み子を否定する場が与えられた。

全力で双子を庇護し、世に送り出そう。

そう考えていると、お絹に尋ねられた。

「幼名は如何いたしましたやーた」

「それなら決めて来た」

 私は側仕えを探した。

沖田と斎藤は女だらけの部屋に入るのを躊躇い、廊下に控えていた。

その沖田が廊下から紙を二枚、近くの侍女に差し出した。

侍女はチラ見すると、慌ててお絹の前に膝を進めた。

その二枚を差し出した。

受け取ったお絹が皆にも見える様に二枚を畳の上に広げた。

松千代。

桜。

 お絹やお市の二人だけでなく、ほぼ全員が幼名を口にした。

首を傾げる者はいない。

韻を楽しんでいる雰囲気、幼名を舌の先で何度も転がした。


 双子を目で慈しんでいるとお宮に急かされた。

「そろそろ仕事の時間ですよ、戻りましょう」

 お市も言う。

「そうだがやよ貴方様、しっかり仕事に励んで下さいませ」

 お絹が泣き始めた桜を抱き上げ、私を見た。

「旦那様、お茶の時間にでもいらっしゃいませ」

 松千代がぐずり始めた。

桜に釣られたらしい。

乳母の一人が慌てて抱き上げた。

それを見て、私は思い出した。

「桜を姉にしよう。

松千代は弟だ」

 お絹が首を傾げた。

「何か理由が」

「一姫二太郎、男には頭を押さえてくれる者が必要だ。

そう思い、桜を姉として扱う事にした。

どうだろう、浅慮か」

 お絹はまずお市を見て、それからお宮に目を転じた。

二人に異存はなさそうだ。

「分かりました、そう致します」


 執務室は別の意味で人いきれがした。

向こうは女と赤子の匂いで充満していた。

一方、こちらは男と書類、墨汁で充満していた。

 上座に腰を下ろすと、早番の者が書類を差し出して来た。

まずは急ぎ決裁を必要とする物から。

何れも各部署の承諾を得てから手元に届く。

齟齬は無いと思うが、詳細に確認した。


 取次役方筆頭が面会約束の刻限に訪れた。

「こちらがお三方の日時になります」

 初子の祝いに織田家、長尾家、三好家から訪問すると先触れが来た。

その中の織田家から長尾家、三好家とも面談したいので、

訪問する期日を合わせたい。

ついては明智家で仕切って欲しい、そう依頼された。

 私としては異存はない。

三河を併合したばかりの織田家は、

色々と思うところもあるのだろう。

祝いの場とは別に外交の場を必要とするその気持ちを察した。

これは織田家だけでなく、長尾家にも、

三好家にとっても利があるかも知れない。

当然、我が明智家にも。

そこでそれを大人衆に諮り、取次役方に丸投げした。

その答えが一枚の書面に記されていた。

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― 新着の感想 ―
久しぶりにお宮の名前。道三らが黒幕と分かってからも心配だった。
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