表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
149/248

(近江戦の戦後処理)6

 幸いと言うか、新見金之助が駆けて来た。

「ご無事で何よりです」

 私の無事よりも、川原の騒ぎに興味津々の様子。

側仕え達に詳しい説明を求め、皆を辟易させた。

見兼ねた私は間に入る事にした。

私個人への襲撃の件を担当しているのは彼。

そこで彼に任せる事にした。

「あれを引き取ってくれるか。

このままでは殺し兼ねん」

 新見は無駄な問いはしない。

それだけで理解したのだろう。

「承知」

 川原に下りて近藤に何事か小声で言う。

それに沖田と蟹、原田が加わった。

少し問答があった。

三対一。

不満ながらも渋々頷く近藤。

その背をポンと叩き、新見は己の組下の者達に指示した。

「生かしたまま運べ」


 小谷城に戻った私を皆が出迎えた。

ところが先触れで、襲撃の件を知っている筈なのに、

誰もそこには触れない。

その気遣いが嬉しくもあり、悲しくもある。

 私は風呂で汗を流すと、執務室に寝転がった。

側仕え達が呆れた顔で私を見るが、

事情を知っているので諫めたりはしない。

 襲撃の背後にいるのは誰か・・・。

考えなくても分る。

懐妊しているお絹が出産すれば、後継者はその子になる。

男子であれば良し。

女子でも婿で解決する。

だからその前に私を殺さねばならない。

 その点から考えると、後継者は・・・。

私には実兄だけでなく、実弟と実妹がいる。

三人は共に実母の元にいる。

けれど、その三人が私の後継者になれる確率は低い。

家臣達の猛反発が予想されるからだ。

三人の誰も、火中の栗を拾おうとは思わないだろう。


 残った可能性は斎藤家か土岐家・・・。

昔の権威で後継を強要するつもりかも知れない。


 何時の間にか寝ていた。

それに気付いたのは、お市に起こされて。

「旦那様、起きてちょーがゃあ」

 疲れが溜まっていたらしい。

体力というより精神が削られていた、そう確信した。

私を覗き込むお市の膝に触れた。

「お市か、すまない」

 お市が私の手に自分の手を重ねた。

「寝ると仰にゃ、私の膝を貸しましたのに」

「次はそうする」


 お市の案内でお絹の部屋に向かった。

出産用の新しい部屋だ。

ここ小谷の冬は厳しい寒さだ。

そこで私は熱を逃がし難い部屋を考案した。

お絹の出産の一助となれば、そう願ってのこと。

実際に組み立てたのは職工達なのだが、手柄は私のもの・・・。

 お絹が縁側に腰を下ろしていた。

私の足音に気付いたのだろう。

姿勢を正そうとした。

それを私は押し止めた。

「無理をするな。

お腹の子に障る」

 お絹が明るい笑顔で応じた。

「旦那様は相変わらずだがやわね」

 お市も重ねた。

「だがやわね。

旦那様はいつまでも甘いお人だがや。

だがやから大好きだがや」


 二人の正室との甘い語らいの日々に現実が割り込んで来た。

新見金之助だ。

大人衆の伊東と武田、猪鹿の爺さんを帯同していた。

「霧谷の悪太夫の怪我が癒えたので、尋問を開始しました」

 根来衆出自の傭兵狙撃手だ。

「口を割らせたのか」

「はい、割らせましたが、どうやら仲介人のようです」

「間に人を挟んでいるのか。

どうやら周到な相手らしいな」

「はい、ですから、少々手荒な事になります。

それらしい相手方に罠を仕掛けます。

宜しいですか」

 おそらくは、金か女を絡ませる。

或いは、殺してから所持品を調べる。

「私は話を聞くだけ、口は挟まない。

一切を大人衆に委ねる方針に変わりはない」

 相手は自分を狙っているが、私はそこには拘らない。

拘ると拙い方向に走る自信がある。

そこで大人衆の衆議に委ねたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ